第63話 俺の知る限り謁見の間って修羅場になる場所じゃないよね?
一体、何度往復したら良いのやら。なんてレーヴェに言ったら怒られるだろうから、愚痴は心の中で。
ってことで、またまた帰って来ましたステラシオン。今回はメイド三銃士+レーヴェと共にステラシオン城の謁見の間へと通された。
そこには、ステラシオン王とクレス王子に……父上もいるなぁ。
しかし父上ったら、やたらめったらウルティムに視線をやっているぞ。強者としての血が騒いでる、とか?
「ルベリア王女。すっかり良くなったみたいだね」
コソッと耳打ちしてくるレーヴェ。彼女の言う通り、元の姿に戻ったルベリア王女の姿もあった。だけどまだ体調は良くなっていないのかな? 顔が赤い。
「よく来てくれたな、リオン。かしこまるのは苦手だろ。楽にして良いぞ」
「はい」
おかたいのは苦手だからまじで助かる。
「ヴィエルジュも久しいの」
「お久しゅうございます、陛下」
騎士団長の──ヘイヴン家のメイドってことで、ステラシオン王はヴィエルジュのことも覚えてくれている。
「リオンに巻き込まれて魔法学園に通っているそうだな」
「私にとってはこれ以上ない幸せな巻き込まれです」
「そうかそうか。この先もリオンのメイドとして歩むのかな?」
それはヴィエルジュがルージュという真実を知っての発言。まぁステラシオンの王だし、ヴィエルジュがルージュってことを知ってるんだろうね。
遠回しの質問にヴィエルジュは首を横に振る。
「将来はご主人様のお嫁さんになりますゆえ、メイドという肩書きは消えるでしょう」
「ほっほっほっ。相変わらずリオン愛が強いな。良きかな、良きかな」
ステラシオン王はヴィエルジュとの会話をそこそこにフーラへ視線をやる。
「フーラ王女。そう言っておるが、主としてはどんな心境なんだ?」
王族同士で面識があるのか。王族だから俺とフーラの婚約を知っているのか。フランクにフーラへ話しかけるステラシオン王。
いや、フランクっつうか、おちょくるような言い草だったな。
「ヴィエルジュはこれから先もリオンくんと私の専属メイドとして尽くしてくれるでしょう。純白のウェディングドレスを着るのは私ですので」
キリッとヴィエルジュが睨み付けると、フーラは余裕の笑みで返していた。なんか心境が逆転しているの珍しいな。あ、王族の前だから恰好付けてんだな、フーラの奴。
「ほっほっほっ。これは面白いな、リオンよ」
「あ、ははー……」
そりゃ外野は面白いでしょうね。子供部屋おじさんを目指していた怠惰な奴が王族二人から結婚を責められる構図なんて、「さっさと一人にしぼらんかい!! ぼけがっ!! がっはっはっ!!」なんて酒飲みながら見るラブコメアニメみたいなもんだろうなぁ……。
「して、そこの可愛らしい娘は──」
「陛下。失礼」
父上の声がしたかと思うと、瞬間移動したみたいにウルティムの前に立つ。
って、おいおい父上。なにを闘争心丸出しでロリッ子ぼくっ娘の前に立ってんだ。側から見たらど変態だぞ。その覇気みたいなもんをしまえ。
「……我が名はレオン・ヘイヴン。そなたの名を教えてくれないか?」
「たぶんウルティム」
「タブン・ウルティム……」
父上、タブンは名前じゃねぇんだけど。この人だけシリアスな感じ出してるから口出しできねぇ。
「何者だ?」
父上の質問にウルティムは俺を指差した。
「マスターのメイド」
そう言ったあとに父上は「ぷっ」と吹き出してしまった。
「そうか。メイドか。そうかそうか。リオンがまたメイドを拾って来たと申すか」
ご機嫌に笑ったあと、父上は振り返ってステラシオン王に頭を下げる。
「無礼を働き申し訳ございません。陛下」
「よい。主の行動ならそれが正しいのだろう」
この二人、ズブズブに仲良いよなぁ。ま、世界的に有名な侯爵騎士様だし、その信頼度は高いんだろう。だから俺が怠惰でも許される。いや、許されなかったから魔法学園に追放されたんですけどね。
「はっはっはっ」
頭を上げた瞬間、父上が切り替えるように、陽気に俺の肩を叩いてくる。さっきの闘争心バリバリの覇気みたいなのはない。
「リオン。我が息子よ。アルバートに続き、ヘイヴン家を、そしてステラシオンをも救うとは、親として鼻が高すぎて天まで届いてしまうぞ」
父上陽気過ぎない? こんなもん? 親の実際の性格ってあんまり知らないよね。
