第51話 ロマンに危険は付き物
とりあえず、ダンジョンを凍らせようとするヴィエルジュと、ダンジョンを燃やそうとするフーラの二人を止めてダンジョン内へ。
中は古代遺跡らしい造りだね。石造りの通路。壁には古代文字らしきものが刻まれている。
うん。雰囲気出てて良き♪
こういう古代遺跡とか俺は好きよ、まじで。
ロマンだよね、ロマン。
なんか、昔は神殿だったんかなぁ、とか考察が捗る。ま、実際は考察なんて面倒だからしませんけどね。
『危ないと思ったらすぐに救援の魔法』
魔物が出るから注意しろってことなんだろうけども、俺達には関係ないみたいだ。
『ぴぎゃー!』
先生の発言通りに魔物が現れ、俺達に襲いかかって来た。
「ご主人様ぁ。今日のデザートはヴィエルジュ特製の愛情たっぷり今時おしゃれかき氷を食べましょうね♪」
『ぴぎ──!?』
魔物はその場で凍りつくと、粉々に砕けてしまった。
『ぴぎゃー!』
新たな魔物がこちらに襲いかかってくる。
「リオンくぅん。今日の夕飯はフーラ特製の愛情たっぷり激辛キムチ鍋にしよう♪」
『ぴぎゃあああああ!!』
魔物がその場で燃え出すと、灰すら残らずに消えてしまった。
「ちょっと、なんですかキムチ鍋って。全然おしゃれじゃなくないですか」
「晩御飯におしゃれとか求めてないから。好きな人とならなんでも良いから。メイドなのにそんなこともわかんないの?」
「……お姉ちゃんみたいな汗くさい人がキムチ鍋なんか食べたらもっと汗くさくなるじゃないですか」
「ちょっと!? 誰が汗くさいって!?」
フーラが自分の匂いを嗅ぐ。
「え、うそ、ほんとに?」
「お姉ちゃんの汗は良い匂いだからとっても好きなんですけどね」
「や、それはそれで、複雑なんだけど! 複雑なんだけども!」
フーラ、いじられてるなぁ。
そんなやり取りの最中にも魔物が襲いかかって来る。しかし、凍りつけか、燃え盛るかの二択で、魔物は跡形もなく消えていく。こいつら、ガチのチートだな。
「「ご主人様! 今日はどっちにする!?」」
「キムチ鍋を食べた後にかき氷を食べよう」
「「はい♪♪」」
そんな調子でダンジョンを進んで行く。
ドタドタドタ──。
大層騒がしい足音が奥から聞こえて来る。
「あれは……二組の生徒さんではないでしょうか?」
ヴィエルジュが奥からこちらへと走ってくる輩に気が付いて声を出した。
「随分と焦っている様だけど……」
「杖を手に入れたから、焦って帰ろうとしてるのかもな」
この試験はバトルロワイヤル形式。杖を奪ってOKならば、手に入れたチームは焦って帰ろうとするのは当然だ。
俺達は最後尾。ここまでほぼ一本道。すれ違ったチームはいない。だったらあいつらが杖を持っている可能性が大きい。
「ヴィエルジュ。フーラ」
「「はい」」
俺達は杖を奪うために、戦闘態勢に入った。
普段杖を使わない二人だが、杖ホルダーを贈ったからか、杖を構えていた。
こっちにはロイヤル双子チートがいるから簡単に勝てちまうな。
たまには自分が単位の景品にことを思い知らせてやる。けっけっけっ。
「お前ら!! 逃げろおおお!!」
「へ?」
こっちが戦闘態勢に入ったっていうのに、向こうさんに戦う意思はないみたい。そのまま慌てた様子で俺達とすれ違い、入り口の方へと走って行った。その手には誰も杖を持ってなかった。
「なんだぁ?」
続いて奥からも、ドタドタドタとこちらに向かって走ってくるチーム。あれはウチのクラスの生徒達みたいだ。そいつらも杖は持っておらず、逃げる様にこちらに向かって走って来ている。
「みんな、どうかしたの?」
フーラの呼びかけに、クラスメイト達が律儀に立ち止まった。
「ひ、ひ、め、姫様! にげ、逃げてくだ、さい! 化け物が、化け物が……!!」
