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第3羽 優しい世界

ポタッ、ポタッ。水滴が暗い路地に落ちて水たまりを作っている。雨は止んだ。


私の心は空っぽだ。

鳥という生物は一度この世界から消えかかった。自由に飛べる鳥はカラス達ぐらいだ。恐らく残りは人間が管理している。私も自由に空を飛びたい。


私の心は空っぽだ。

私は水たまりの水を飲む。相変わらずの雨水だ。数日前に怪我をしてから私はずっとここにいる。私は衰弱している。このままでは誰にも見つからず朽ちてゆく。そんなのは嫌だ。私も自由に空を飛びたい。


私は鳥だ。だけど人間に攻撃され翼に怪我を負った。捕まるわけにはいかない。しかし、自由に飛び立てなくなった。空を眺めると雨が降ってきた。傷にしみる。涙も流れている。そして心が空っぽになっていた。


私は動けなくなっていた。もう死ぬのだろう。あの空の向こうには何があったのだろう。今では見ることは出来ないが考えることはできる。想像してみる。青い空、自由に羽ばたく仲間たち。私は目を閉じた。


再び気が付くと私は暖かい布の上で寝ていた。どうやら人間に拾われたらしい。人間も捨てたものではないのだがそもそも攻撃してきたのが人間だから複雑だ。食料も置いてある。水以外を摂るのは久しぶりだ。

食後しばらくすると人間の少女が私のもとへやってきた。

「どう、おいしかった?」


私は少女の言葉を理解できた。恐らく私は特別な存在なのだろう。

「無事にご飯が食べれてよかったね。大事な翼が大けがしちゃってたよ。あのままだったら君は危ないとこだったよ。先生は翼がよくなるまでは1か月はかかるだろうっていってたし、暫く私のところで居候だね。」


少女はそういうと嬉しそうに私を見ている。

「そういえば君の名前だけど、大きな目が特徴だから『メメ』ちゃんでいいかな?」


私は頷いた。

「それにしてもメメちゃんは鳴かないね。男の子?なのかな」


私がオスかメスかは分からない。本能に従って生きてきただけだ。まだ翼が痛むから派手に動けないが適当に首を動かしておく。

「あと先生が鳥さんは貴重だから、他の人には見つからないようにしなさいって言ってたけど、ここにいることは私とメメちゃんの秘密だよ。」


この子の親はどうしたんだろうか?私と同じで独りぼっちなのか?まぁ今はこの子に甘えよう。


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