第65話 二章エピローグ~このささやかな日常がつづきますように(大フラグ)~
リーフ兄さんも、ライオ兄さんも怪我の方は軽傷で済んで良かった。父上はやたらウルティムのことを気にしていたが、まぁそこはさして問題でもない。
問題は母上が騎士学園の学園長に就任したって件だ。
いや、すげー立派なことだし、ヘイヴン家としても鼻高々なことだ。
でもね、でも、母上ったら、
『リオン。あなたの通っている魔法学園の学園長、シュティアとは私も古い仲なの。だからこれから交流も、もっと多くなると良いわね』
とか言ってたよね? ね?
それは魔法学園の学園長の裏を知っての発言なの? それとも天然なの? どっちなの、母上。
「リオン・ヘイヴン」
相変わらず見た目は二〇代を思わせる美魔女の学園長先生がギロリを俺を睨んで来る。
あ、はい。ヘイヴン家から戻り、また日常の学園生活を送っているところに学園長先生から呼び出しされました。
もういやだ。色々嫌だ。
「剣の件ですよね。どぞ」
もうこれ以上絡むのも面倒なので、さっさと剣を渡して退散しよう、そうしよう。
「きゃぁん♡ レオンがきゅれた、きゅぇぇん♡」
剣に頬をすりすりしている姿はまじでやばい絵面なんですけど。病みが深いぞ学園長先生。ちょっと頬切って血が出てるぞ。
「それでは失礼します」
もう戻ってくるなよー大剣の見た目の双剣の片割れ。あるべき場所に帰って、祀られててくれー。
「お待ち!!」
ええ……呼び止められたのですが……。
「……まだなにか用で?」
「ああ。今回お前を呼んだのは他でもない」
「学園長先生。真剣モードで話すなら、剣から手を離してください。血まみれになってますよ」
「嫌よ。やっとレオンの剣が戻って来たのに離すなんてことできないわ。私の血など安いもん」
ナイフを舐めるやばい奴ってのはどっかで見たことある気がするけど、大剣を舐める奴ってのは初めて見たな。年食うと頭おかしくなるんだね。将来は俺も気を付けよう。
「リオン・ヘイヴン。此度の活躍も見事であったらしいな」
「へ? あ……ああ、ど、どうも」
いきなり褒めてくるもんだから、すごい変な返事になっちゃった。
「ステラシオンの騎士の敵を討ち、ステラシオン王女を救い、学園をテロリストから守った。その功績は輝かしいものである。アルバート魔法学園としても鼻が高い」
「ありがとうございます」
なんだよ。お褒めの言葉をもらうだけか。だったらそんな怖い顔で言わなくても良くない。
「ただ──」
あ、なぁんか嫌な予感がする。
「今回のステラシオンの功績を、なぜかリグナから聞くことになった……ふふ、あとから聞いたら、騎士学園の学園長になったと、さ」
「あ、らしい、っすねぇ……」
「ううう、ぅぅぅ……」
「学園長先生。見た目は若いかもしれませんが、母上と同世代の女がその泣き方は、共感性羞恥で死ねます」
「だってぇ……だってぇ!!」
学園長先生は泣きながら母上とのやり取りを語り出す。
「『魔法学園の生徒がステラシオンを守ってくれました。ふふ。それがリオンだなんてね。シュティアのところの生徒であり、私の子供が救ってくれたことに運命を感じるわね』とか超上から目線で言ってくるんですけども!!」
「どこら辺が上から目線なのかわかんないですけども」
「あの女ぁ……どうしてくれようか……ええ!? レオンを喰って子供産んで、私も家族になって『運命を感じるわ』ってドヤったろか、ええ!?」
こいつまじでやばいな。
「リオン。手伝いなさい」
「俺は無条件で母上の味方ですよ」
「なんで? なんでよぉ!?」
「まるでわかっていないようなので真実を言いますね。俺はリグナの息子です」
「ガッデム息子!!」
「ガッツリ息子です」
ぷしゅーと頭から煙を出して、机に突っ伏す。
「だ、大丈夫。さすがに今のは冗談だから」
どうだか。目はガチだったぞ、こいつ。
「とにかくだ。英雄リオンにも休息は必要だ。しばらくはゆっくりと学園生活を送りたまえ」
どの口が言ってんだ、こいつ。
♢
まぁ、学園長からの言葉はどうかと思うが、これで厄介事が一つ片付いた。
ルべリア王女との婚約がどうとかはステラシオン王の思いつきだろうし、そこまで重い問題でもないだろう。フーラとヴィエルジュとの婚約の件もあるが、俺はまだ学生だ。急いで決める問題でもなし。
ウルティムの過去は知る必要があるよな。
世界最悪の剣、ウルティム。
そんな単純で中二病臭い名前が付いているし、叩けばなにか出て来るんだろうが、ほとんど情報はなし。
ま、気負わずにのんびり調べたらいっか。
「うーい、みんな。今日は転校生を紹介すっぞー」
一年一組の教室にカンセル先生が入って来たかと思うと、いきなしそんな宣言をするもんだから、教室内がざわついた。