ピクリと眉が上がる。
化け物と聞いて、俺達の脳裏にはこの間の事件のことが過った。
「落ち着いて、ね」
フーラは被害者でもあるのに、冷静に彼等をなだめた。流石はアルバート魔法王国の第一王女だ。
「事情を説明して欲しいな」
フーラの言葉に、クラスメイト達は一度息を整えてから語り出した。
「最深部と思しき場所に、学術の杖があったのですが、で、でで、でも、まだ奥に部屋があったんです。せ、先生は、さ、い深部に杖があると言っていた、の、で、奥の部屋に行くと、化け物、襲い掛かってきました。そ、そ、れを倒すのも、し、試験かと思いました、が、そこは魔法が使えず、でして……。ぼ、ぼぼ、僕達、は、化け物から、命からがら逃げて、来ました」
これも試験の内なのか? いや、魔法学園の試験なのに魔法が使えないなんておかしい。
それにリブラ先生は、危険なら救援の魔法を唱えろと言っていたのに、魔法を使えなくするわけがない。
「僕達は、最深、部から出たら魔法は使えたの、ですが……脱出の魔法は使えないため、こうやって走って逃げて来ました」
そういうのはカンセル先生が得意な魔法だな。生徒が使えるはずもない、か。
それにしても、だ。部屋に入ったら魔法が使えなくなる。
「そんな魔法があるのか?」
ヴィエルジュとフーラに尋ねると、首を捻ってしまう。
「大昔に場所や空間に対して魔法を使えなくする魔法というのは実在しております」
「でも、使い勝手が悪いから今は使われていないんじゃないかな」
「フーラ様のおっしゃる通りです。魔法発動に対する条件が複雑で厳しい制約ですし、魔力消費も激しかったみたいです。効率が悪すぎるため、最近では滅多に使われておりません。」
ダンジョントラップ向きって感じか。
「今回は、その古い魔法が使われている可能性が高いってわけか」
「おそらく」
「……確認だが、魔法は使えるよな?」
「うん。使えるよ」
フーラは確認するように手から炎を出してくれた。
「お前ら、救援の魔法は使ったか?」
「あ……」
クラスメイトの反応から、パニックなっちまってそんな考えはなかったみたいだな。
そりゃ、いきなり化け物が出て来た状況で逃げ惑っているってのに、冷静に救援の魔法なんて使える余裕がある奴なんかいないわな。
「ヴィエルジュ」
「かしこまりました」
名前を呼んだだけでわかってくれるヴィエルジュは、持っていた杖を、ダンジョンの入り口目掛けて救援の魔法を唱えた。
これで先生達が異常を察知してダンジョンの中に来てくれることだろう。
ここが、まだ魔法の使えるところで良かった。
「あなた達は急いで外に出て。先生達に会ったら事情を話してね」
「は、はい!」
フーラがクラスメイト達へ指示を出すと、素直に入口の方へと走って行った。
「俺達はどうする? 先生に任せて戻るか?」
尋ねるとフーラが答える。
「奥で危ない目にあっている人がいるのに放っておけないよ」
「魔法が使えないんだぞ? このままじゃフーラも危ない目に合う」
「私はアルバート魔法王国第一王女。自分に不利な状況だからって逃げ出すなんてできないよ」
流石は王族。こういう時に血筋ってもんがよく表れる。
「わかった。なら、俺も行く」
いつも強制鬼ごっこをさせられているが、腐ってもクラスメイト、同級生達が危険な目にあっているのに黙って帰るなんて俺にはできん。
それに、魔法が使えるとか使えないとか俺には関係ないからな。きっと役に立つと思う。
「でしたら私も手伝います」
「ヴィエルジュ。良いのか?」
「愚問ですよご主人様。ご主人様の行くところが、私の行くところですので」
「サンキュな。よし、じゃあふたりとも、最深部に急ごう」
「「はいっ」」




