第一話
現代日本で普通に中堅サラリーマン。
趣味は日本史関係の小説やゲーム。
そんな何の変哲もない三十路越えの男子が一名。
ある朝起きると、なんということでしょう。
粗末な僧服を着た丸坊主の中学生くらいの背格好になっていた。
あまりの意味不明さにしばし呆けていると、ドカドカと足音が多数。
ぼんやりそちらをみていると白髪のおじい様を先頭に十数名の大人たちが
焦った様子でこちらにきて、あれこれ喋っていたがよく分からなかった。
気付けば馬に乗せられ猛然とダッシュしていた。
そして俺は意識を失った。
その後色々あって状況が分かった。
先ほど目覚めた場所は九州肥前の国、今いるのは隣国筑後の国だ。
そして時は天文十四年、戦国時代真っ只中。
俺の名は長法師丸。
気を失う前に見た白髪のおじい様は俺の曽祖父だったようだ。
おじい様曰く、俺の父を始め、叔父や祖父、大叔父など一族皆殺しの
憂き目にあったところ、おじい様だけは何とか逃れ、寺にいた俺を連れ
この隣国・筑後へ落ち延びたという。
父の名は龍造寺周家。祖父は龍造寺家純。
曽祖父は山城入道剛忠と名乗っているらしい。
わぁ、龍造寺だってよ。
肥前の熊こと龍造寺隆信がちょっと有名かな。
龍造寺隆信・・・勇猛で知略に優れ「五州二島の太守」と称されるものの、
冷酷無比で「肥前の熊」「東洋のカエサル」などとも称された。
悪い意味で織田信長のように生き、今川義元のように死んだと言われている人だ。
幼名は長法師丸。
つまり、俺だ。
ははっ。
マジやべぇ。
いやいや、幸いにも俺には未来の知識がある。
死亡フラグはきっと回避できるはず。
いや、してみせる。
そして孫に囲まれ穏やかな老後を送るのだ。
目指せ、楽隠居!
俺の戦いは始まった。