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有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった  作者: すずと
三章

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第76話 恋する乙女は萌えるような恋がしたい

 セレス・アルバート。

 元勇者。


 マリン・アルバート。

 転生者。


 ヴァンパイア

 生き物を魔人化させる能力を持つ化け物。


 この短時間で出てきた単語だけを並べると、ウルティムはセレス・アルバートという元勇者。マリン・アルバートはその名から彼女の姉妹。そして俺と同じ転生者。あの美青年店主の正体はヴァンパイアで、なにか因縁がある。


 生き物を魔人化させる能力ということは、今まで対峙して来た、ジュノーやエウロパ。バンベルガさん達となにか関係が──?


 いや、そこら辺を考えるのは後回しだ。事が済んだらウルティムから説明があるだろう。


「……化け物、か」


 元々の魔物もいれば、人の形をした者もいる。


 これらはアルバートで行方不明になった人達。


 そして、サーブタイさんと同じ状況なのだろう。


 殺されてから魔人化させられた。


「許せねぇな、あいつ」


 ギリッとヴァンパイアの方を睨みつける。


 なんの罪もない人達を次から次へと殺しやがって……。


 一歩、奴に近づこうとして思い止まる。


 冷静に。怒りに支配されるな。


 奴は今、ウルティムが対応してくれている。


 彼女の強さならなんの心配もないだろう。


 俺の役目は大量に出て来た化け物達の対処。


 俺の魔力で全員を──


萌える恋がしたい(デスマッチ)


 今まで黙っていたフーラが、拳を地面に叩きつけると、俺と彼女の周囲に燃え盛る炎を壁が出来てしまう。


 大量の化け物達が一部、一瞬で蒸発してしまい、炎の壁の中には俺とフーラしかいなくなった。


 炎の世界に二人だけ。


「リオンくん……二人っきりだね♡」


「フーラ、お前……」


 目が逝っている。というか♡マークになっちまってる。


 そうか、ヴァンパイアの目を見て魅了されちまったか。でも、俺の魔力が混じっているから完全なる魅了じゃなく、暴走しちまう。


 ヴィエルジュと同じ状況、か。


「リオーン♡ リオーン♡♡」


 炎の外からルべリア王女の声も聞こえてくる。甘えたような声。


 彼女もヴァンパイアの魅了にかかっちまってフーラと同じことになっちまったか。


 でも、フーラが炎の壁で囲っちまったから、他の化け同様に入れずにいる、と。


 ルべリア王女には悪いけど、フーラにはちょっぴり感謝だな。


 ヴィエルジュみたいな強さの奴を二人相手にするのは骨が折れるだろうからな。


 いや……この天才魔法使いを相手にするだけでも、ただじゃ済まないだろう。


「おいおい。この状況で剣デートを申し込んで来るなんて、どんだけ俺とデートしたかったんだよ」


 ヴァンパイアにウルティムの過去。そして、アルバート行方不明の真実。


 それらを突発的に知り、動揺しているが、なんとかいつも通りのおちゃらけた声が出せた。態度もいつも通り。


 こちらがウルティムの剣を構えると、フーラは嬉しそうに剣を構えた。


「もう私と剣デートしてくれるの? 嬉し過ぎてハイになりそう♡」


 よし。流石はノリの良いフーラ。炎の壁に閉じ込められたが、剣という同じ土俵に乗せてやった。


「ハイになり過ぎて、灰になるなよ、お姫様っ!!」


 地面を蹴り、一気にフーラとの距離を詰める。


 相手は剣の素人。悪いが秒で決着をつけさせてもらうぞ。


 キンッ!!


「──ッ!?」


 俺の剣撃が受け止められた、だと……!?


