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③~赤坂料亭のキーワード

「書生を使って買収工作かっ」


やり手だぜっこのオバチャン。


料亭の居間で取材を待たされた新聞記者はつい癖で"盗み聞き"をしでかしてしまう。


女将さんの経営者としての手腕はあらかじめ基礎知識は仕入れはあるはずなのだが。


「親の代から引き継いだ高級料亭とは言えさらに拡張したのは才覚だぜ」


親の代にはどれ程の商売だったのか知りたくもある。

「赤坂にあまたくる上客を切り盛りして常連客に仕立てる腕はたいしたもんだ」

仲居から出されたお茶菓子をつまみながらあれこれと妄想を逞しくもする。


盗み聞きの旅館買収は難航している。


一見したら二束三文で手に入るおんぼろ旅館のつもりで話しを進めたが


「買収する上敷きと土地。潤沢なる資金があの才覚のある女将に」


思っていた低い金額より叩かれて高額になった商談の模様だ。


首を(ひね)り女将の金主(パトロン)の存在を彷彿していく。


「あのタヌキが自民党総裁になる日は近いから」


買収のタイミングは総裁選挙に近いような気もしないではない。


「ひとつの党たる総裁から総理大臣となれば」


料亭のおかれた立場は一気に好転をする。


政財界の派手なパーティー。


大型ホテルの立食パーティーを除けば女将のこじんまりした料亭を総理自らが指定し盛大に連日連夜ではないか。


赤坂料亭はいくら(金が)転がり込むか想像できない。

「大臣就任の祝い金(裏金・賄賂)は湯水のごとくわいてくる」


記者は腕組みし盛んに算盤を弾く。


「料亭のお座敷は」


こちらの座敷の数は20~25(パンフレットに掲載)


これだけの座敷でこなすのは無理がある。


「うーん女将さんも焦っていらっしゃるな」


借金しての無理な買収も瞬く間にチャラになるのではないか。


「こりゃあっますますタヌキがパトロンの可能性が高いぜ」


商魂ある女将は笑顔を絶やさず書生の法務上戦略を聞く。


「もう少し時間をいただけば先方の出方もわかるんですよ」


二束三文な老朽化旅館を盾に金額を次々高騰させる姑息な手段。


「最初の契約金はいかがになりましたの。契約と違っていますのでしょ」


女将は公正証書を眺めため息である。


「まったくですよ。昨日まで約3倍とハネ上げてきました」


女将は早めに手に入れたいと焦っている。売り手は売買契約者の不確かな足元を見始めていたのである。


姑息な手段を講じる(やから)に好きなように牛耳られてしまっては"辣腕(らつわん)弁護士"の看板が泣く。


「女将さん。任せてください。次回お伺いします折りには」


女将さんが納得される契約と契約金を提示いたします。


書生は自信満々に事務所の法務レベルの高さを強調し女将と別れようかと席を立つ。


「ありがとうございます書生さん」


ところで


「あのお待ちの"新聞記者"さんはお知り合いでございますか」


女将はチラッとだが記者を見たことがあった。政治記者だと前にも名刺をいただいている。


自民党だったか野党の担当だかの記者ではないか


「私に尋ねたいことがあるといいます」


女将には別に話しをすることが思いつかない


「なんですかね。思うことでございますが」


料亭に来る政財界の話しを聞き出しに来たのでは?


「女将さん。それはつまり…ゴシック記事を」


料亭で連夜繰り広げられたであろう"スキャンダル"を教えてくれでございますか

「はいっ。時期も時期でございます。私はそうだと思います」


国会が紛糾し始めたあたり。


女将の知る限り料亭は見知らぬ男がうろちょろしている。


「不審者は怖いですからね。見つけしだいに警察通報してございます」


警察?


「生き馬の目を抜く政治や財界でございます」


どこに刺客(スナイパー)が潜むやしれませぬ。


「そりゃあいけませんね」

書生は目をドングリにして驚きである。


赤坂にある


神楽坂というだけで


こちらは大変な料亭だぞ


「でございますから」


女将は声を密かにした。


"あのお待ちの記者さんも"同類近似"でございますかしら"


書生の耳許でこそこそと内緒を言う。


女将としては無頼漢な男などさっさと門前払いをしたかった。


「さようですか。困ったなあ」


道すがら知り合いだけの記者である。料亭は書生の連れ合いと勘違いをしている。


小川のせせらぎの清いさの記者と印象である。


無頼漢であり招かざる客となっては書生にも責任の一端がありそうだ。


「わかりました」


女将さんの臓肚(はら)を探り好き勝手にスキャンダルをゴシップ記事にされてはたまらない。


「女将さん僕に考えがあります」


記者をここに呼びましょう。


「僕が取材には同席します」


帝大だ弁護士の書生だと威嚇してやれば無理難題を言わせないであろう。


「書生さん。それは助かります」


ほっ~


美貌の女将さんがにっこりと微笑んだ。


呼ばれた書生はギクッと顔つきを変えた。


「同席が帝大かい」


嫌なら女将への取材は拒否致します。


お引き取りください。


アタァ~


「女将さんの話を聞けるなら」


まあまあ二十歳そこいらの書生がなにを考えているか推測しかねる。


帝大を目の前にして


女将のゴシップを引っ張りだす


「こっちとら名の知れた新聞記者だ。横槍が入ろうが邪魔くさいやつがいようが」


我が道をひたすら行くのみである

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