第二話
さて、死亡フラグをへし折っての楽隠居を目標に定めたわけだが。
楽隠居するにも色々条件があるよね。
まず、大前提として死なないこと。
そして息子と孫がちゃんと成長すること。
家や国の政治がしっかり機能していること。
領地や周辺の治安が良好であること。
わぁ、結構大変そうだぞー。
まあ現状、この身は高々齢十六の小童だ。
十六ともなれば、普通既に元服して初陣も済ましている頃だが、
俺は寺に入れられており、このような事態にならなければ僧侶として
人生を全うしていたはずなので仕方のないことなのだ。
現状、おじい様の直系は俺なのだから。
いや、何事も前向きに、だ。
早速だが死亡フラグをどうやったら折れるのか考えたい。
確か、勇猛果敢だが冷酷無比な所業の多い隆信に、家臣領民の心が
次第に離れていき、非業の最期を遂げるという、言ってしまえば
割と自業自得なものだったと記憶している。
つまり、冷酷無比な所業を無くせば良いのだ。
良いのだが。
なんだろう。
現状、自分の立たされている状況がどうにも宜しくないのだ。
なぜなら、おじい様は息子たち孫たちを殺され、ひ孫の俺を連れ
着々と再起することを企図している。
そしてほぼ間違いなく、おじい様の跡は俺が継ぐ。
一族を殺した仇になるのは当家の主君と同輩、及び近隣の豪族だ。
それなんて宇喜多直家?
いやいや、梟雄になんてなるつもりはないぞ。
梟雄が楽隠居なんてできっこない。
斎藤道三然り。松永久秀然りだ。
復讐は仕方ない。
あれだけ殺されたのだ。ケジメを付ける必要もある。
問題はどこまでやるか、引きずらないようにするか、だ。
この時代、当主と云えど専制は不可能に近い。それこそ暴君だ。
死亡フラグに直結しかねない。
などと考えたところで、俺はまだ元服もしてない。
直系の男子というだけの存在で何も力はない。
しかし心構えしておくだけでも、対応が違ってくると思うのだ。
翌年、おじい様が雌伏先の蒲池さんの助けを借りて挙兵。
我が一族を滅せんとやってくれた仇敵・馬場頼周を討ち取った。
馬場の首を見た家臣たちは、足蹴にして鳩首してやろうと息巻いたが
おじい様はそれを止め、丁重に葬ったという。
良かった。
おじい様の行動は龍造寺家の行動だ。
一時の衝動に駆られての安易な行動は死亡フラグなのだ。
跡を継ぐ俺にも直結する。
まずは、良かった。
こうして一時断絶の危機を迎えた龍造寺家は再興された。
直後、おじい様が身罷った。