第84話 愛から恋へ
ヴィエルジュと一緒に放課後デート。文字通り放課後デートなもんで、アルバートの街をぶらり。
こっちに住んで数ヶ月。もうすっかり慣れたはずの街並みも、今日はどこか違った様に見えちまう。
それってのはヴィエルジュの様子のせいである。
「うわぁ、かわいー♪」
かわらいらしいアクセサリーを見つけては、目を輝かせる。
「──はぁ」
かと思えばため息一つ。
この子、情緒どうなってんだか。
「お、学園とこの脳筋黒髪じゃねぇか」
本日もお祭りみたいな市場を歩いていると、露店の店主が話しかけてくる。
「その呼び方、コンプラ的にどうなん?」
「あん? コンプラだが、ガンプ◯だが、コブラだが知らんが」
奇跡的に前世にあった有名プラモデルの名前を出してくる。もしや転生者? いや、ないない。
「アルバートに貢献してるみてぇだし、もってきな、ほれ」
そう言って慣れた手付きでわたあめなんかを作ってくれた。
「良いんですか?」
「デートなんだろ。これくらいサービスしてやらぁ」
「わぁい、ありがとうございます」
コンプラアウト発言だが、こうやってサービスしてくれるのはありがたいね。
「ほい、ヴィエルジュ。あーん」
もらったわたあめをヴィエルジュの方へ向けると、慌てて顔を逸らした。
「こ、こんな人前で、えっちです」
「今までの俺とお前とのやり取りでこれが一番えっちじゃねぇよ」
「そ、そんなに食べさせたいんです?」
「いや、別にそこまで……」
「しょうがない。今回だけですよ」
「話聞けよ」
なんて言っても聞かないヴィエルジュはお上品に口を開けた。そこへわたあめを持っていく。
「はむ……はむはむ……」
かわいらしく、わたあめをはむはむすると、「うーん♪」と嬉しそうな顔を見してくれる。
すると、「はっ」となにかに気が付き、「ふんっ」と鼻を鳴らす。
「べ、別にわたあめなんて好きなんかじゃないんだからねっ」
「なんでわたあめに対してツンデレ発動させてんだよ」
「あーんは普通に嬉しいんだからねっ」
「そこは素直なんかいっ。情緒大丈夫かよ、まじに」
そんなやり取りをしていると、パフっと俺の足になにかがぶつかった。
「おっと」
子供だ。小さな男の子が俺とぶつかると、軽く尻餅を付いてしまう。
「ごめん!! 大丈夫!?」
「ぅ、あ……ああああああ!!」
尻餅をついてしまった男の子はその場で大きく泣き崩れてしまった。
「ごめんなぁ。大丈夫か? 痛かったなぁ」
よしよしと頭を撫でてやると、「ママぁ!!」と甲高い声を荒げる。
「迷子か。よしよし」
泣きじゃくる男の子をおんぶしてやると、俺の胸で大きく泣き叫ぶ。
「大丈夫、大丈夫。兄ちゃんがママを探してやるから安心しろ」
「ぐすっ……ほんと? おじさん」
「ああ。おじさんに任せとけ」
そう言ったものの、今はヴィエルジュとデート中。彼女へ申し訳なさそうな顔をして断りを入れる。
「良いかな?」
尋ねると無言で俺を見つめる彼女。
なにか思うところかあるのか。
だけど数秒後には、「もちろんです」と優しく言ってのける。
「私は迷子を探している人がいないか辺りを見て来ます」
「わかった。俺はこのまま進んでみるよ」
ヴィエルジュと二手に分かれ、俺達は迷子の母親を探すことにした。
♢
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「いえいえ」
結果として母親は見つかった。
相手の母親は、これでもかってくらい俺へと礼をしてくれる。
「ほら、あんたもお礼言いなさい」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「おじさんからお兄ちゃんに変わったな」
「だってお兄ちゃんはかっこいいから!!」
子供の基準はわからんが、まぁあんだけ泣きじゃくってたのが笑顔になったからヨシ。
「またねお兄ちゃん。配偶者さんによろしく!!」
「独特で複雑な言い回しをする子だな。あいよ、またな」
迷子の男の子は母親と共に帰って行った。
迷子の男の子編のクエストはクリアしたが──。
「案外時間がかかったな」
もうすっかり日が暮れそうな時間帯。
ヴィエルジュはまだ一生懸命に探してくれているのだろう。
「今度はヴィエルジュを探さないとな」
ちょっとばかし気合いを入れた独り言を放つと、シュタッと隣にヴィエルジュが空から舞い降りて来る。
「母親は見つかったみたいですね」
「ああ。サンキュな、色々探して来てくれて」
