Scene 4: 始まりのダンジョン
レイムは、村を出たところから、三年前の自分たちが歩いた道を逆走し始めた。
(三日目。三日目、何があった……?)
当時の旅はただ新鮮で、すべてが楽しかった。ただアレスとラザロと一緒にいられるだけで嬉しかった。魔法を落としたという決定的な瞬間など、全く記憶にない。
唯一の希望は、三年間分の足跡をたどること。
そして彼女がたどり着いたのは、村から少し離れた森の奥にある洞窟の入り口。苔むした岩肌に、わずかに魔力の残滓を感じる場所――。
はじまりのダンジョンだ。
彼女たち勇者パーティーが、初めて三人がかりで挑んだ試練の場所である。
レイムは、深呼吸をして記憶の扉を開いた。
*回想(三年前)**
洞窟の前で、銀色の鎧をまとったアレスは、太陽のように輝いていた。
「よっし!行くぞ!!俺たちの魔王討伐の第一歩だ!気を引き締めていくぞ!」
「アレス、気合入れすぎ」
隣でラザロが苦笑いを浮かべている。
「まだ何も始まってないよ。相手はせいぜいゴブリンだ」
その時、二人の間に割って入ったのは、誇らしげな顔のレイムだった。魔導書を胸に抱きしめ、自信に満ち溢れている。
「大丈夫よ!いざってときは私の魔法で助けるわ! ゴブリンが百匹来ても、私の炎魔法で一掃してあげる!」
*回想、終了。*
レイムは、冷たい空気に現実に引き戻された。
「そうだ……!」
彼女は強く、頭の中で頷く。
(この時は、ダンジョンの中の暗闇を照らすために光魔法を使ったし、最後のボスを倒すときも、ちゃんとアレスとラザロを私の魔法で助けた)
確信を得た。
(ダンジョンに入った時は、ちゃんと魔法持ってた。つまり……落としたのはこの中か、ここを出た直後だ!)
三年間、偽り続けてきた代償を払うように、レイムは魔導書を持たない自分の拳を固く握りしめた。
「よおし……」
レイムは、覚悟を決めた。
彼女は勇者パーティーの「魔法使い」としてではなく、ただの「魔法を落とした少女」として、薄暗いダンジョンの中へと足を踏み入れた。
三年前、希望に満ちて進んだ道。今は、失ったものを取り戻すために、孤独な探索が始まる。




