Scene 6: 怪力女と、終焉
ギルドの中は、完全な静寂に包まれた。ガイムの猛烈な右拳は、レイムの華奢な左手一本に、まるで時が止まったかのように受け止められている。
「……っやっ、やめませんか……暴力……良くない……です」
レイムは、恐怖に震えながらも、どうにか相手を諫めようと言葉を絞り出した。
「うっ、動かねぇ! このっやろう!」
ガイムは、全身の筋肉を震わせながら力を込めたが、レイムの手はびくともしない。彼は苛立ち、残る左腕を振り下ろすが、それはレイムの右手に簡単に止められた。
「なっ……!」
「……もう……本当に……暴力は……良くない……です」
レイムの声には、微かな涙声が混じっていた。
微動だにしない状況に焦り、イラついたガイムは、最後の手段として、頭突きをかまそうとレイムに体当たりを仕掛けた。
「……良くないです……暴力は良くないです!!」
その叫び声とともに、レイムの体に宿るレベル90、力(STR)530の途方もないパワーが炸裂した。
ドゴォッ!
ガイムは、レイムの小さな身体によって、まるで空気のように投げ飛ばされ、ギルドの奥の壁に激突した。壁には、ガイムの背中の形をした大きなヒビが入る。
ライラは、手に持っていた酒瓶を床に落とし、その音すら聞こえないほど唖然としていた。
リムは、自分の常識が完全に破壊された光景を見て、完全に唖然として口をぽかんと開けている。
壁にめり込み、よろよろと立ち上がったガイムは、レイムを指差して呻いた。
「……貴様……魔法使いのフリをした戦士か…… この怪力女……化け物が!」
屈辱と怒りに満ちたガイムは、最後の力を振り絞った。
「俺の全力の一撃を食らうがいい!!」
ガイムは、巨大な右こぶしを振り上げ、咆哮しながらレイムに突っ込んでくる!
「……ひどい……怪力じゃないし、化け物じゃないもん!!」
レイムは、涙を浮かべながら、その理不尽な呼称に反論した。
そして、彼女は、突っ込んできた大男の顔面に、ごく軽く、右の平手打ちを放った。
ベチィッ!
その瞬間、ガイムの巨体は床に叩きつけられ、まるで地面に吸い込まれるようにめり込んだ。ガイムはピクリとも動かず、気絶した。
ライラは、呆然としたまま、壁に寄りかかった。
「あんた……なにものよ……」




