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魔法をどこかに落としてきました…(´・ω・`) 魔法を忘れた魔法使いの物語  作者: 南蛇井


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第2話:賑わいの中の孤独 Scene 1: ロウゼリアの再訪

ロウゼリアの町。三年前と変わらず、活気に満ちていた。


大勢の人間が忙しく行き交い、通りに立ち並ぶ商店は、活気づいた喧騒を放っている。世界が魔王の脅威に怯えていようと、商業都市の熱狂は変わらない。


「(人が多い……相変わらずちょっと苦手……)」


レイムは、頭痛がしそうなほどの情報量に圧倒され、きょろきょろと周囲を警戒しながら歩いていた。そのせいで、彼女はすぐに人々の波に飲まれ、先を歩くリムとの距離が離れていく。


「あっ……リ……リム……」


不安に駆られたレイムが声を上げかけた瞬間。


「あーもう!」


リムが苛立ちを滲ませた声とともに、さっと戻ってきた。そして、無言でレイムの手首を掴み、人波を縫うようにして歩き出す。


「ひっ!」


レイムは、その不意打ちと、手のひらに伝わる体温に、思わず飛び跳ねた。


(この感じ……)


その瞬間、三年前の光景が、鮮明な映像となってレイムの意識を占領した。


*回想(三年前)**


ロウゼリアの活気ある広場。


アレスは胸を張って言った。


「さすがに人が多くて活気づいてるね!ここならなんでもそろいそうだ!」


隣でラザロが釘を刺す。


「調子に乗って買いすぎてはダメですよ、アレス。まだ旅は始まったばかりなんですから」


「わかってるさ。それぐらい」


そんなやり取りを尻目に、レイムは人混みに萎縮していた。


(人が多いの……苦手……だな……)


レイムの異変に気づいたアレスが振り返る。


「どうした?レイム」


レイムは言葉を選ぶ。


「……人が……多い……多いなって……」


*「あれ?レイム、街に来るの初めてか?」*アレスは少しからかうように言った。


「うん……情報量多すぎて頭痛くなってきた……」


「田舎者だな」


「同じ村出身だよね……」


そんなやり取りの最中、レイムは一瞬、人混みのせいでアレスたちを見失ってしまった。急に胸が締め付けられ、不安になり辺りをきょろきょろする。


そんなレイムの手に、温かい手が触れる。


アレスが、人の流れを遮るようにレイムの隣に戻り、優しくレイムの手を引いて歩き出した。


「世話が焼けるな」


アレスは笑いながら言ったが、その表情には優しさが滲んでいた。


「アレス……ごめん……なさい」


レイムは、このチャンスを逃してはならないと思った。


「じ……じつは……ま……」


彼女は、「魔法を落とした」と告白しようとした。しかし、アレスは笑顔で遮った。


「気にするなよ。こんなことぐらいさ」


アレスにとっては、人混みで迷子になることなど、「こんなこと」だった。だが、レイムにとって、「魔法を落とした」という事実は、「こんなことじゃない」。


(魔法を落としたことを伝えようとしたけど、伝えられなかった……)


レイムは、この**「言いそびれた瞬間」**こそが、彼女の三年間、そして勇者パーティーの運命を決定づけたのだと、改めて思い知った。


*回想、終了。*


「……おい、レイム」


リムが、無愛想な声でレイムを呼んだ。


「ぼーっとすんな。新しい魔導書を買いに行くぞ。次はぐれるなよ、レベル90のムキムキ田舎者」


リムに手を引かれながら、レイムは三年前と同じ、賑わいの波の中に立っている。ただ、隣にいるのは、勇者アレスではない。そして、彼女自身も、もはや**「魔法使いのフリ」**をする必要はなかった。

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