第1放出 ~出発の日~
日本。
この国には、自分の生きる意味を見いだせず、自殺してしまう人が後を絶たない。
きっと、いや、もしかすると数百年、数千年先の未来も、今と変わらないのかもしれない。
生まれてきた意味、必ず一人ひとりにあると思うのです。
この小説は、数千年後、自分の生まれてきた意味がわからない青年の、いわゆる、自分探しの旅というやつなのです。
一緒に、夢を見ましょう。
西暦8013年、日本。
膨大なネットワークで繋がれたこの国は、西暦2118年にどこからか生まれた《魔物》と呼ばれる種族との闘いが今尚続いている。
数百年前に人類の高度な頭脳と技術力で《魔物》達の長である《魔王》とやらを亡き者にしたのに、また最近、復活したらしい。
しかし、この青年はそんなことはどうでもいいらしい。
《魔物》が怖いだとか、この星が滅ぶだとか、死ぬか生きるかなど、この青年にとって、全くといっていいほど、どうでもいいことなのだった。
青年は疑問を持った。
「おれは、何のために産まれてきたんだろう」
青年はこの果てしないほどの科学と技術が詰め込まれた小さな島国を、ひとつ旅をしてやろうと思った。
青年の名は《ハニングロス=ディスチャージ》
22歳、呼ばれ名は《はに》。
彼は不思議な力を体に秘めている。
その特異な力を人々は《無威解放》と呼び恐れ慄く。
―――1週間後、荷物をまとめると、はには空港へ足を運ぼうと家を出た。
「日本、一周するんだっけ・・・?」
後ろから小さな、しかし透き通った華奢な声がはにの背中に触れた。
この子は、はにの両親が亡くなって孤児院に入って、一人で子供では理解できないような分厚い本を読んでいたはにに、初めて声をかけた少女だ。
はには少し屈んで目線を彼女のものと合わせると静かに言った。
「少し待ってていてくれ。少し見て回って、すぐ帰ってくる、それまで留守を頼むぞ」
「......うん」
まにの声を聞くと、はにはまにに背を向けて歩き始めた。
Thank you very much...