悪役令嬢のとある学園生活
数年前に書いたものをリメイク投稿です。
夏ということなのでホラー要素もあります。
ぜひお楽しみくださいm(__)m
とある学園に
誰もが振り返るほどの美しい容姿をした女性がいた。
滑らかな白い肌、ぽってりとした赤い唇。
絹糸のような光沢のある黒髪を腰のあたりまで伸ばしている。
しかい冷たい顔つきをしており、見下すような鋭い目つき。
話しかけるのも戸惑うほどの威圧感をもち、
周囲からは悪役令嬢と呼ばれていた。
そんな彼女は第一王子の婚約者だった。
しかし学園生活の中で
王子と彼女が話しているところを見た人はいない
ただただ王子の側を歩くだけ。
彼女の笑った顔も、泣いた顔も、困った顔も……見た者は誰もいない。
これはそんな彼女の学園のお話
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ある学園で彼女が中庭で一人読書を楽しんでいると、
見目の良い男3人を侍らせた一人の女性がこちらに向かって歩いてきた。
目が合ったかと思うと、男たちを侍らせた女は
スッと男の背中に隠れ、小さく口角をあげた。
男たちはそんな彼女の姿に立ち止まった。
青い髪の男が言う
「おいっ、彼女に嫌がらせをするのはやめろ! 証拠は揃っているんだぞ。」
黒い長髪の男が言う。
「彼女は毎日あなたからの嫌がらせを受け、涙を流しているのですよ。見てください、あなたの姿を見て怯えたウサギのようになってしまっているのではありませんか!」
最後に赤い短髪の男が言う。
「王太子の婚約者であっても、やってはいけないことがあるぞ。こんな女が王太子の婚約者などあってはならないことだ!」
ギャーギャー騒ぐ彼らの姿に、私は本を閉じ、徐に顔を上げると静かに見つめ返す。
男たちの影に隠れている女は、ブロンドの髪に軽くウェーブがかかった、なんとも可愛らしい女性。
そんな彼女はなぜかウルウルした瞳で怯えたように私を見上げていた。
はてさて……なんのことかしら?
私がこの可愛らしい女性に嫌がらせををしたですって!?
どうしてそんなありえない事が起きているのかしら……?
「なんだその目はッッ、みっ、見てみろこれを! 彼女のノートがボロボロだ、鞄も水に濡れ使えなくなってしまっている!こんなことをしていいと思っているのかっ!」
青い髪の男は腕を振り上げると、ボロボロのノートと鞄を私の前に投げつけた。
「君は毎日彼女にひどい言葉を浴びせ、彼女を陥れる事になんとも思わないのかい?」
黒い長髪の男は軽蔑した鋭い眼差しで私を睨みつける。
「お前は昨日彼女を階段の上から突き落としたんだろう!彼女の怪我が軽かったからよかったものの、死んでいた可能性だってあるんだ!」
赤い髪の男の言葉に目が点になった。
頭上に???が浮かぶ。
私が彼女を突き飛ばす?彼女に嫌がらせ?
そんなこと絶対にあるはずないのに……一体全体何が?
青い髪の男が一歩前に進み出ると、背中にいる彼女をかばう様に抱き寄せた。
「はんっ、だんまりか……。可憐な彼女が王太子と仲睦まじい姿を見て嫉妬したのだろう。全く君は醜く愚かな女だ。こんな愚行するものが王太子の妃になどなれるはずがない」
黒の長髪の男も慌てて進み出ると、私が先ほど読んでいた本を取り上げ地面へ叩きつけた。
私は地面に無造作に広がった本を見下ろすと、ゆっくりとした動作で膝を曲げた。
言われる罵倒に、まったく心当たりがないわ。
一体だれがこんなくだらない茶番を?