そりゃ、転校生なんて由緒正しきアルバート魔法学園において、退学で人が減ることはあっても、増えるということはほとんどあり得ない。それに、転校の条件は入学試験よりも厳しいはず。それを乗り越えて転校ってなると、かなりの猛者が来るに違いない。
クラスメイト達は固唾を飲んで転校生を待ち構える。
「ぃ……?」
そんなクラスメイト達の反応をよそに、こちらはなんとも言えない反応をしてしまう。
「ほいほい。自己紹介」
「ウルティム」
なんであのロリっ子が制服を着て、学園に来てんだ? 長い髪を綺麗なツインテールにしてるし。
チラリと左隣に座っているフーラを見た。
「良いのかよ。城で見張ってなくて」
「あははー。ごめんねー。学園に行くって聞かなくてー」
明るく言ってのけるフーラ。
次に逆方向に座るヴィエルジュが声を出した。
「ですがご主人様。ウルティム様が人間だった場合、ずっと部屋に閉じこもるというのも息が詰まります。近くには私達もいるため、学園に通うくらいなら安全かと」
「ま、ヴィエルジュの言う通りか」
今までずっと眠り姫だったのに、起きたら囚われの姫よろしく、城に軟禁なんて人権的にどうよって感じだもんな。まだ人というのが確定はしていないが、人を襲う気配もないし、大丈夫だろう。
『本当に同い年?』
『飛び級とか?』
『かわいい』
『おい。あれに手を出すとか犯罪では?』
『いや、年は近いだろ』
『かわいいは正義だもんな』
クラスメイト達から様々な声が上がる。そんな中をウルティムは無表情のままに俺の席までやって来て、俺の膝の上に座りやがった。
「なっ……!?」
隣のヴィエルジュの唖然とした声が上がるのを筆頭に、クラスメイト達から罵声が飛んでくる。
『ロリコンかよ!』
『姫様とメイドでは飽き足らずロリにも手を出してんかよ、ヘイブン家』
『最近、ステラシオンの王女とも婚約したとか聞いたぞ』
『え、普通にきもっ……女の敵じゃん』
『おい! そこ代われ!!』
あ、はい。もうね、なにしても言われるから慣れたものよ。こうなったらもうなにしても一緒なもんだから、ドヤ顔しておくに限るね。
ドヤァ。
「ちょっとご主人様! なにを悠長にドヤ顔決め込んでいるのですか!」
「だってなにしても言われるし……」
「そんなことよりも、ウルティム様をどかしてください」
ヴィエルジュの声にウルティムが返す。
「マスターとぼくは一緒でなければならない。そんな気がする」
「はぁ!? だったらご主人様と私は一緒じゃないといけない気がします」
「ヴィエルジュも?」
「だって嫁ですから!」
「嫁なら隣では? ぼくはマスターと一心同体だもん」
「ご主人様のことも考えてください。上に乗られたら重いでしょうが」
ヴィエルジュ。きみは良く俺の上に乗ってきたのを棚に上げているよ。
「マスター。ぼくって重い?」
無表情のままに聞いてくる。
「重くはないけど、座りにくいかな」
「そう」
ウルティムはフーラの方へ避けてくれる。
「フーラ。詰めて」
「は? なんで?」
「ヴィエルジュはマスターの嫁。だから隣じゃないといけない。ぼくはマスターと一心同体。だけどマスターの邪魔になるから隣に座らないと。唯一フーラは関係ない」
「いやいやいや。私はリオンくんの婚約者ですけども!?」
「婚約者?」
ウルティムが俺を見つめて無表情に首を傾げる。
「すけこまし?」
「うわー。無表情で言われるとダメージでかいやー」
「ウルティム様、ご安心を。その方は自称婚約者を名乗る不届き者でございます」
「確かに。嫁のいる人に婚約者はおかしい」
ウルティムがジーっとフーラを睨みつけた。
「ちょっと! なんちゅうこと言ってくれるのヴィエルジュ! あんたの方こそ自称じゃない」
「自称なの?」
「自称ではございません。未来予知です」
「ヴィエルジュは未来予知ができる……すごい」
簡単に信じちゃったよ、この子。
「おーい! お前らー! さっさと席決めろー。授業すんぞー」
いい加減カンセル先生に注意されちゃった。
俺とヴィエルジュはフーラの方を指差す。
「「先生、このぶりっ子お姫様がさっきからうるさいです」」
「あっれ。私、完全にそういうポジション確約しちゃった?」
「フーラ、嬉しそう」
「うれしくないわよっ」
とかなんと言いながらフーラは席をずれて座ってくれる。
この間までの出来事がうそのような学園の様子。すっかり慣れた日常。授業。
これからもこんな日が続きますように……。
叶うといいなぁ、俺のささやかな日常。
二章、いかがだったでしょうか。
今回の章は剣の国、ステラシオンが中心となっていましたね。魔法? なにそれおいしいの? のリオンくんには過ごしやすい章だったのではないでしょうか。(いや、そうでもないか)
三章はウルティムの話となります。お時間が許されるのであればお付き合いいただければと思います。
また、その、ね……評価と、ブクマがもらえたら嬉しいなぁ……と……
あははー!! 三章もよろしくお願いします!!




