4話 第2の悪夢 中編
車の窓から入ってくる気持ちの良い風が、僕の前髪を揺らす。窓から見える美しい海。反対側の窓を見ると、緑の綺麗な森が見える。そんな最高な風景の中、僕はーーー
「………気、気持ち悪…」
車酔いしてた。
「大丈夫か、ほら飴」
珍しく亮が心配してくれた。
「あ、ああ、さんきゅ…」
僕は亮からもらったレモン味の飴を食べた。
うん、全然治らねぇ。
「はははは、下向いて本なんて読むからだろ~」
今笑ったのは、亮の兄さんの富崎 敦[とみざき あつし]さんだ。歳は24歳。敦さんは俗に言うニートと言うやつだ。亮の話では昔、少し働いてたらしい。然し、1ヶ月ぐらいで辞めたとのこと。何故辞めたか問い詰めると、『会社の方向性が合わないから』と、バンドメンバーの解散の理由みたいな理由だった。
「まぁ、もうすぐで着くからそれまで我慢しろ。女子達も寝てるし」
言い忘れてたが理沙は車に乗って直ぐにダウンした。美咲は2日前から今日を楽しみにしてて、夜も眠れなかったらしい。着いたらしっかり寝て体力全快の美咲の相手をするのかと思うと頭が痛くなる。
「は、はい…うぷっ…」
……我慢できるかな…取り敢えず僕は、着くまで寝ることにした。
「…い…きろ。お~い朝だぞ~、昼だけどな!」
起きると、亮が下らないギャグで俺を起こそうとしていた。
「お、起きた。うん、流石は俺のギャグ。人を起こすのには最適だな!」
「全くだ。寒さで凍え死にする前に起きれて良かったぜ」
「ん?なに言ってんだよ、今は夏だろ?」
馬鹿に皮肉は通じないらしい。寒いのはお前のギャグだよ。
「いや、何でもない。それより着いたのか?」
「後もう少しって所だ」
亮の代わりに敦さんが答えてくれた。
「そうですか」
前の座席を見てみた(車は7人乗りの大型車だ)。理沙と美咲はまだ寝てるらしい。後少ししたら狂喜乱舞する美咲を止めないといけないのか……
「いっやっっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!いっえぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!やっふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「落ち着けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
想像通り、目的地に着いたので美咲達を起こすと、海を見た美咲が狂喜乱舞した。
「海、海だよ!海海海海海海海海海海海海海海海!」
「だぁー!!うるせぇーーーー!!!ちょっとは周りを考えろ!他の観光客の人、めっちゃこっち見て「ねぇ、魚とかいるかな!?あ、でも銛がないや!」
「聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
美しい夕焼け、まるで心が洗われるような波の音、そしてこの一面に広がる青い海。最高の風景の中、僕の全力のシャウトが哀しく響いた…
そんなこんなで、2泊3日の旅行が始まった。
後編に続く