こんなことに……意味なんてないのに……。
だって私には
自由な時間なんてないのに……。
そっと本を拾い上げた瞬間、ゆっくりとした足音が聞こえてきた。
彼女たちの後ろ側から、近づいてくる足音に私は体を強張らせる。
「こんなところで何をやっているんだい」
三人の男たちは慌てた様子で振り返ると、王太子殿っと口々にしながら
私から離れるように後ずさりした。
そんな彼らの姿に優しい笑みをグッと深める。
男たちを見下ろすようにピンッと背筋を伸ばし、
ブロンドの髪を靡かせながら、そっと軽く髪をかき上げる。
その姿は見る女性全てを魅了するほどに洗練されていた。
「私の王子様!!!」
先ほどまで小動物のように覚えていた彼女の瞳が輝くと
青い男の腕を振り払い、皇太子の前へ飛んで行った。
頬を赤く染め王子へかけより、怖いの~!と叫びながら
潤んだ瞳を浮かべ両手を大きく広げへ抱き着こうとするが……
彼は笑顔のままスッと彼女を避けた。
彼女は空気を抱きしめると驚きの表情を浮かべ、今度はゆっくりと王太子へ顔を向ける。
そして目に涙を浮かべ両手をグーにして顎にピッタリと添えると見上げた。
「王太子様聞いてください~、私……実は彼女にいじめられているんです……ヒックシクシクッ」
いじめられている言う彼女は私を指さすと、小さく口角をあげる。
すすり泣きする彼女の姿に、彼は笑顔を張り付けたまま無言で退けと合図した。
彼女はピタッと泣くのをやめると目を見開き信じられないとの表情で彼を見上げた。
動かない彼女に苛立ったのか……彼は彼女を押しのけると、私の傍へとやってくる。
そっと私の肩を抱き寄せると、立ち尽くす彼らを眺めながらスッと目を細めた。
「僕の婚約者に何をしているのかな?」
グッと肩を持つ手に力が入る。
王太子の言葉に彼らはビクッと体を震わせると、赤い髪の男が前へ進み出た。
「失礼ながら申し上げます。王太子殿。この女は王太子殿と親しく話す彼女へ嫉妬のあまりいじめていたのです。僕たちはそれをやめるよう咎めにきた次第です」
赤い男は地面に散らばった鞄を指さした。
王太子はそれを一瞥すると鼻で笑った。
「はっ、何を言っているんだ君たちは。彼女が?嫌がらせだって?そんな事あるはずがないだろう?」
彼は笑顔を張り付けたまま、私の髪を優しく撫でた。
そっと彼を見上げると、目の奥が全く笑っていない。
「しっ、しかし、ここに証拠がございます。彼女が階段から落とされた際にその女の髪飾りが現場におちていたのです。これです」
赤い髪の男は恐る恐るズボンのポケットから髪飾りを取り出した。
私の髪に映えるようにと王太子が私に送ってくれた紅の髪飾り。
彼の好きなバラ散りばめられ、宝石があしらわれた特注品で世界に一つだけの髪飾り。
それは紛れもなく私のもの。
どうして……そんなところに……?
だってその髪飾りは……ッッ
王子は髪飾りを一瞥すると、無言で髪飾りを手に取り大事そうに握りしめた。
「これが証拠かい?」
王太子はにっこり笑顔を浮かべると、その姿に男たちは慌てて次の証拠を出してくる。
「この他にも、彼女のノートが破られていた日、その女が彼女の部屋に入るところを目撃されております。」
「そうですよ!さらにその女は麗しい彼女を見かける度にひどい言葉を浴びせ罵っていたとの報告があがっております」
赤い髪の男の影に隠れていた二人が出てくると、口々に言った。
王太子は髪飾りを私の髪へ優しくつけると、リップキスを落とした。
そして耳元へ顔を近づけてくるとボソッささやいた。
「どこからそんな根の葉もない噂がたつんだろうね……君もそう思うだろう?」
彼はふぅーと息を吹きかけると、ゾワゾワとした感覚に慌てて耳を抑えた。
「王太子殿、これだけ証拠が揃っているのです。それでもその女をかばうのですか?」
王太子は、はぁーと深く息を吐きだすと、徐に顔を上げた。
「はっはっは、面白いことを言うね。証拠か……」
王太子はにっこり笑顔を深めると
「どんな証拠があるにしろ、彼女が嫌がらせをするなんてありえないんだよ。絶対に…」
そう言い切る姿に彼らは困惑した表情を浮かべた。
ひぃ……怖い怖い怖い。
これは本気で怒っているわ。
私自身大事にしたくないのだけれど……
