Scene 7: 浮遊する怪力魔法使い
ヒュッ、という風切り音だけを残し、レイムは湖畔の町から、一瞬にしてリムとニールがいる場所へ舞い戻った。
「はやっ!」
リムは、その圧倒的な速度に、素直に驚きの声を上げた。
「レイム!剣は!水の剣はあったの?」
ニールは、目を輝かせ、興奮を隠しきれない。レイムの手に握られた、青く輝く剣を見て確信する。
「剣を使うのは僕だよね!この中で戦士なの、僕だけだし!」
レイムは、ニールの純粋な意欲に申し訳なさそうに視線を落とした。
「……大丈夫……ニールはいつもの……剣で……」
「えっ、じゃあその剣は誰が使うのさ!」
「……私……」
「ええっ!? なんでだ!レイムは魔法使いじゃん!」
リムは、ニールの肩をそっと叩いた。
「……多分……おまえよりレイムのほうがはるかに強い。怪力だし」
「か、怪力じゃない!」
レイムは即座に否定したが、もはや誰も信じていない。
水の剣を携えたレイムたちは、湖へと向かい、ケルピー討伐の時に使った船に乗り込んだ。
船は、目的地の島へと静かに進んでいく。
島に近づいた、その時。
ザバァァン!
静かだった湖が荒れ始め、船が激しく揺れ出した。ケルピーではない。もっと巨大で、凶悪な魔力の波動だ。
「……来るわ」レイムは、水の剣をしっかりと握りしめた。
「おい、どうすんだよ!なんか作戦はあるんだろうな?」リムは、荒れる湖面を見て、焦燥感を募らせる。
「やっぱり、僕たちがどうにか出来るような相手じゃないんじゃ……」ニールは、恐怖で腰が引けている。
レイムは、船の舳先で立ち上がり、強く二人に告げた。
「大丈夫だから……リム」
レイムは、懐かしい魔法の名を告げた。
「私に浮遊魔法。あとは後方から援護して」
「ニール……とにかく無理しないで……」
レイムは、自身の圧倒的なフィジカルと、水の剣、そしてリムの魔法を組み合わせた、唯一の作戦を立てた。彼女は、伝説の怪物を相手に、空を飛ぶ前衛魔法使いとして挑むことを決めたのだった。




