第27話 評価不能
朝の端末表示は、静かだった。
《評価:未登録》
もう、見慣れた文字だ。
だが、
今日のそれは
少しだけ意味が違って見えた。
教室に入っても、
誰もこちらを見ない。
避けられているわけじゃない。
警戒されているわけでもない。
存在として、計算されていない。
それが、
今の俺の立ち位置だった。
授業は進む。
教師の説明は正確で、
生徒の反応も適切だ。
質問は出ない。
混乱もない。
この世界は、
もう人を選別する段階を
終えている。
選別は完了し、
運用フェーズに入った。
だから、
評価不能は不要だ。
昼前、
教師が一度だけ
こちらを見る。
だが、
何も言わない。
確認する必要が、
もうないからだ。
俺は、
端末を閉じる。
数値が出ないことに、
もう意味はない。
評価されないから、
怖いわけでもない。
使われないから、
焦るわけでもない。
ただ、
ここで何かが終わった
という感覚だけが残る。
昼休み、
校舎の外に出た。
空は澄んでいる。
音も、
きれいに整理されている。
世界が、
よくできている。
この学園は、
もう誰も壊さない。
壊れる前に、
削ることを覚えたからだ。
ベンチに腰を下ろす。
隣には、
誰も来ない。
以前なら、
評価不能というだけで
話題になった。
今は違う。
話題にならない。
それが、
完全に外れた証拠だった。
ふと、
思い出す。
最初にこの学園に来た日のことを。
評価表を見て、
自分だけ空白だった時。
あの時は、
バグだと思った。
誰かが、
修正してくれると
信じていた。
だが、
修正されなかった。
そして今、
修正されないまま
制度が完成した。
つまり。
俺は、
最初から
不要な要素だった。
それを、
ようやく受け入れられた。
午後、
端末に通知が来る。
《登録更新のお知らせ》
《対象外要素は、
今後の演算に含まれません》
淡々とした文。
排除でも、
処分でもない。
除外だ。
誰にも、
影響はない。
誰も、
困らない。
俺がいなくても、
世界は正しく回る。
それが、
証明された。
放課後、
廊下を歩く。
足音が、
やけに響く。
この音は、
評価されない。
記録もされない。
それでも、
確かに鳴っている。
俺は、
初めてはっきりと
思った。
評価不能というのは、
測れない存在ではない。
測る必要がない存在だ。
制度にとって、
最適解ではない。
だが、
誤りでもない。
ただ、
含まれない。
それだけだ。
端末を見る。
《評価:未登録》
この表示は、
もう変わらない。
だが、
変える必要もない。
俺は、
この世界の外に
出たわけじゃない。
中にいながら、
数えられなくなった。
それが、
俺の最終的な位置だった。
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