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この学園では成績がすべて――なのに俺だけ「評価不能」だった  作者: 黒羽レイ


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第10話 評価不能の使い道

 評価不能でいることに、意味はない。


 少なくとも、この学園ではそうだ。


 評価されないということは、

 上にも行けず、下にも落ちず、

 役割も、未来も、与えられない。


 ただの宙ぶらりん。


 ――利用価値がない存在。


 少し前まで、俺自身もそう思っていた。


 だが、この前の授業を終えて、

 考えが変わった。


 この制度は、

 すべてを比較できる前提で動いている。


 正解と不正解。

 上位と下位。

 役割と役割。


 だからこそ。


 比較できないものが紛れ込むと、

 処理が追いつかなくなる。


 評価不能は、

 空白じゃない。


 ノイズだ。


 その日の課題は、単純だった。


「次の課題は、

 校内施設の利用改善案です」


 教師は言う。


「条件は一つ。

 “評価を基準に、利用優先度を設定すること”」


 ざわめきが起きる。


 上位役割者が有利になる。

 誰の目にも明らかだった。


 グループ分けは、評価順だった。


 上から順に並べられ、

 自然と序列ができる。


 俺は、どのグループにも入らなかった。


 ――入れなかった。


 評価基準がないからだ。


「じゃあ……君は、補助で」


 教師の一言で、

 俺は全グループを行き来できる立場になった。


 それは、偶然か。

 それとも、様子見か。


 どちらでもいい。


 俺は、各グループの案を聞いて回った。


 上位グループは、合理的だった。


「評価80以上は、

 施設Aを優先利用」


「下位は、混雑時間帯を避ける」


 効率はいい。

 数字も揃っている。


 中位グループは、少し曖昧だ。


「不満が出ないように、

 最低限の配慮はする」


 下位グループは、沈黙していた。


 意見を出すと、

 “不満分子”と見なされるからだ。


 俺は、全員に同じ質問をした。


「もし、

 全員が同じ時間に使いたいと言ったら?」


 上位は即答する。


「評価で振り分ける」


 中位は迷う。


「……調整、かな」


 下位は、何も言わない。


 答えは、最初から決まっている。


 だが。


 俺は、違う案を出した。


 全グループに、同じ提案を。


「利用時間を、

 評価ではなく“申告制”にする」


 全員が怪訝な顔をした。


「理由は?」


「評価が高い人ほど、

 利用しない選択肢を取れる」


 沈黙。


「評価が低い人ほど、

 遠慮する」


 さらに沈黙。


「結果として、

 実際の利用状況は分散する」


 数字は出していない。

 保証もない。


 ただ、

 人間の行動を前提にした話だ。


 提出された案は、

 どれも似たり寄ったりだった。


 俺の提案は、

 どのグループにも“部分的に”混ざっていた。


 評価順でもなく、

 完全平等でもない。


 比較できない案。


 教師は、資料を見て黙り込んだ。


 数秒。


 数十秒。


 教室が、ざわつき始める。


 そして。


「……今回は、

 評価を反映しません」


 その一言で、

 空気が凍った。


「全案、

 比較不能です」


 視界が、一斉に静止する。


《評価変動:なし》


 誰の数字も、動かなかった。


 初めてのことだった。


 誰も上がらない。

 誰も下がらない。


 教師は続ける。


「これは……

 想定外です」


 正直な声だった。


 授業後、俺は呼び止められた。


 教師は、俺をまっすぐ見て言う。


「君は、

 制度を理解しすぎている」


「そうですか」


「それが問題だ」


 教師は、ため息をついた。


「評価不能は、

 本来“観測対象”だ」


「だが君は、

 観測する側に回っている」


 それは、警告だった。


 俺は、軽く首を傾げる。


「評価不能にも、

 使い道があると分かっただけです」


 教師の視線が、鋭くなる。


「次は、

 そう簡単にはいかない」


 放課後、教室を出る。


 周囲の生徒たちが、

 遠巻きにこちらを見る。


 恐れ。

 警戒。

 そして、わずかな期待。


 評価不能は、

 危険だ。


 だが同時に、

 希望にもなり得る。


 今日、初めて。


 この学園で、

 誰も上に行かなかった。


 それだけで、

 制度は揺らいだ。


 俺は、確信する。


 壊す必要はない。


 正しく使えばいい。


 評価不能という欠陥を。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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