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種と不死者と少女の物語  作者: 狸森
1章 神種の運び手
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1話「ギルドへの報告」

~リムリオ東中央通り~


シェルは所属するギルドの本部がある、リムリオ中央行政区へと足を向けていた。

どこかだるそうに歩いているのは昨晩の疲れ・・・というわけでもなく、これから報告する内容と、とても面倒臭い人物に会うためだ。


調査した森の異変。

襲ってきたガルムの群れ。

そして連れてきた身元不明の少女。


さて、どう報告したものかと頭を悩ませながら歩くこと数分。

行政区の中でも一際古い木造の建物の前で立ち止まった。


『冒険者ギルドホール』


ここは現リムリオでもっとも古くに建てられた場所であり、城塞都市リムリオの発祥の地でもある。

どの城塞都市でもそうなのだが、まず最初に魔獣を駆除する必要があるため、それを請け負う冒険者たちをまとめる場所から街を作っていくのだ。

冒険者とは魔獣の駆除、危険区域の探索、商人や要人の護衛、等を請け負う者たちの総称である。

また複数人で動くのが基本であり、仕事の内容にもよるがシェルのように一人で行動できる者は数が少ない。

一人で動くのが『ソロ』。2~5人で組むのが『パーティー』。パーティーを2つ以上まとめたのが『チーム』。そしてリーダーとなる冒険者を中心にチームを二つ以上まとめたのが『クラン』である。

そして、それらの冒険者たちを地域ごとに仕事の配分やサポートをする組織が『冒険者ギルド』である。

また仕事の内容によっても数種類のギルドがあり、商人が中心の『商業ギルド』建設や農地開拓を請け負う『土木ギルド』街や村の警備を取り仕切る『衛士ギルド』。果ては『薬師ギルド』『神事ギルド』『風俗ギルド』なんてものまである。

そしてそれらのギルドを城塞都市ごとに繋がりを持たせたのが、『リング』と呼ばれる行政組織である。



それはともかく。



「はぁ・・・」


冒険者ギルドホール前まで来たシェルは、一つ溜息をつくと中へ入って行った。

中には20人ほどの冒険者が、依頼ボードを眺めていたり談笑をしたりしている。

ゴツい戦斧を担いだ大男。

茶色のローブを羽織り自分の背丈以上のロッドを持った老人。

僧服を着た体格のいい男。

中には三又の銛を担いだリザードマンや茶色い髭のドワーフ、どう見ても魔物にしか見えない立派な鎧のスケルトンなんてのも居る。


シェルが受付へと進むと、


「おっ。《黒騎士》じゃねぇか!」

「やぁ《黒騎士》。今帰りか?」

「《黒騎士》さん!お帰りなさい!」


入ってきたシェルに気付いた数人の冒険者が、声をかけてきた。

シェルは軽く手を振って目で挨拶をした後、受付へと進んだ。


「シェル様、お帰りなさいませ。」


赤毛の巨乳受付嬢が微笑みながらシェルに挨拶をしてきた。

彼女の額には真っ白な角が生えている。

『鬼人』と呼ばれる種族の娘だ。


「ああ・・・ただいま。ギルド長に報告したいんだが・・・」

「はい、ギルド長もお待ちしておりました。奥へどうぞ。」


受付嬢の案内で奥の部屋へと進む。

木造の廊下の床がギシギシと音を立てる。

いい加減老朽化も激しいんだから建て替えりゃいいのにな・・・と思いながら進むと、一番奥の扉から怒鳴り声が聞こえてきた。


「あ゛ぁ゛!!?調査も終わらねーうちに魔獣から逃げてきただぁ?!てめぇ!何年冒険者やってる!そこを何とかしてこその『Bランク』だろがぁ!!!終わるまで帰ってくんな!!!!」

