第四話
第四話
本家の胤栄さんが死んだ。
病死らしいが本当のところは分からない。
まだ若かったし、この前会った時は元気そうに見えたものだが…。
色々あって本家は俺が継ぐことになった。
そして、胤栄さんの奥さんである後家さんが俺の奥さんになった。
何言ってんの?
いや、これは別に珍しいことじゃないらしい。
正統を正当にするためによくあることだ、と本家の家老が言ってた。
ということで、後家さんが俺に嫁ぐというより、俺が本家に婿入りして
当主に就任すると言った方が正しいみたい。
そこはまあ、俺としてはどちらでも龍造寺氏だから良いんだけど。
でも、人によっては分家が本家を乗っ取ったと思うのではなかろうか。
そんなこんなでドタバタしているのだが、昨年の内に少弐の野郎を
追い出した後だったのが、不幸中の幸いだったと思う。
こんな考え方をしてしまう自分が嫌になる。
しかしまだ仇の一翼、神代勝利が健在なのだ。
隙を見せるわけにはいかないし、色々と考えなければならないことが、
本当に多い。
この神代勝利は戦上手で、しかも領民に慕われる名君で、尚且つ
その領土は山間部がほとんどで、非常に攻めにくいときている。
改めて確認するとリアルチートだな。
野心がないわけでもないだろうに、なんであんなとこで燻って
マイナーなままでいたのだろうか。
まあ、今のところ変な動きはないので、一旦脇に置いておく。
諸々の対応は、本家の家老である小河筑後がやってくれている。
優秀な家臣がいてくれて、とても喜ばしい。
そして本家当主となった俺は、早速周防の大内義隆と結び、
これを後ろ盾として家中及び近隣をまとめることとした。
この時、大内義隆の「隆」の字を偏諱として賜り、隆信となった。
ようやく龍造寺隆信の誕生である。
永かった。
なお、大内と結んだ云々を推し進めたのは実は俺じゃなくて、
家老の福地長門らが頑張った結果だ。
ほとんど名前知らなかった人ばっかだが、みんなかなり優秀だ。
誠に喜ばしい。大切にしないとな。
そうして、大内の後ろ盾を以って、本家当主となった俺を中心に、
一族や家老・家臣たちが頑張って龍造寺家を立て直していった。
そして数年後、大事件が勃発した。
周防の大内義隆が、家臣・陶隆房の謀反で死亡。
事件自体の存在を忘れていたわけじゃないけれど、具体的な日時とか
知らないし、何より遠すぎて出来ることはほとんどなかったのだ。
ああ、俺の後ろ盾が木端微塵。