Scene 2: 成長した少年と、魔法の告白
レイムとリムは、迷い森の手前にあるマヨイ村に到着した。
この村は、三年前とほとんど景色が変わっていない。土壁の家々、静かな通り。まるで時が止まってしまっているかのようだが、その変わらなさが、レイムには安心感を与えていた。
「……変わらない」レイムは、思わず呟いた。
「変わらないっていうか、相変わらず何にもない村だな」リムは、都市育ちらしく不満げだ。
村に入ると、すぐに背の高い少年が、レイムたちに気づき、大股で駆け寄ってきた。
「レイム、帰ってきたんだね! ということは、ついにやったんだね! やりとげたんだね!」
レイムは、その熱烈な歓迎にきょとんとする。彼女は、しばらく少年をじっと見たが、ピンと来るものがない。見知らぬ人だ。
「レイム!僕だよ、僕!!ニールだよ!」
少年の名前を聞いて、レイムの記憶が、ようやく目の前の姿と結びついていく。
「ニール? あのニール?……大きくない? 私がこの村に来た時は、私と同じくらいだったよ……」
ニールは、屈託なく笑った。
「あれから何年経ったと思ってんだよ!成長もするさ!」
レイムは、ニールを改めて見上げる。確かに、当時のニールは、村のやんちゃな少年という印象だったが、今はレイムより頭一つ分は大きい、立派な青年になっている。
「帰ってきたってことは、ついにやったんだな!」ニールは、瞳を輝かせた。「ガリウス兄さんはどこ?無事に魔王を倒して、英雄として凱旋したんだろ!」
レイムは、ニールの言葉に胸を締め付けられた。
「……やって……ない」
レイムは、小さく首を振った。
「やってないよ……」
ニールは、笑顔を消した。
「じゃあ、なんで帰ってきたんだよ。ガリウス兄さんは?まさか……死……」
「……違う。健在。ガリウスも、魔王も……健在」
レイムの告白に、ニールはさらに困惑した。
「じゃあ、まさかレイムだけ逃げてきたのか?」
「違う……違うの……」レイムは、両手を広げて否定した。「拾いに……落としたもの……」
「落としたもの?」ニールは理解できない。
そこで、リムが口を挟んだ。
「そうだよ。こいつは魔法全部落としてんだよ。今、落とした魔法を拾う旅をしてんだからよ」
ニールは、呆気に取られた。
「落とした?じゃあ、ガリウス兄さんは? どうしてるの、今?」
レイムは、俯きながら答えた。
「……待ってる……待ってるから、早く全部拾って戻らないといけないの……」
ニールの顔に、再び決意の光が戻った。
「なんてことだ。だったら、僕も拾うの手伝うよ。ガリウス兄さん待たせてるなら!」
ニールは、レイムの魔法ロストという荒唐無稽な話よりも、尊敬するガリウス兄さんが待っているという事実に、すぐに協力することを決めたのだった。




