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有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった  作者: すずと
二章

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第53話 ダンジョン調査依頼

 ダンジョン試験は中止。怪我を負ってしまった生徒はすぐに病院へ搬送。幸いにも生徒に死者は出ず、怪我人全員が軽傷で済んだ。


 事情聴取のため、俺とヴィエルジュとフーラは学園長室に呼ばれた。


 化け物と対峙したのは俺だし、生徒を救出したのはヴィエルジュとフーラだから、事情聴取するなら俺達だよなぁ、と納得しながらも、抵抗ある学園長室に入る。


「失礼しまぁす……」


 学園長室には、学園長先生を始め、一年一組担任のカンセル先生。一年二組担任のリブラ先生。


 そして──


「やぁ、リオン」


 なぜかリーフ兄さんとバンベルガさんもいた。


「リーフ兄さん? なんで学園にいるんだよ」


「この前実家で言ってたろ? 今度アルバート魔法学園で講演会をするって。だから来たんだよ」


 あー、そういや、そんなこと言ってたっけか。


「ヴィエルジュも久しぶり。相変わらずメイドとは思えない美貌だね」


「お久しぶりですリーフ様。ご主人様への愛によって私の美しさは永遠に続いておりますので」


「あはは。相変わらずリオン愛が強いなぁ。こりゃ、随分と不利な恋なこって……」


 リーフ兄さんが後半にボソリと呟くのをヴィエルジュは聞き逃さなかった。


「どういう意味です?」


 おっと。なんて、リーフ兄さんはわざとらしい声を出してヴィエルジュの質問をスルーした。


「挨拶が遅れて申し訳ございません、フーラ王女。私はステラシオン騎士団三番隊副隊長のリーフ・ヘイヴンと申します」


 誤魔化すような挨拶だが、ヴィエルジュも自分の身分を理解している。王族への挨拶の方が自分より優先事項だろうと、それ以上なにも言わなかった。


「初めましてリーフさん。フーラ・アルバートです」


「お噂はかねがね。こんなお美しいお姫様が弟の婚約者だなんて、兄として鼻が高いです」


「そんなことありませんよぉ。お上手ですねぇ」


 フーラの奴、イケメンによいしょされて浮かれてやがる。


 そのまま調子に乗ったフーラがこっちを見てきやがる。


「弟さんには、是非、リーフさんのお口を真似して欲しいところです」


 含みのある言い方をしてくるもんだから、その期待に応えてやる。


「この子、魔法使いのくせにゴリラみたいなパワーあるよ」


「ちょ!? 誰がゴリラじゃ!!」


 リーフ兄さんは俺のフーラへの扱いで察したのか、すごい爽やかな顔をしてフーラへ手の差し伸ばす。


「ウェルカム・トゥ・ステラシオン(脳筋)


「この兄弟、相性抜群かよ」


 開幕からリーフ兄さんとの、わいわいした挨拶の後、フーラとバンベルガさんの目が合う。


「ステラシオン騎士団三番隊隊長、バンベルガ・クロムウェルです」


 ヴィエルジュとはヘイヴン家で何度も会っているから、特に自己紹介の必要はないだろう。


 それにしても、リーフ兄さんとの自己紹介の温度差が激し過ぎて、フーラは目をパチクリとさせちゃってる。


「あ、ええっと、はじめ、まして、フーラ・アルバート、です」


 簡素な自己紹介が終了。


 ま、バンベルガさんは職人タイプだからな。自分、不器用なんでとか痛い発言しても許されるタイプだわ。


「ほんじゃ、まぁ、揃ったわけなんで、今回の件について話し合いたいと思います」


 俺達のやり取りを待ってくれていたカンセル先生が仕切ってくれる。


「簡単におさらいっすが、一年生全体のダンジョン試験中、最深部にステラシオン騎士団の鎧を着た化け物が出現。最深部だけ魔法が使えない状態──」


「魔法が使えない?」


 カンセル先生の話の腰を、リーフ兄さんが折っちゃった。


「失礼」


 リーフ兄さんもその気はなかったのだが、つい声が出ちゃったって感じか。


「しかし、魔法学園の試験だというのに、魔法が使えない場所で試験をするのでしょうか?」


 ま、確かにリーフ兄さんの言う通りだな。魔法学園の試験なのに魔法が使えない場所が存在するのはおかしいって思っちまう。


「や、なんつうか……隠し通路てきな?」


 カンセル先生がどう説明しようか悩んでいるところに、リブラ先生が割って入る。


「あのダンジョンは毎年、試験で使用していますが、今年に限って異変がありました」


「異変?」


「行き止まりだった壁の先に、新しいエリアが出現していたのです」


「新しいエリア、ですか」


「ええ。昨年までは確かに行き止まりでした。それが今年、壁が壊されており……その奥だけ、魔法が使えない空間になっていました」


「つまり、誰かが今年になって開けた、と」


「おそらく」


 毎年試験で使っている場所だから、学園側はろくに確認もせずに試験会場にしてやがったか。流石異世界、危険予知活動なんてもんはしないんだね。


 救援の魔法で現場に急行した時に、先生達はその真実を知ったってわけか。


「俺等の知らない最深部には大樹があって、そこには少女の胸に剣が突き刺さって眠っていました。それを守るようにステラシオンの鎧を着た化け物がいました。そいつに生徒が襲われてしまったんです」


