Scene 14: 化け物と、レベル90の魔法使い
レイムは、魔導書が進化しているという事実に打ちのめされ、再びパニックに陥った。
「……どっ、どどどどうしたら!? どうしたらいいのよ!?」
レイムは、答えを求めるように、反射的にリムに掴みかかった。その両手には、無自覚ながらも力(STR)530の剛腕が込められている。
「うぐっ……! し、死ぬぅ……」
リムは、レイムの凄まじい握力に締め付けられ、目を白黒させながら、今度こそ本当に意識を失いかける。
「ごっ、ごごごごごごめん!ごめんなさい!」
レイムは、慌てて手を離した。リムは地面に崩れ落ち、ぜいぜいと息を吸い込む。
「はぁ、はぁ……おまえ、本当に魔法使いか!?」
リムは、恐怖と驚愕に満ちた目でレイムを見上げた。
「異常な怪力だぞ!その辺の戦士より圧倒的な怪力だぞ!」
「……え、ええ……一応……魔法使い……一筋で……」
レイムは、ムキムキの事実を指摘されて、さらに居心地が悪くなる。
「一応……レベルも90越えてるので……」
リムは、咳き込むのも忘れて、絶句した。
「……きゅ、90!?」
その数値は、一般的に「国の英雄」「人類最強」と呼ばれるクラスに匹敵する。
「もう化け物じゃん!!魔王とか倒しに行くレベルじゃん!!」
リムは、全身が筋肉痛になりそうなほど力を込め、立ち上がった。そして、レイムの魔導書と、その非力な外見を交互に見て、理性が崩壊しそうになる。
「そんな奴が、こんな古い魔導書を持って、しかも魔法を落としてるだと!?」
リムは激昂した。
「おまえ、こんなふざけてないで、世の中のために魔王討伐とか行けよ!!」
「……ええ……まあ……はい……」
レイムは、言葉に詰まった。
(一応……一応、行ってたし……魔王城に、行った……行っただけだけど……)
レイムは、心苦しくも心の中で主張するのだった。