「いえ。私はなにも……」
「ヴィエルジュの方がそこら辺飛び回って負荷が大きかっただろうからな。それにしても見つかって良かった。一人は……寂しいもんな」
解決しての一言を放つと、ジッと俺のことを見て来る。なんか気に障ったこと言ったかなぁと思ったら、そういやヴィエルジュとデート中だった。
「ごめん──」
「そういうところですよ」
「え?」
「普段は、『だりぃ』とか、『うぜぇ』とか、『面倒』とか──怠惰でやる気がなくて、面倒くさがりで、目が半分死んでいて」
「ヴィエルジュさん。いきなりディスから始めるのやめませんか」
「でも、誰かのためには一生懸命になれる。服は子供の涙とよだれでベタベタ。それなのに気にもせずに母親を探して──自分のためじゃなくて誰かのために……」
彼女は胸に手を置いて瞳を閉じた。
「一人は寂しいと……相手の気持ちを思んじる……そういうところです」
「そういうあなただからこそ私は恋をしたんでしょうね」
「愛ではなく恋、です」
こちらが反応する前に、続け様に言ってくる。
「私は今まであなたに恩と安心を感じていました。それを愛と名前を付けて間違え、あなたに依存していたようです」
「最近、私はあなたに今まで通り接することができなくなった。少しでもあなたのことを考えると胸がドキドキして、あなたを直視できなくて、手が触れるだけでどうにかなりそうで。でも、今まで通りに側にいたくて……この気持ちがあなたへの愛ではなく、恋だとわかると、またドキドキしちゃって……頭がこんがらがっちゃって……あなたに変な態度ばっかりとってしまったけど、つまり、その、あの……」
髪の毛をいじり、次のセリフをまとめる彼女は、ジッとこちらを見つめていた。
「なんか、愛とか、恋とか語ったけど、ね」
「リオンくんのことが好きってことは変わらない」
今までヴィエルジュからの好意は表になって感じ取れていた。でもそれは俺に対しての恩義って部分が大きかったんだと思う。だけど今回は違う。隠している部分が表に現れるような。勇気を出して声に出したかのような、告白。
ヴィエルジュは言い切ったあとに、ボンっと顔を赤らめて顔を逸らす。
「つまり、そういうこと。最近のヴィエルジュの様子が変なのはそういうこと。全部あなたが悪いんです」
「お、俺?」
「俺です。俺が全部悪いんです。自覚してください」
「す、すみません」
「まったくもう……次から次へと女の子を引っかけてきて」
言いながら、クイっとネクタイを引っかけるように引っ張ってくる。
「前にも言いましたけど、リオンくんを誰にも渡さないから覚悟してね」
「ええっと……」
「返事は?」
「は、はい」
「よろしい」
パッと手を離してくる。
「さっ。日も暮れてきたし、帰りますよ」
「は、はい」
「なんで敬語なんです? らしくない」
「いや、すぅ……そのぉ……」
「もしかして怯えてます?」
「め、滅相もない」
「そ。さっさと帰りましょう。今日はご主人様の好きなグラタンを作ってあげます」
「それはヴィエルジュが好きなのでは?」
「ヴィエルジュの好きなものはご主人様も好き。でしょ?」
「はい。その通りです」
「ふふ。ほら、帰りましょ」
そう言って彼女は俺の半歩後ろではなく、俺の隣に並んで歩く。
なんだかそれが俺には非常に嬉しく思えた。
三・五章ってことで、思いっきりヴィエルジュとのラブコメ編でした。
この章ではヴィエルジュの気持ちの変化を書かせてもらいました。
ヴィエルジュの異常なまでのリオンくんへの好意はヴァンパイアが影響していたみたいですね。他のヒロイン達もちょっと異常ではありましたが、ヴィエルジュだけは特筆して、でしたもんね。
ヴィエルジュの異常なまでの愛が恋に変わったけど、リオンくんへの想いは変わらず。これからもリオンくんを好きでいる。ただアプローチが変わってくるのでしょう。今後のヴィエルジュに期待ですね。
さて、この三・五章。本当は四章の始めに入れようと思って、2話くらいで終わらすつもりでしたが、やはり私はラブコメ脳。ラブコメ大好きが前に出過ぎて、気が付けば4話使ってました。
ラブコメ好きなんや……堪忍やでぇ……。
四章は三・五章でもちょっぴり出ていた、『学園合同ダンジョン攻略、夏の陣』というイベントを中心に物語が進む──でしょうw
お祭りみたいな物語になれば良いなぁと思うなぁ(小並感)←最近見なくなりましたねww
みなさ、四章も引き続きお楽しみいただけると幸いです。でゅわ!!