 カンセル先生がサングラスを指で、クイっとしながらこちらに視線をやる。


「ステラシオンの化け物は、リオンが撃退してくれました」


「すごいね、リオン」


「お見事でございます」


 三番隊の副隊長と隊長から賞賛の声をもらえて光栄だが、今はそんなことどうでも良い。


 話しはここからが本題だ。


 リブラ先生が、リーフ兄さんとバンベルガさんへ質問を投げかけた。


「バンベルガさん。リーフさん。講演会で我が校に来て頂いているのに、失礼を承知でお伺いしますが、ステラシオン騎士団の鎧を着た化け物についてなにかご存じないでしょうか?」


 質問をしながら、リブラ先生は、化け物が使っていた剣を二人へ見せる。


「この剣は、そのステラシオン騎士団の鎧を着けていた化け物が使っていた剣みたいです」


「こっ!? れは……」


 いつも余裕しゃくしゃくって感じのリーフ兄さんが驚愕の声をあげている。


「サーブタイさんの……」


「リーフ兄さんの知り合い?」


 俺の質問を無視──というか、放心状態になってしまったリーフ兄さん。


 代わりにバンベルガさんが答えてくれる。


「サーブタイ様は三番隊の副隊長だった人です。最近、行方不明になっておりましたが、こんな形で……」


「バンベルガさんっ!!」


 珍しくリーフ兄さんが声を荒げた。


「今すぐダンジョンの調査に向かうべきだ。サーブタイさんを化け物にした奴の手がかりがまだあるかも知れない!!」


「落ち着いてくださいリーフ様。仲間がやられたからとすぐに動くのは安直すぎます。あなたは三番隊の副隊長。その自覚をもってください」


 これまた珍しく辛口なバンベルガさん。それは隊長としての言葉。


 リーフ兄さんは、ハッとなって我に返った。


「すみませんバンベルガさん。オレは……つい……」


「いえ。リーフ様のお気持ちも察します。すぐに行動に出たい気持ちはわかりますよ」


 バンベルガさんが優しく諭すように言ってのける。


「それに、そこはアルバートの管轄。我々の独断で現場調査に行くことはできません」


 バンベルガさんの言う通りだ。領地問題って言う名の大人の問題が発生しちまう。こんな時でもそんな縛りに締め付けられるってのは嫌だね。


 リブラ先生が、学園長先生とカンセル先生と顔を見合わせ頷くと、リーフ兄さんとバンベルガさんへ話す。


「魔法が使えない空間の調査は、我々には酷は話です。どうかダンジョン調査のご依頼をお願いしてもよろしいでしょうか?」


 リブラさんが軽く頭を下げたあと、カンセル先生も軽く頭を下げた。


「騎士様へ直接なんて無礼は承知の上です。本来ならば冒険者ギルドに依頼するのが筋だとわかっていますが、時間がかかり過ぎてしまいます。どうかお願いできないでしょうか」


「しかし、講演会の方はよろしいのですか?」


 バンベルガさんが学園長先生に尋ねると、難しい顔をしていた。


「できれば講演会の中止は避けたいところですね」


 講演会も、ゴリゴリに大人の事情がありそうだな。ま、三番隊の隊長と副隊長がアルバートまで出向いているわけだから、そりゃ大そうな話なんだろうね。


「バンベルガさん。講演会はオレに任せて、バンベルガさんはダンジョンの調査に行ってくれませんか?」


「しかしリーフ様……」


「オレは……多分、お世話になったサーブタイさんの敵を取ろうと必死になりすぎて周りが見えなくなるかもしれません。冷静じゃいられなくなる」


 それに、なんて茶目っ気たっぷりにリーフ兄さんは言ってのけた。


「バンベルガさんが講演会に出ても、なぁんも喋んないでしょ?」


「……ふふ。その通りですな」


 さっきまでの血走った感じではなく、冗談を言えるようになっているリーフ兄さんは、すっかり元通りらしい。


「学園長先生。その依頼は私が引き受けましょう」


「ありがとうございます、バンベルガ殿」


 これにて話し合いは終了。


 ステラシオンの化け物が、リーフ兄さんが世話になった元副隊長のサーブタイってことはわかったけども。


 魔法の使えない空間のこと。大樹で眠る少女のことはわからず終いだった。


 バンベルガさんの調査で色々とわかれば良いんだけどね。

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― 新着の感想 ―
分が悪いのは、きっと自国の王女様のことだね。 でもなんか、また一人増えちゃうんじゃないかなあ?
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