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カクン
ブレーキをかけて電車は停車した。
ポールに頭をぶつけた蓮華は慌てて電光掲示板を確認する。
表示されている駅名は降りる一つ前のものだった。
ホッとした蓮華は立ち上がった。
扉の前を占領していたサラリーマンが二人とも降りて行く。
すばやくそこに移動する。
乗り込む人はいないようだった。
扉の左側にあるポールをつかみ、肩にかけている黒革の鞄の持ち手の位置を調整した。
扉が閉まる気配がした。
そこへグレーのスポーツバッグを斜め掛けした高校生が乗り込んできた。
閉まりかけていた扉は開き、また閉じた。