Scene 8: 湖畔の決戦と、最強の物理
湖畔。レイムは、リムが唱えた浮遊魔法を受け、まるで羽衣を纏ったかのように、静かに宙に浮いた。
ザバァァン!
巨大な水しぶきとともに、ストーウェオーユーエが湖面からその全貌を現した。犬の頭とヘビの頭を持ち、その体躯は船をも軽くひっくり返すほど巨大だ。
まず、ヘビの頭が、うねりを上げて高速でレイムに向かって襲いかかった。
レイムは、唯一使える魔法を放つ。
「【火炎矢】(ファイアアロー)!」
前回ヴァンパイアを一瞬で消し炭にした巨大な火の矢が、ストーウェオーユーエに直撃する。しかし、水辺の怪物にとって、火属性の魔法は相性が悪い。
ダメージは少ない。ヘビの頭の皮膚が焦げ付いた程度だ。
「やっぱり火属性の魔法は効果が薄い……でも、今は……これしかないから……」
レイムは、諦めなかった。彼女は、火炎矢を連発した。その尋常ではない手数と魔力量で、怪物の動きを鈍らせようと試みる。
巨大な炎の連続攻撃に、さすがのストーウェオーユーエも怯み、動きが鈍った。
その隙を見逃さず、レイムは一気に距離を詰め、水の剣を構えた。
犬の頭が、レイムの接近を察知し、凄まじい勢いでレイムに襲いかかる。
ドゴォン!
ストーウェオーユーエの頭が、レイムに強烈な一撃を当てる。湖面を割るほどの衝撃だ。
レイムは、両腕で防御の体制を取る。彼女の身体は、強烈な一撃にも吹き飛ばされない。しかし、その衝撃は凄まじかった。
「……結構……痛い……!」
レイムは、瞳に涙を滲ませながら叫んだ。
「痛いよ!」
次の瞬間、レイムの怒りと、鍛え抜かれた力(STR)530が爆発する。
彼女は、渾身の力を込めて水の剣でストーウェオーユーエを斬った。
ガッシャァァン!
水属性の特効と、レイムの尋常ではない物理攻撃力(剣技は素人だがSTRが全てを解決する)が合わさり、ストーウェオーユーエの巨体は強烈な一撃で吹き飛んだ。
レイムは、宙に浮いたまま、吹き飛んだストーウェオーユーエに追い打ちをかける! 彼女は水の剣を連打し、湖に落下するまでに、怪物を切り刻んだ。
悶えるストーウェオーユーエは、水面を真っ赤に染め、やがて動きを止めた。
レイムの圧倒的な、完全勝利だった。
船の上から見ていたリムとニールは、その全てを見ていたにも関わらず、何もするスキがなく、ただ呆然とするしかなかった。レイムの戦闘能力は、もはや魔法使いや戦士といった職業の枠を超越していた。




