第10羽 帰還
唐揚げを平らげ、どのぐらい時間が過ぎたのか、辺りは既に暗くなっていた。特製唐揚げとは何だったのか・・・。普通の美味しい唐揚げだった気がする。あえて挙げるなら、肉の繊維が細かく油は控えめ。衣は薄く、出汁のきいた醤油ベースに西洋からしの下味・・・、といったところか。
というか元の世界に帰れたのだろうか。
「・・・何も変わってないよな?」
とりあえず期待して元の世界の自分の家を目指してみる。
「佐藤じゃなければOKのはず・・・。」
そして、部屋の前に到着した。
自分の持っていた鍵をそっと試してみる。
『カチャ・・・』
「あ、開いたぞ・・・。」
人が中にいると騒ぎになるので、そっと扉を開けて隙間を覗いてみる。すると中は真っ暗で人の気配はなさそうだ。
「よし、中に入ってみるか・・・。」
玄関にある電気を恐る恐る点けてみた。すると、中は俺が住んでいた時のままの状態だ。これは流石に元の世界だろう。
靴を脱ぎ、確信を持って部屋にあがり、リビングの扉を開いて電気をつけた。部屋の中は片付いていて、あの日置きっぱなしだった手紙や請求書がそのまま机に置かれていた。宛名も俺の名前になっている。
「やったー!我が家に帰ってきたぞ!ようやくだ。そうだ、まずはコンビニに行ってお金を引き出すか。」
俺は軽い足取りで近くのコンビニへ向かった。
「よかった。ここも以前のままだな。」
あちらの世界での生活があったためか、元の世界は昔のことに感じる。
色々と思い出しながら、コンビニの中に入ってATMの前に向かった。キャッシュカードを入れ、暗証番号も問題ない。残高は・・・、200万ほどだ。これも当時のままのようだ。
当面必要な金額を引き出し、レジに向かう。
「さて、ついでにコンビニの唐揚げちゃんを買って帰ろうかな・・・。」
俺は元の生活を満喫するために、よく食べていたコンビニの唐揚げちゃんを買うことにした。
レジの前で何を買うか、ホットコーナーの商品を見ようとした時に、違和感を感じた。
そう、唐揚げが無いのだ。ただの品切れでは無い、そもそも商品札が無い。フライドポテトやポップコーン、揚げパンが置いてあるのに・・・。ポップコーン・・・!?他には肉まんもある。
俺は恐る恐る、店員に尋ねてみた。
「あ、あの・・・。唐揚げは置いていますか?」
すると店員は、
「え?お客さん、やだなぁ。ニュース見てないの?」
俺はよくわからず聞き返した。
「??ニュースですか?」
「ニュース知らないのかぁ。えっと、唐揚げは昨日、法律で禁止になったんですよ。正確には鶏肉の唐揚げだけですけどね。ていうか、鶏肉が問題になったのは2、3年ほど前だから知っていると思ったんですけどねぇ。」
その話を聞いた瞬間、俺は膝をついた。
店員の声が聞こえないぐらい俺は考えていた。
そして考え抜いて出た答えが、
「唐揚げは俺が復活させる!」
俺の戦いはこれからだ。