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有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった  作者: すずと
三章

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第71話 ダイナミック 旅立ち

 ヴィエルジュの容体は良くはなっていっているものの、まだ熱が下がらないみたい。


 そんなわけで本日もお休みとなった俺の右隣の席は空席となっている。


「フーラ。マスターの隣に座らないの?」


 俺の席の左隣を陣取っているウルティムが、俺の前の席に座っているフーラへ質問を投げた。


「あんたが私の席をぶん取ったんでしょ」


「席は自由席」


「あー、はいはい。わかってますよー」


 面倒くさそうに言いながら、フーラは右斜め後ろの空席を眺めた。


「ヴィエルジュがいない隙にリオンくんの右隣に座るのってなんだか気が引けるなぁって思っただけ」


 そのままフーラが視線をこちらに向けてくる。


「リオンくんだって、右隣はヴィエルジュの方がしっくり来るでしょ?」


「そういや……ヴィエルジュは基本的に俺の右隣に立つことが多い気がするな」


「でしょ。私もリオンくんの左隣の方がなんか安心するし」


 そういや、フーラが自然と左隣に来ることも多いか。


「ふっ。所詮は負けヒロインの遠吠え」


「誰が負けヒロインじゃ!!」


「今ではぼくがこの定位置」


「この住所不定、年齢不詳のロリっ子め。そこをどけっ」


「負けヒロインはそこでハンカチを咥えながら、ぼくみたいな勝ちヒロインを眺めると良い」


「きぃぃ。くやしぃぃ」


 フーラ、お前、優しいな。ちゃんとハンカチ咥えて悔しそうな演技をしてくれている。まるで年の離れた姉妹みたいだ。


「それにしても、カンセル先生遅いな」


 朝一の授業が始まってもおかしくない時間帯なのに、教室にカンセル先生が入って来ない。


『あの店の店員やっばいくらいかわいいよな』


『ねぇ、あの事件の話、聞いた?』


『でも──』


『聞いた、聞いた。先輩が──』


 いつまで経っても先生が来ないもんだから、教室内では駄弁り大会が開催されている。ま、先生が来たら静かにできる真面目ちゃん連中だから、先生が入って来たら切り替えるだろう。


「カンセル先生のことだから、昨日飲み過ぎて二日酔いで寝坊したんじゃない?」


 フーラのカンセル先生の印象、俺とまったく同じだぜ。


 ざわざわと徐々に雑談の声が大きくなっていくと、ガララと教室のドアを開けて入って来る女教師。一年二組担任のリブラ先生だ。


 やっべ、駄弁り大会が盛り上がり過ぎて、隣の教室まで響いてしまっていたか。


 一年一組の生徒達が怒られる覚悟をしたその時、リブラ先生が教卓に立ち、一言。


「本日は急遽休校となりました」


 ザワッ──。


 彼女の言葉に、教室内では、また違ったざわつきが起こる。


 パンパンパンと手を叩いて、リブラ先生が生徒達を自分へ注目させる。


「いきなりこんなこと言ったら、そんな反応になるのもわかります。ちゃんと事情を説明するから聞いてね」


 コホンと咳払いを一つ。


「みんな、ここ最近、アルバートに不審な事件が起きているのは知っていますか?」


「あ、はい」


 女子生徒が手を挙げて発言をした。


「アルバートで大量の行方不明者が出ているって聞きました」


「その通りです。老若男女関係なく、複数の行方不明者が出ています。事件調査のため、我々教員も調査に駆り出されることになりました」


 元々、ここの教員はほとんどがアルバート魔法団に所属している。緊急時には駆り出されて当然か。カンセル先生は二番隊の隊長だし、今頃先陣きって調査ってところか。


 教員がいないんじゃ授業にならんから、休校ってわけね。


「事件は夜に、一人で行動している時、人気のないところで起こっていますが、みなさん朝でも、昼でも油断せず、行動する時は団体で。基本的には家にいるように。学園再開は追って報告します。以上」


