2/52
2
急いできたようで、肩で息をしている彼は、蓮華にとって右側にあるポールを左手で掴み、天井を見上げるようにしていた。
電車は走り出した。
彼はいつまで、その姿勢でいるんだろう と蓮華は思った。
すると頭を下ろした彼が蓮華の方に向き直り「すみませんでした」と言った。
彼がその容姿を持っていない彼だったのなら、そんなにまじまじ見てたわけじゃないのに、駆け込み乗車に腹を立てて睨みつけてると思われたのかな というかこの人後頭部に目があるみたい などと思っただろう。そして「いえ」と薄くほほ笑んだことだろう。
しかし、この彼はその容姿を持っている彼だったのだ。
うわうわうわ
美人 美少年 美青年 イケメン
中途半端じゃないイケメン
本物
うわうわうわ
整ってる……
彼女の頭は思ったり考えたりというより、連想ゲームのように単語が浮かび続けたのだった。