「すっすみません!」

「・・・」


扉の前で受付嬢と共に苦笑しながら固まっていると中からスキンヘッドの筋肉大男が涙目で出てきた。


「よ・・・よぅ・・・」


シェルが軽く挨拶するとスキンヘッド男はバッと90度の礼をして泣きながら走り去っていった。


「・・・」


とりあえず去って行った男の健闘を祈りつつギルド長室へと入ることにした。


「お父様、シェル様がお戻りになられました。」

「おぉ!!!待っていたぞ!!!入れ!!!」


相変わらず暑苦しい上にうるさい男だ・・・と思いながら、シェルはギルド長へ軽く会釈をして部屋へ入った。

部屋の中には、街で見かけたら一発で通報されそうな風貌の大男が立っていた。


赤毛のアフロ。

額から生えている2本の黒い角。

顔には左頬から右目に向かう2本の古傷と眼帯。

色黒の筋肉質。

そして、お前はどこの山賊だ、と言いたくなる虎柄の革服。


この人物こそがリムリオ冒険者ギルドの長、ライオネル・リオールなのである。


「廊下の奥まで声が聞こえてたぞ・・・ライオネル・・・」

「ぶぁっはっはぁ!!!あのぐらいの声出さないとBランクヘタレ共には気合いが入らんわぁ!!!」

「・・・ランクは関係ないと思うがな・・・」


寝不足の頭に大音量の声が響き、ゴリゴリと気力が削られるシェル。

長い付き合いではあるが、相変わらずこの暑苦しい男ライオネルと居ると疲れてくるばかりだ。


「それはともかく、『黒山羊森くろやぎもり』の調査報告だ。」

「おう。で、どうだったんだ。お前にしては時間がかかっていたみたいだが。」

「ああ・・・悪天候やらなにやらいろいろあってな。」


シェルはまず依頼を受けた、黒山羊森の調査内容をライオネルに語る。

受付嬢、もといライオネルの娘リエラがお茶を汲んできたところで、一度話を止める。


「そうか・・・やはり浸食が進んでいたか・・・」

「ああ。《ミーネ大森林》奥地からの浸食樹が数本、瘴気を発し始めていた。一応浄化だけはしてきたがいつまで持つか・・・」

「それだけでも十分助かる。さすが《黒騎士》の二つ名持ちだな!。」

「《赤鬼》に言われてもいまいち微妙だな・・・」

「それはそれだ!!!」


シェルは茶を啜り一息入れると、次の話を続けた。


「それとな、」

「なんだ?まだあるのか?」

「天候回復を待って調査と浄化を終わらせた後、魔猟犬ガルムの群れに襲われた。」

「なにぃ!!!」


ライオネルは唾を飛ばしながら目を見開いた。


「ばかな!!あそこはとうの昔に魔獣の駆除が終わっているはずだぞ!境界には結界石も設置済みだ!!!」

「だが襲われた。サーチを使ったところおよそ300体。」

「300体だと・・・?」


ライオネルは絶句した。そんな数は未駆除の地域でもほとんどない事例だからだ。

ましてや駆除完了地域。普通なら有り得ない事態に唸るしかない。

シェルの話は続く。


「これは推測なんだが・・・」

「うむ?」

「おそらくあの魔猟犬ガルム使役者テイマーに呼ばれた奴らだ。」

「なんだと?・・・」

「《魔獣使役者ビーストテイマー》だ。」


魔獣使役者ビーストテイマー


使役テイムの魔法を使う者たちの中でも忌避されている存在の一つだ。ヒトに害を与える魔獣を召喚、または調教をして使役する。

元々は魔獣駆除の戦力として研究された技術なのだが、どこをどう捻じ曲がったのかヒトの敵となってしまった者たちである。


「よく生きて戻れたな・・・いや、愚問だった。お前なら余裕か。」

「それはお前も同じだろう。」


シェルはライオネルを見ながらニヤリと笑った。


「まあ運もよかった・・・と言っていいのかわからんが、まだ話の続きがあるんだ。」

「まだあるのか・・・・」


さすがのライオネルもうんざりと言った表情だ。心なしか顔が引き攣っている。


魔猟犬ガルムと戦闘中によくわからん魔方陣が発動してな、現れた女の子に激突されたら魔猟犬ガルムが消えた。」

「・・・は?」






どうやらライオネルの理解の範疇を、大幅に超えてしまったようだ。





いろいろ説明入れるのって大変ですね・・・

ともかく本編が始まりました。

長い話になりそうな、そうでもないような・・・

頑張って書いてみます。

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