第3話:最初の落とし物 Scene 1: 冒険者ギルドの記憶
承知いたしました。第3話の冒頭、レイムが最初に落とした魔法の場所を特定し、過去の「勇者」登録の記憶を回想するシーンを描写します。
第一章:故郷と、消えた魔法の痕跡
第3話:最初の落とし物
Scene 1: 冒険者ギルドの記憶
リムは、世界中に散らばる**無数の赤い点(魔法の文字)**の数に圧倒され、思わず一歩、後ずさりした。彼は、この途方もない魔法探しに巻き込まれることの重大さを今、痛感している。
レイムは、そんなリムの動揺に気づかず、新しい魔導書の地図に夢中になっていた。
「ねえ……リム……この中から、一番近いのって……?」
リムは、レイムの純粋な瞳を見て、自分が後ずさりしたことがばれないように、そっと元の位置に戻った。
「?」レイムは一瞬、不思議そうに首を傾げた。
「近いところだと……この街にあるな」リムは、魔導書の地図を指差した。
「……あ……このあたり……知ってる……」
一番近い赤い点。それが示すエリアは、冒険者ギルドがある辺り、冒険者御用達のエリアだった。
アレスたちとも、「この先、魔王討伐の冒険に行くなら、登録したほうが良い」と言われ、旅立ち直後に登録しに行った場所だ。レイムは、その時の冒険者としての登録をした時の事を思い出す。
*回想**
賑やかなギルドの待合室。アレスは、手にした登録用紙を見て頭を抱えていた。
「この登録用紙なんだけどさ」
「職業のところ、レイムは『魔法使い』じゃん?ラザロは『僧侶』じゃん?俺は?」
「……え?……アレス……は勇者……だよね」レイムは当然のように答える。
「うん、そうなんだけど……『勇者』って職業じゃない気がして。なんか、普通の職業の人が頑張って*『勇者』として認められる**……みたいな」*
ラザロが冷静に頷いた。
「たしかに……アレス、あなた無職ですね」
「だよな!」
「……じゃあ、無職って書くのかな……?」レイムが恐る恐る提案する。
「それはいやだー!かっこわるすぎる!!」
*回想、終了。*
「あのとき……結局なんて書いたんだっけ?」
レイムは指を折りながら思い出す。
「……『勇者』。そうだ、ラザロが『もういいですから!』って強引に**『勇者』**って職業欄に書いてた……」
レイムは、その滑稽な過去に小さく微笑んだ。
「冒険者ギルドのあたりか……大丈夫かな?」リムは、不安げな目でレイムに問いかけた。
リムにとっては、「落とした魔法」がギルドのような公共の場にあることが、すでに異常事態だ。
「……大丈夫?」
レイムは、リムの不安をよそに、自分の最初の落とし物が見つかるかもしれない場所へ、期待を抱き始めていた。