彼の怒りが爆発する前に黙って帰ってくれないかしら……。
「しかし、王太子殿っっ これだけの証拠がっっ」
「そうですよ!そんな女を庇う必要などないのです!」
「そんな無表情で何を考えているかわからない非道な女よりも、王太子殿にはもっと相応しい女性がいるのでないでしょうか!かっ彼女のような」
その声に彼女はハッと我に返ると、王太子の傍へと歩み寄る。
「本当なのです……私……怖くて何も言えなくて……。彼女はいつも私を罵倒して……見てください、階段から突き落とされて腕に傷が残ったのですっ」
彼女は肘にある擦り傷を見せつける姿に
王太子はとうとうスマイルを消し、
冷めた目付きで男たちを見据える。
空気がピシャリと凍った気がした。
しかしその空気に気が付いていないのか、彼女は話し続ける。
「王太子殿……私……とってもつらくて……今までずっと我慢してきたの。でももう耐えられなくて……」
目に涙をいっぱいに浮かべもう一度上目遣いで訴えかけるように王子を見上げた。
恐ろしい……彼女殺されるかもしれないわね……。
彼の表情を見てまだこの言葉を言える彼女が逆にすごいわ。
凍った空気の中、男三人は顔を強張らせながら固まっていた。
「王太子様……私はずっとあなたを好きでした。でも婚約者がいるからずっと諦めようとしていたの。だけどこんなひどい冷酷で冷たい女性があなたと結婚するなんて……私、許せなくてっっ」
彼女は一人の世界に入り込んでいるのだろう、突拍子もないことを言い出し、空気が氷点下まで下がった。
王太子は私を隠すように一歩前へ進み出た。
「冗談もほどほどに。君のような男を侍らせ、何の非もない彼女に罪を押し付けようとしている君を婚約者になんてありえないだろう」
はっきり言われた言葉に、彼女の顔が一変しみるみるうちに赤くなっていく。
「なんなの!?証拠もあるじゃない!それなのにっっ、そんなにそんな女がいいの?なんで?私の方がかわいいでしょ?私は、この世界の主人公なのよ!!!!」
彼女は絶叫すると、先ほどの可愛らしい表情はどこへやら……眉を吊り上げ睨みつける。
そんな彼女の豹変ぶりに取り巻いていた男たちが目を見合わせながら後ずさった。
肩で息をしながら私を睨みつける彼女。
王太子は視線を遮るように私を背中に隠すと、彼は徐に腕を伸ばし彼女の首に触れた。
笑顔を消した王子は今にも殺しそうな目付きで彼女を見下ろす。
ようやく王太子の様子に気が付いたのか、彼女はゴクリっと唾を飲み込んだ。
「うるさい女だ、その喉を潰してやろうか」
グッと彼女の首を掴む。
その瞬間彼女は小さく悲鳴を上げると飛びのいた。
恐怖にガタガタと体を震わせながら、彼女は焦った様子で彼の手を振り払い一目散へと逃げて行く。
その姿に男たちは慌てた様子で追いかけて消えていった。
一仕事終えた彼は乱れた髪を整えると、私をそっと抱きしめた。
「やっぱりこんな事が起こる学校に君を連れて来なくてよかった。君が学園に入学するまでに、王宮の魔術師達が君の人形を完成させてくれて本当に助かったよ。僕の思い通りに動いてくれる人形を」
私は、薄暗く締め切られた彼の部屋からその言葉を聞いていた。
「本当は君の意識を繋がらないようしたかったんだけど……それだと家で退屈だろうと思ったんだけどね。うーん、この人形を作る際に視覚と聴覚。触覚を君に連動させたのは失敗だったかな・あぁでもこうして僕が抱きしめているぬくもりは感じていてほしいんだよね」
自由に動かせない人形を通じて彼の熱を感じた。
「怖かっただろう?でも……もし君がここに居たらきっと君は泣いていただろう。君の泣き顔をあんな男どもに見られていたら……僕は彼らの目を潰しているところだった」
人形を通じて彼を見上げると、そこには優しい笑顔が映し出される。
外側から鍵をかけられどこにも行くことはできない。
表情を変えることができない人形の目から得る映像が私のすべて。
「これでよくわかったよね。外はこんなにも危険だから……僕の部屋で僕が帰るまでおとなしくしていてね、僕の愛しい婚約者殿」
足をベットに繋がれ、身動きがとれない状態で
紅のドレスが私を包む。
「僕のかわいい君、君は僕だけの物だ」
いかがでしょうか?
コメント等いただければ嬉しいです!




