表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法をどこかに落としてきました…(´・ω・`) 魔法を忘れた魔法使いの物語  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/30

Scene 6: 寄り道と、初期の薬草

ダンジョン内部

レイムは、ゴブリンを粉砕した右手を震わせながらも、覚悟を決めてダンジョンの奥深くへと進んでいった。


(「力」が上がってるのは分かったけど、別にこの力が魔法を拾う助けになるわけじゃないし……)


彼女は慎重に、床に何か落ちてないかと目を凝らす。しかし、あるのは苔むした岩と、魔物の糞らしきものばかりで、「魔法」の痕跡らしきものは一切見つからない。そもそも、**「魔法の痕跡」**とは一体何なのか、レイム自身にも定義できないのだ。


しばらく進むと、レイムはひとつの分かれ道にたどり着いた。


「ここだ……」


三年前、アレスたちと初めてここで立ち止まった記憶が蘇る。


(あの時、アレス、ラザロと三人で迷った挙句、左に行ったんだ。そのまま先に進めたから、右には行っていない……)


「落とした魔法探し」という目的を考えれば、三年前の自分たちが通った左のルートを辿るべきだろう。


だが、レイムの心は、誰も知らない右の通路へと惹きつけられていた。


(右……何があるんだろう……?三年前、アレスが『魔王討伐には関係ない』って言って行かなかった道……)


旅の目的は、魔法を探すこと。でも、三年間「魔法使いのフリ」をして、ひたすらアレスとラザロの決定に従ってきたレイムにとって、**自分の意志で進む「寄り道」**は、抗いがたい魅力を持っていた。


「……右、行っちゃえ!」


レイムは意を決し、右の通路へと足を踏み入れた。


時折、ゴブリンやスライムといったモンスターが出てきたが、レイムは恐怖心を押し殺し、強化された**「力(STR)530」を活かして、それらを難なく撃退**していった。


右の通路をしばらく進むと、ダンジョンは行き止まった。


しかし、その奥には、岩の陰に隠れるようにして、宝箱が一つ置かれていた。古びており、何年も開けられていないかのように埃だらけだ。


レイムは、警戒心を抱きつつも、そっと宝箱の蓋に手をかけた。


カタリ。


古びた音を立てて宝箱が開いた。中から出てきたのは……


「あ……」


それは、薬草だった。


緑色の葉が数枚。冒険者なら誰もが知っている、初期の薬草だ。体力がちょびっとだけ回復する、まさに旅の始まりに必須のアイテム。


(今じゃ、ラザロの回復魔法の足元にも及ばない。何の役にも立たないけれど……)


レイムは、それを手に取る。


「あの頃だったら、この薬草ひとつで、みんな大喜びで大助かりのアイテムだったわ」


レイムは、初期の薬草を優しく撫でた。三年前、純粋に冒険を楽しんでいた頃の、小さな喜びの記憶が胸に広がる。


この薬草は、レイムの失われた「魔法」ではなかった。だが、レイムにとって、これは三年前の**「勇者パーティー」の希望の欠片**のように感じられた。


レイムは薬草をそっとローブの内ポケットにしまい、満足したように立ち上がった。


(寄り道、終了!)


彼女は来た道を戻り、分かれ道まで戻ると、今度こそ本来の目的の場所、左のルートへと進んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