Scene 13: 古文書(アンティーク)魔導書
リムは、レイムから受け取った魔導書をパラパラとめくり、最後のページをじっと見つめていた。その表情が、次第に困惑と嫌悪に変わっていく。
「……おま、これ……古いな。この魔導書、古すぎないか?」
リムは、ボロボロと今にも崩れそうな表紙を指で弾いた。
「なんでこんな古臭い物使ってんだよ」
レイムは、リムの言葉の意味が理解できなかった。
「……えっ?……なんで……って、魔導書は古いほど……価値があるって、師匠に……」
彼女が旅に出る前に教えられた、魔法界の常識だ。
「どんなおばあさんの発言だよ!」
リムは思わず叫んだ。
「おまえ、実はすごい年寄りだろ?魔法か何かで見た目ごまかしてるだろ!」
「そんなことないもん!まだ17歳だし!」レイムは必死に反論した。
「えっ!!俺と同い年じゃん!」リムは心底驚いた。しかし、その驚きはすぐに怒りへと変わる。
「じゃあなんで、こんな古臭くて機能的じゃない魔導書使ってんだよ!魔導書変えろよ!魔導書変!」
リムは、レイムの魔導書を力いっぱい突き返した。
「今どきこんな古臭くて機能的じゃない魔導書使ってるやついねぇよ。これじゃあ、落とした魔法も探せねぇじゃん!」
「?」
レイムの頭の中には、無限の疑問符が浮かんでいた。
「……?どういう……?探せる……?」
リムは、絶望的なほど無知なレイムに、苛立ちを隠せなかった。
「そうだよ!最近の魔導書は、魔法落とした時対策で落とした魔法を探索する機能がついてんだよ!お前の、ついてないじゃん!」
リムは呆れて口を開けた。
「いつから使ってんだよこれ?骨とう品も良いところだぞ。今どきこんな古い魔導書使ってる魔法使い探すほうが大変だよ」
レイムは、手に持つ分厚い魔導書を見下ろし、呆然とした。
「……知らなかった……魔導書って進化するものなんだ……」
魔王討伐という壮大な旅の裏で、魔法界の常識と技術は進化していた。三年間、フリを続けて世間から隔離されていたレイムは、自分が完全に時代に取り残されていたという、もう一つの絶望的な事実に直面したのだった。




