第72話 かっこよく決めたと思ったら大体決まらない
「エスコルさん」
ステラシオンにやって来ると、エスコルさんの店へ直行。店に入ると、まぁたヘイヴン家の引きこもりが来たなんて言われちゃった。連れている女の子が妹と専属メイド以外でびっくりしたところで、フーラとウルティムを紹介。もちろん、ウルティムの事情は隠してある。
ウルティムが興味深々に剣を見るもんだから、フーラが付き合う形で二人には時間潰しをしてもらっている。
「この剣なんだけど、みてくれません?」
挨拶もそこそこに、ウルティムに刺さっていた剣をエスコルさんへ手渡した。
「ほぅ……」
渡した剣をまじまじと眺めながら声を漏らしている。
「珍しい?」
──ありゃま。俺の質問を無視して、ジッと剣を見つめちゃってるよ。
まるでなにかお宝を見つけたかのような。そんな真剣な表情。
その態度から淡い期待を抱いてしまう。
「もしかして、激レアで、相当な売値になる、とか?」
ゴクリと生唾を飲んで次のエスコルさんの言葉を待つ。
「ただのロングソードだな」
「エスコルさぁん。だったらお宝を見つけたような空気を出さないでくださいよぉ」
まぁ剣を売りに来たわけじゃないんだけどさ。
「わりぃわりぃ。鍔のところに消えかかっているけど文字があんだろ? 随分と古い文字だ。相当古い剣だな、こりゃ」
言われて気が付いた。確かになにか書いてある。
「古い文字が書いてあるのなら、ビンテージもんで価値が付かないの?」
「俺は質屋じゃねぇからな。もしかしたら価値が付くかもしれんが、剣としての価値はそこらのロングソードと同じだ」
「あー、そういうね。ちなみになんて書いてあるの?」
「さぁなぁ。俺は古代文字なんて読めねぇよ」
「そりゃそうか」
「パッと見でわかるのはそんくらいか。詳しく調べてやっても良いが──まぁ、こんなもんだな」
言いながら、見積書を出されちゃった。
「そうなりますよね」
「そりゃ、こっちも商売だからな。安心しろ。レオンの息子だから割引してやってるよ」
「ワーウレシイナァ」
割引されても、俺の手持ちじゃ払えません。
くっ。仕方ない。あんまりこういうのを頼るのは嫌だが……。
「フーラ──って……」
「どうどう? リオンくん。アルバート王女、剣バージョン」
剣を構えるフーラの姿は、なんというか、うん。様になっている。
「良いじゃん。似合うな」
魔法使いには珍しく運動神経抜群なお転婆姫様だ。そりゃ剣も似合うってな。
「褒められたー♪ 嬉しいー♪♪」
褒めてやると、「えいっ。やっ」なんて、ちょっぴりふざけた感じを出して剣を振っていた。
「ぼくが見繕った」
「ウルティムが?」
世界最悪の剣のコーディネートってわけか。そう聞くと、それが良いことなのか、悪いことなのかわからんな。
「馬子にも衣装」
「おいごら。誰が馬子だ」
「お。アルバートの姫さん。その剣を選ぶたぁ良いセンスしてんな」
この状況を見ていたエスコルさんから声が上がると、「えへへー、ありがとうございます」なんて更にフーラの機嫌が良くなる。
「ぼくが選んだ」
エスコルさんへ、ドヤっと返すウルティム。そこは譲れないみたいだね。
「へぇ。嬢ちゃんが選んだってか。良い目をしてやがる」
「ふふん」
エスコルさんに褒められて、ウルティムも機嫌が良くなる。
「どうだい姫さん。ステラシオンに来た土産で買ってくか?」
「えー、どうしようかなぁ」
「魔法学園ったって杖ばっかしじゃ飽きるだろ。こう、剣で魔法を、バババって出したらクラスの奴から人気でんぞ」
「わかってる。おやじ」
テンションの上がったウルティムが、ツインテールを跳ねさせてエスコルさんのところに向かう。
「「剣から魔法、ロマン砲」」
グッジョブ。きらん☆
なんかあの二人、気が合いそうだね。
しかしなんだ。そんな子供騙しに一国のお姫様が踊らされるかってんだ。
なぁ、フーラ。
「……ぃぃかも」
この子ったら騙されそうになってんな。
「待て待て待て。もう既にクラスの人気者なんだ。剣なんてなくても大丈夫だろ」
「も、もちろん。冗談だよー」
あははー。なんて苦笑いを浮かべているが、ほんとかいな。
「ごめんフーラ。ウルティムの剣の調査なんだけどさ。持ち合わせが足りないんだよ。すぐに返すから金を貸してくれないか」
わかってる。自分でもカッコ悪いヒモ発言なのは承知だ。だけど、金がないのも事実。
「このアルバート第一王女、フーラ・アルバートに経済的相談かね、リオン・ヘイヴンくん」
「そうでゲス」
「ふふふ。大船に乗ったつもりで任せたまえ。我は王族ぞっ」
「おお。マジもんの職権濫用キタコレ」
ドスドスと大型戦艦がエスコルさんのもとへ。
そして懐からなにかを取り出す──
「あり?」
なんともまぁ間抜けな声を出して、自分自身の身体を弄ってやがる。
そんな彼女へ、ウルティムから一言。
「フーラ。お金ならダイナミック乗車に使った」
「そうだったああああああ!!」
フーラがダイナミックに膝から崩れ落ちてる。
あ、うん。俺が言うのもなんだけど、だっせぇなぁ、姫様。
「あん? 金がねぇならこの剣を見ることはできねぇぞ」
エスコルさんの言う通りだ。ボランティアじゃないんだし、金がないなら商売にならない。今日は諦めて、後日出直すか。
「エスコル殿。これで足りるか?」
聞き覚えのある声が聞こえて来たかと思うと、店のカウンターに金が置かれた。
見ると、ボブカットのブロンドヘアな鎧ドレス美女が立っていた。
「ルベリア王女……」
ステラシオンの王女、ルベリア・ステラシオンが、いきなり現れて圧倒的経済力を発揮してくるんだけども。
「ああ、釣りが出るくらいだ」
「だったら、そこの王女様に土産の一本をやってくれないか? それでも釣りが出るなら構わん。いつも世話になってる礼だ」
かっこいい。なに、この、仕事ができるクール系女子。
「ルベリア王女。それだと金が足りねぇよ」
うわー……すんげぇ空気流れてくるぅ。
「こ、こりぇ、を、ちゅ、追加でゅぇ、受けとれいぃ」
噛みっ噛みで金を追加している姿を見ると、共感性羞恥で俺も悶えてしまった。