「しかし、バンベルガとは面識があったろうにお前には辛い思いをさせてしまったな……本来なら騎士団長の私がけじめを付けるべきであったが……すまぬ」
「……父上の方がバンベルガさんと親交が深かっただろうから。失礼かもしれませんが、父上が現場にいなくて良かったと俺は思います」
「リオン……大儀、であったな」
ぽんぽんと肩を叩いて言葉に出さないありがとうを貰った。泣きそうな顔をしているのは、本当にバンベルガさんと仲が良かったから。
「リオン。俺からも礼を言わせてくれ」
クレス王子が話しかけてくれたことで、父上は先程立っていた場所に戻って行った。
「バンベルガの件……彼が犯罪を犯してまで思い詰めているとはつゆ知らず……三番隊の隊長だからとコミュニケーションを取らせるのではなく、騎士団のことを共に見るべきであった。結果、サーブタイとバンベルガを失う形になってしまった。それでも被害を最小限に食い止めてくれたのはリオン。お前だ。本当に感謝する」
頭を下げたあと、ステラシオン王が姿勢を正して再び話しかけてくるから、こっちも背筋がピンと伸びる。
「リオン・ヘイヴン。そなたには、この度の事件で多大なる功績があった。サーブタイの仇を討ち、ルベリアを救い、ヘイヴン家、アルバート魔法学園をテロリストから守った。これ以上の功績はない。よってそなたへの褒美として──」
ステラシオン王が、ルベリア王女へと視線をやる。
あのぉ。その視線がやたらと嫌な予感を促してくるんですが。
「我が娘、ルベリアとの結婚を認めようぞ」
コノオウサマハナニヲイッテイルノカナ。
王子とレーヴェは笑っているし、父上ドヤ顔だし。ヴィエルジュとフーラは怒っている様子だし、ウルティム無表情だし。
今の一瞬でこの場がカオスになったぞ。
「陛下!! 此度の功績は俺一人の力ではございません!! みんなの、そう!! みんなの力があってだから、その……とくに彼女!! ウルティム!! ウルティムが全部やった!!」
「ぼく?」
「ですので陛下。ルべリア王女との結婚はウルティムが相応しいかと」
「寝起きで花嫁……あり」
案外乗り気だね、この子。
「リオン兄様。それは無理があるんじゃない?」
「レーヴェ、援護射撃を頼む」
「いやー、私はこのヒロインレースを、『さっさと一人にしぼらんかい!! ぼけがっ!! がっはっはっ!!』なんて紅茶飲みながら見守ることにするよ」
流石は最高の妹、レーヴェ。俺と思考が同じだわ、ちくしょうめ。
「リオン・ヘイヴン」
いつの間にかルべリア王女が俺の前に立っていた。凛とした顔の奥に恥じらいが見え隠れしている。
「あたしじゃ、だめ、か?」
なぁ、やめてくれよ。普段凛々しくしてる女性が、弱々しく俺の服の袖をキュッと掴んでくるの。効果抜群なんだが。
「お言葉ですけど陛下。リオンくんはアルバートで婚約しているんだし、争いの種になりますよ?」
「無論わかっておる。強制ではない。こちらもアルバートとは良い関係でいたいからな。しかしこれはリオンの気持ちの問題」
おい、この王様、ボソッと「この方が面白そうだから」とか付け加えたぞ。俺、娯楽に使われてんだけども。
「違うかね? フーラ王女」
「リオンくんが私を選んでも恨みっこなしってことですよね?」
「それはこちらも同じこと」
「おもしろいです陛下。その喧嘩、買わせてもらいますよ」
なんか始まったんだが……。外野なら良いけど、がっつり内野に巻き込まれたんだけども。
「なにを正ヒロインみたいなセリフをつらつら吐いているのやら。喧嘩両成敗になる未来しか見えませんのに。ね、ご主人様」
ピトッと俺の右腕にくっ付いてくるヴィエルジュ。
「リオン・ヘイヴン。あたしはあなたなしじゃ、もう……」
言いながら俺の左腕にくっ付いてくるルべリア王女。
「ちょー!! そこ私のポジションなんですけども!! どいてよ──ッ、力、つよっ!!」
「ステラシオン」
「これが純正ステラシオン、だと……!?」
フーラは絶望していた。
「花嫁衣裳は黄金で」
「ウルティム。その話はなしになったかも」
「花婿に変更? それはそれで、あり」
あり、なんだ……。
「さぁリオン兄様は誰を選ぶのかなぁ」
レーヴェの奴は完全に楽しんでやがる。
あははー。やっぱり嫌な予感的中しちゃった☆




