Scene 15: ロウゼリアへ
レイムは、リムの激しい突っ込みと、自分が魔王討伐レベルの怪力を持つという事実に打ちのめされていた。しかし、すぐに冷静を取り戻し、現実的な問題に焦点を当てる。
「あの……新しい魔導書って……」
レイムは、消え入りそうな声で尋ねた。
「どこで手に入るの……?」
リムは、腕を組みながら、呆れた表情で答えた。
「魔導書変か?この辺りだと……ちょっと大きい街まで行く必要があるな。ロウゼリアの町に行けばあるかな」
ロウゼリア。その名前を聞いた瞬間、レイムの記憶が三年前の旅立ちの時へと引き戻された。
(ロウゼリア……アレスたちと旅立ちで始めに立ち寄った、大きめの町だ)
*回想(三年前)**
ロウゼリアの賑やかな大通り。アレスは目を輝かせて言った。
「ここで、この先に必要な装備をちょっとそろえようぜ!最高の旅のスタートだ!」
ラザロが、穏やかな表情で頷く。
「そうですね。この先長い旅路になりますし、しっかりとした準備が必要ですね」
二人の高揚感に包まれ、レイムは少しだけ俯いた。
「……そう……よね」
(そうだ……この時……あれ?**魔法落としたかも……?**って思ったけど、二人の装備選びで盛り上がってて、言いそびれてそのまま……)
レイムの「タイミングを見失った」という言い訳の裏には、三年前のロウゼリアでの、決定的な「言えなかった瞬間」が横たわっていた。
「なに、ぼーっとしてんだよ」
リムの声に、レイムはハッと現実に引き戻された。
「あっ……いや……」
(思い出にふけっていたとは言えない!)
「あー、魔導書変……やりかた……とか……」
レイムは、しどろもどろになった。新しい魔導書にどうやって魔法を引き継ぐのか、そもそも魔導書というものが変更できるという事実自体が、彼女にとって異次元の話なのだ。
リムは、レイムのあまりの世間知らずっぷりに、ついに根負けした。
「あーもう、しょうがねぇな!」
リムは頭を抱えた後、覚悟を決めた顔でレイムを睨みつけた。
「いいか。お前みたいなレベル90の化け物を野放しにして、魔法をばら撒かせ続けるわけにはいかねぇ」
「俺の持ってる魔導書は最新式じゃないが、お前よりはマシだ。一緒にやってやるから、ついて来いよ」
こうして、リムという新たな同行者を得て、レイムの「落とした魔法探し」の旅は、ようやく現代の魔法界に接続された。
二人は、まず新たな魔導書を手に入れるため、ロウゼリアの町へと向かうのであった。




