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第五話

俺の後ろ盾であった大内が消滅。


正確には大内氏はまだ存在しているが、影響力は消えたも同然。

そんな状況下、早速俺に反感を持っていた土橋栄益らが反旗を翻した。

土橋らは先代・胤栄さんの直臣だった奴で、当時は普通に勤めていたが、

主君が早世した後、俺が次代に収まることに対し異議を唱えていた。


俺が大内の後ろ盾を得たことで、一旦は大人しくなっていたのだが…。

しかもあいつ、神代まで抱き込みやがった。


大内の力を背景に勢力を伸ばす龍造寺が厄介だったのだろう。

神代をはじめとした近隣の東肥前、そして一部は南肥前の諸豪族まで

敵にまわっており、城を囲まれている。

勢力的にも物理的にも龍造寺包囲網だ。


なるほど。

家中から裏切り者が出ると、こんな事態ににあっさりなってしまうのか。

などと現実逃避染みたことを考えていると、俺の周りでは家臣たちが

悲痛な表情で喧々囂々としていた。


曰く、城を枕に討死すべし

曰く、伝手を頼って降伏するべきだ

曰く、必死の覚悟で切り込み、殿を落とすのだ

曰く、むしろ夜陰に紛れて落ちるのはどうか


などなど、様々な意見が出されていた。


当然だが俺に死ぬつもりは毛頭ない。

むしろ死ぬことなどあってはならない、と思っている。

なので、落ち延びることになるのだろうな、と悠然と構えていた。


そんな中、近隣豪族の一人である、小田駿河守から使いが寄越された。

家老の納富但馬や福地長門を通じてもたらされたそれによると、

簡単に言うと落ち延びよ、ということだった。

そして、落ちるなら多少手心を加えるよ、とも。


家中ではそのことに対し、騙し討ちされるのではと、疑心に駆られていた。

なぜなら、以前うちの家系が殺されまくった時、騙し討ちがあったからだ。

俺としては信用せざるを得ないと思っていたが、家臣たちを納得させる

ような言葉を持てずにいた。


このような家中の様子を、納富但馬や福地長門らがこっそり知らせたようで、

神明に誓って騙し討ちはせぬ!と言ってきた。

起請文を出しても良い、とまで。


そこで、俺は家老たちに促され決断を下し、逃げることを宣言。

おじい様の故事に習い、一旦筑後に逃れ再起を図り雌伏すべきだ、と。

家臣たちも涙を呑んで従ってくれた。


そして、またも筑後は柳川城主・蒲池鑑盛さんの領地に匿って貰うことに。


後で知ったのだが、蒲池さんは大友に属しており、大内に属した龍造寺とは

敵対関係にあった。

にも関わらず「武門の浮沈は世の習い」と言い、暖かく迎えてくれた。

しかも、多少の扶持まで与えてくれたのだ。


なんて素晴らしい人なんだ。

この恩は絶対に忘れないようにしなければ。


あ。ひょっとしてこれ、死亡フラグの一端じゃないのかな。


----------------------


二年後、俺は蒲池さんの元で力を蓄えていた。


地元では土橋が専横を振い、我が世の春を謳歌していると伝え聞いた。

龍造寺家は、一族の孫九郎が大友義鑑から偏諱を貰った上で鑑兼と名乗り、

本家の当主を務めているというが、まあ実質土橋の傀儡であるようだ。


地元にて逼塞した鍋島や納富、小河などと連絡を取り合い機を窺っている。

ついでに傀儡の当主・孫九郎とも繋ぎをとってみた。

最初は色好い返答はなかったものの、繋ぎをとり続けることに対しては

難色を示さなかったので、継続して何度もやり取りを交わしていた。


そしてついに、反攻の機運を捉えた。

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