聴覚障害者の日常 とばっちり編
学生時代にさかのぼる。
夫とは1年生の時のクラスメートで、クラスの仕事が一緒だったのが縁で付き合いを始めた。
専攻や選択講義は違うのだが、共通講義の時は筆記通訳を頼んでいた。当時は、講義の内容を理解するための通訳はなく、筆記通訳は友人の好意を頼る他になかったのだ。アタシも夫も真面目に講義に出席していた。筆記通訳の担当をしている友人もアタシが出席する限り休めなかったのだが…。
前から4、5列目の真ん中がアタシの指定席みたいになっていて、講義をする先生からはかなり目立っていたはずだ。
大学にはアタシの他にも聴覚障害者は何人かいたが、アタシの学年ではアタシだけだった。
だから、学生課や就職課でもおなじみになっていて、それなりに知られていた。
そんな学生生活が定着し、3年生の終わりに、就職活動の為の説明会だったと思うが、それを受けるために夫に筆記通訳を頼んで参加した。
講師は外部から招かれた人だった。内容はすっかり忘れてしまったが、おそらく、社会人としてのマナーとはなにか…だっただろうと思う。
この日も、夫と一緒に前の真ん中に座り、聴講した。
すると、講師が突然怒り始めた。
「人の話を聞く態度ではない人がいる。」
そういって、講師はアタシと夫を名差した。
「いちゃつくなら、出てください!」
アタシも夫もビックリしたが、一番慌てたのは就職課の職員だった。
就職課の職員が講師のそばにかけより何事かささやいた。
そして、何事もなかったように、また説明会が続行された。
説明会終了後、就職課の職員と講師から謝罪をうけ、なんとも妙な気持ちになった。
アタシからも聞こえないから筆記通訳をつけることを事前に伝えなければいけないことを怠ったことを謝罪した。
もし、夫ではなく同性の友人だったらどうなっていただろうか。やはり、同じように気を悪くされるのかなぁ。
あらかじめ、お断りを入れないといけないのだな、と悟った事件だった。