「リオンくん、初めてなのに、激し、過ぎっ♡」


 そのまま力で剣を振りきられてしまった。


「くっ……」


 ボディががら空きになっているところに、フーラは剣を持っていない手を、俺の腸目掛けて伸ばしてくる。


 すると、何重にも重なった魔法陣が浮かび上がってくる。


恋する乙女(メテオストライク)


 零距離で放たれる燃え盛る隕石。


「私の想いを受け取って♡」


「ぅ、おおおおおお──!!」


 なんとか反応して全力で叩き斬る。


 斬れたのは良いが、その場で大爆発が起こり、俺とフーラはその爆風に巻き込まれ吹き飛ばされてしまう。


「ぐ、お、ああああああ!!」


 数秒だけ宙を舞い、そのまま重力によって落とされ、地面を滑る。


 このままだと炎の壁に飲まれて灰になっちまう。


 ほとんど反射的に剣を地面に突きつけ、激しい摩擦運動の末、炎の壁の手前でなんとか止まってくれた。


「──はぁ……はぁ……あの距離で、あんな魔法、ぶっ放す、かよ、普通……」


 なにが恋する乙女と書いてメテオストライクと読むだ、ぼけっ。


 上位魔法だから、発動にちょっとばかし時間がかかってくれたのが助かった要因か。助かったといっても、さっきの爆風でボロボロだが……。


「すごい、すごい。今のに対応できるなんて、流石は私の婚約者だね♡」


 爆風の土煙から、ケロっと出て来る小悪魔系女子。


 向こうは恋だのなんだのと容赦なく攻撃してくるくせに、こっちはどうにか手を抜かないといけない状況。


 現場は相まって、ここは地獄かと錯覚しちまう──いや、炎の壁に囲まれて本気を出せないなんて場所は地獄そのものか。


「おい。剣デートだって言ってんのに魔法を使うやつがあるかよ」


「ふふ。剣と魔法を使うだなんて、私、おとぎ話の勇者様みたいでしょ」


 ウルティムが元勇者のセレス・アルバートだったとして、その名前から察するに。


「お前は本物の勇者の末裔かもな」


「えへへー。こんなにかわいい勇者と結婚できるリオンくんは、とんでもなく果報者だねぇ」


 魔法の天才。王族。勇者の末裔。


 俺の婚約者──殺せない人。


「絶望だ」


「希望の間違い、でしょ」


 フーラは持っていた剣に魔力を込めた。すると剣に炎が宿る。


 聖火のように燃え盛る剣。


「私の恋が実るような炎の剣♡ これで私の初恋が成就しますように♡」


「そんな脆い炎で恋なんて実るのか?」


「試してみる?」


 剣を軽く振るうと、フーラの周りに聖なる炎が彼女を優しく包む。


「私が勝てば、永遠を誓ってね」


「その炎が永遠なのであれば、な」


「言質、取ったから!!」


 フーラが先に仕掛ける。


 炎を纏った剣を俺に向かって振りかざしてくる。

 全魔力。本気の炎を剣に集中させている。その激しい炎はまさに永遠を思わせる。


 だが──。


 パリンッ。


 俺が炎の剣を目掛けて剣を振るうと、金属が砕ける音がして、フーラの炎は鎮火した。


「──なっ!? んで……」


 普通の剣は魔法に耐えられない。それが天才魔法使いの魔法なら尚の事。


「次は萌えるような恋の炎を期待しているよ」


 そう言って、彼女の頭に手を乗せる。


「きゅぅぅ……」


「あつっ……」


 フーラの身体が熱い。炎の魔法によるものではない。以前のヴィエルジュと同じ。


 どうやらヴァンパイアの魅了が解けたみたいだな。


「リオン、くん……わた、し……」


 ぜぇ、はぁと苦しそうなフーラへ優しく言ってやる。


「大丈夫だから、ゆっくり休んでてくれ」


「はぁ……はぁ……ぅん……」


 そのままフーラが瞳を閉じると、炎の壁が消えてなくなった。


「次はルべリア王女か……」


 彼女もまた、俺の魔力が混じっているし、ヴァンパイアの魅了にかかっている。ヴィエルジュやフーラの時みたいな感じで襲って来るのだろう。


 ステラシオン剣術大会の時よりも凄い剣撃が来るんだろうな。嫌だなぁ。


 なんて覚悟していると、空から全く予想だにしていないものが降ってくる。


 それはボトンと水風船が破裂したみたいな音を立てて、辺りを赤く染め上げた。


「ぐ、ぎぎ……おのれ、勇者、セレスめ……!!」


「ヴァンパイア……!?」


 真っ二つになったヴァンパイアが恨めしそうな声をあげていた。


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