第2放出 ~新型魔獣~
青年はには空港に到着した。
しかし、空港の様子がおかしい。
「助けてくれ」「怖い」「逃げろ」
なにかいざこざが起きているのか?と思いつつはには辺りを見渡す。
『《魔物》が出たぞ』
ロビーから悲鳴が聞こえた。
この声を聞いたとき、はには血相を変えて広い空港ロビーへと走り出した。
ここは通常《魔物》が出現するところではない。よって人々は皆、仮面をしていない。《仮面》とは特異な能力を持たない者でも能力を使えるようになる、いわゆる武器というやつである。
空港ロビーには見たこともない魔物が空港の中を荒らしまわっていた。
(新種の魔獣!!!)
はには新種の魔獣を一刻も早く退治しなければならないと思ったが、どうにも興味半分で魔獣の周りに群がって携帯電話を向けている。記念写真のつもりだろうか。
「おいそこの野次馬共!死にたくなけりゃ走って帰れ!!!」
はには荒っぽく叫んだ。あまり悠長にしている暇もないからだ。
野次馬達は自分の身の危険を感じたのだろうか、二歩、三歩後ずさりをすると、後ろを向いて走り出した。
野次馬が居なくなったところで、はには空港ロビーの中央に陣取る《新型魔獣》に向かって走り出した。
魔獣はドラゴンというかのような形をしている。皮膚の色は濃い肌色と言うべきか、いや、茶色のような濁ったような色をしている。二足歩行をしており、背中には翼が生えていない。
―――(これは...恐竜...!!!)
人類が生まれるもっともっと前に繁栄し、そして滅んでしまった《恐竜》と言う生物によく似ている。
はには恐竜の前で足を止めた。足音で既に恐竜はこちらの存在に気がついている。
恐竜はこちらを向くと、右手をはにの方へと振り下ろす。手は思って居たほど短くない。長いと言えるだろう。筋肉がびっしりとついているように思える。鋼鉄をも斬れそうな、鋭い爪が生えている。その右手が、はにの体に触れそうになったとき、はには右手で恐竜の手を止めるかの如く掲げた。
はには恐竜の右手を見据え、考えていた。
(あの恐竜の右手の攻撃力は一体どれほどあるのだろうか。)
(もしこの恐竜の攻撃力をそっくりそのまま恐竜に《返す》ことが出来れば、恐竜を倒せるのだろうか。)
恐竜の右手が、はにの触れた。
恐竜の動きが、止まった。
バランスを崩した恐竜は右半身から崩れ落ちる。
はには両手を地面に着くと、ロビーの天井に頭をぶつけるほどの高さにまで飛び上がった。
降下しながらはには両手を倒れている恐竜の方に向けた。
『放出』
はにのその言葉と共に、何かが恐竜に向かって、落ちた。
恐竜の体には大きな穴があいた。
《魔力》の結晶である魔獣は、その穴から徐々に《魔力》が空気中に溶け出し、すぐにその体は、なくなってしまった。