Scene 2: 帰省、そしてヤンキー母
レイムの実家は、ごく普通の木造の家だ。しかし、どこか他の家よりも玄関先が磨かれており、やたらと派手な鉢植えが並んでいる。
レイムは、三年分の緊張と不安を抱えながら、そっと玄関の扉を開けた。
「……ただいま!」
声を出した瞬間、奥から地響きのような足音が響き、廊下の角から人が飛び出してきた。
「あんた!! なんでこんな所にいるのよ!?」
レイムの母だ。年齢の割に若々しく、黒髪にはメッシュが入っており、部屋着ながらもどこかヤンキー風の威圧感を漂わせている。
レイム母は、レイムの顔を見ると、眉間に深いシワを寄せた。
「噂じゃ、あんたたち勇者一行は魔王城に入ったって聞いてるけど?今ごろ、魔王と戦ってるんじゃないの?」
そして、レイムの全身を値踏みするように一瞥し、ぞっとするような言葉を吐いた。
「まさか……死んで化けて出てきた? こんな昼間から」
「ちっ!違う違う違う!」
レイムは慌てて両手を振り、否定した。
「死んでないし!魔王にはまだ会ってないし……!ちゃんと生きてるわよ!」
「じゃあ、なんでこんな所にいるのよ」レイム母は腕を組み、不機嫌そうに言った。「魔王城から逃げ帰ってきたんじゃないでしょうね?」
レイムは、ガリウムやアレスに話すよりもさらに気まずい思いで、俯きながら事情を話し始めた。三日目の出来事、三年間フリをしていたこと、そして魔王城からの緊急脱出。
話を聞き終えたレイム母は、長い沈黙の後、呆れ果てたような顔で大きなため息をついた。
「はぁ!? 何やってんのよ、あんたは!」
レイム母の怒声が家中に響く。
「三年間もフリなんて馬鹿なことして!家に帰ってきてる場合じゃないじゃない!まったく、どこまで手間のかかる子なのよ……」
母は、レイムの肩をバンと叩いた。愛情と、呆れが混ざったようなその仕草に、レイムは少しだけ心が軽くなるのを感じた。
「いいから!早く落とした魔法拾ってきなよ! 親の顔に泥塗ってんじゃないわよ!」
「は、はい……!」
レイムは母の迫力に押され、反射的に返事をした。
レイムは、そそくさと家を出た。
青い空の下、改めて立ち尽くす。
(さて……落とした魔法……どうやって探そうか……)
三年前の三日目。この村を出てすぐの道。記憶を辿っても、魔法が落とされたという確証のある光景は浮かんでこない。
レイムは、ただの「魔法使いのフリをした少女」として、孤独な探索を始めるのだった。