 リブラ先生の簡潔な説明が終わる。


 ま、やべー事件が起こって、あぶねぇからさっさと帰れってこったろ。


「こわいねぇ」


「やばいよねぇ」


 なんて声が上がる中、「リブラ先生」と立ち上がり先生を呼んだ。先生のもとへ行こうとしたが、優しいリブラ先生がわざわざこっちまでやって来てくれる。


「リオンくん、どうしたの?」


 あまり大声でできる話題じゃないので、他の生徒に聞こえないように小さな声でリブラ先生へお願いする。


「ウルティムの調査の件なんですけど。この子に刺さっていた剣を持っているんですよ。休校の間、ステラシオンに行って刺さっていた剣の調査をしに行っても良いですか?」


「家にいるようには言ったけど、実家までとは言ってないわよ」


「ですよねー」


 あ、やっぱりだめか。今、忙しそうだし、こりゃ空気読めてない案件だったか。


「でも、そうね。ウルティムさんの調査も、我々ですると言っておいて、全然できていないのも事実だし……」


 お、なんかイケそうな気がするぞ。


「えー、リオンくん、またステラシオンに戻るの? 私も行きたーい」


「ぼくも」


「おいおい。旅行に行くんじゃねぇぞ」


 軽い口調で言ってくるフーラとウルティム。ステラシオンなんて全然良いところじゃねぇからな。ただの脳筋の国だわ。


 でも、それは実家があるからそう思うわけで。二人の気持ちもわからなくはない。


「……フーラ様とウルティムさんがステラシオン──」


 リブラ先生はなにか考えているのか、ぶつぶつと呟いていた。


「リオンくん。ステラシオンは今回の事件と関係ないだろうし、フーラ様とウルティムさんを連れて戻るというのはどうでしょうか?」


「なるほど。王族の国外逃亡と」


「言い方」


「冗談です。今回の事件がフーラを狙っている可能性もあるかもしれないからってことでしょ?」


「ええ。夜に人気のない場所で無差別にっていう条件があるから、大丈夫だとは思うけど」


 条件なんて犯人次第で変わるからな。それも確定事項じゃない。だったらアルバートにいるよりステラシオンにいた方が良いわな。


「俺はもちろん良いんですけども……」


 チラリとフーラへ視線をやる。


「王族がそう易々と外に出て良いのか? 前にステラシオンに行った時は、ステラシオン王からの呼び出しだったけど、今回は勝手が違うだろ」


「大丈夫。私の話術でパパッと外出許可取って来るから☆」


 舌ペロ☆ なんて信じて良いのだろうか。


 ♢


「フーラ。交渉失敗」


「ですよねー」


 ステラシオンに向かう馬車でウルティムと雑談。苦笑いが出ちまう。


 結局、フーラは王と王妃に止められてしまったみたいだ。そりゃそだわな。家で大人しくしとけって話になる。


 ヴィエルジュも今回は風邪でお留守番。彼女には事件が起きていることと、部屋からあまり出ないように注意しておいた。ま、あの子なら逆に犯人を凍漬けにしちまいそうだけども。


「お供できずに悔しいのでふて寝します」


 なんて言っていたが、まだ風邪が治っていないから、俺としてはそうしてくれると安心だ。


 よって、今回はウルティムと二人で──


「リオンくーん!!」


 空からなぁんか聞き覚えのある声が聞こえて来ると、そのまま、ズドンと馬車の客室に見覚えのあるピンク色の宝石みたいな長い髪の美少女が降って来る。


「来ちゃった☆」


「ダイナミック乗車が過ぎるだろ、フーラ」


「てへっ♡」


 なんてぶりっ子を発動させたあと、懐から袋を取り出し、御者に手渡した。


「すみません。ダイナミック乗車代です」


「金額もダイナミックですが……こんなに良いんです?」


「迷惑ダイナミックなので遠慮せず」


「は、はぁ。どうも」


 どんだけ渡したのかわからんが、御者が引くレベルの金額ってことか。


「フーラ。王様と王妃様の説得。成功?」


 ウルティムが首を傾げて尋ねると、苦笑いを浮かべる。


「ぜーんぜん、だめー」


「じゃあなんでこんなところにいてんだよ」


 俺が尋ねると、親指をグッと突き上げた。


「強行突破☆」


「流石はお転婆姫様なこって」


「あははー……でもでも、ウルティムのことを預かっている身としては、自分自身でウルティムのことを知りたいし」


「……俺等が無理言って城で預かってもらっているんだもんな。俺からも王様と王妃様に頭を下げに行くべきだったか。配慮がなかったな。ごめん」


「ううん、リオンくんは悪くないよ。これは私が決めたこと。帰ったらめっちゃ怒られるだろうけど……ウルティムのこと、ちゃんと知りたいから」


 そ、それに……ゴニョゴニョと口をつぼむフーラは、視線を逸らしながら言ってくる。


「リオンくんと二人で旅行気分味わいたかったし……」


 照れながら言ってくるもんだから、ドキッとしちまう。


「残念。ぼくがいるから二人っきりじゃない」


「あんたは妹位置だから良いの」


「これが、アネ?」


「おいい。不服なんかー? 風呂上がりのブラッシングしてあげないぞー」


「フーラお姉様」


「それでよし」


 フーラのブラッシングって気持ちいいんだね。

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― 新着の感想 ―
ヴィエルジェだけ置いてきぼり。これは後で荒れそうですw
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