第50話 ダンジョン試験は、凍らせた方が早いか、燃やした方が早いか論争
筆記試験を終えたばかりだと言うのに、すぐにダンジョン試験だとさ。忙しないねぇ、アルバート魔法学園。試験、試験って……。もう少し肩の力を抜いたら良いのに。
愚痴ってたって仕方なし。筆記試験は免除だが、ダンジョン試験は受けなければならない。
というわけで、一年生全員が所定のダンジョンの入り口前に集まった。
「って、一組、二組合わせて三〇人しかいないぞ、おい」
集まった人数にびっくり。一クラス分しか集まっていない。
「もう既に退学者が各クラス半分になってしまいましたね。やはり筆記試験はふるい落とす試験。随分と脱落者が出たみたいです」
ヴィエルジュが視線をフーラに持っていくので、俺もつられてフーラを見た。
「や、やや。ちゃんと試験通ったから」
「後輩王族お姉ちゃん。というのも属性的にはアリよりのアリだったのですがね」
「そんなん絶対嫌よ。これからも耐えてやるもん」
フーラのことは他人事じゃない。俺もいつふるい落とされるかわかったもんじゃない。
アルバート魔法学園を退学になった場合、ステラシオン騎士学園に強制編入させられるだろう。父上に実力がバレてしまった+ステラシオン剣術大会で優勝しちまったんだ。あんな脳筋学園に編入なんかしちまったら、無事にステラシオン騎士団の前線に立たされる羽目になっちまう。
あかん。そんなんあかん。騎士の前線とかえぐさ一〇〇%だから。まじで。あんな軍隊みたいなところごめんだ。目指せ子供部屋おじさんイン異世界を志す者として、それは絶対に避けたい。
それならば、アルバート魔法学園の方が絶対にマシ。
この試験はしっかりと単位を取らないといけないぞ。
「はーい、みなさーん。ちゅーもーく!」
長い髪に愛らしい顔立ちの女性教諭が手を叩いた。
二組の担任である、リブラ・タンカーヴィル先生だ。首元のマフラーが特徴的な先生だね。
「今からみなさんには、三人一組でダンジョンに入ってもらいます。好きな人と組んでくださいねー」
リブラ先生の言葉の後に、ガシッと俺の両腕にじかみ付いてくれるロイヤル双子。
「ご主人様」
「リオンくん」
「「一緒に組みましょ♪♪」」
そんなん答えは一択。
「ふたりとも、頑張ろうな」
「「はい♪♪」」
語尾が、ルンっとした返事を二つ聞くと、ヴィエルジュが腰に付けた杖ホルダーに手を置いた。
「ご主人様から頂いたこれの出番です」
「きみ、杖は使わないでしょ?」
「付けているだけでご主人様の愛を感じるのです。まさに無尽蔵のバフ効果。これが愛……♡」
ヴィエルジュが杖ホルダーを気に入ってくれたみたいで良かった。
「リオンくんから貰ったこれで無双できるね♪」
フーラも腰に付けた杖ホルダーに手を置いてくれる。
「きみ、杖は使わないでしょ?」
「付けているだけでリオンくんの熱い想いが伝わるよ。これで私の力も無限大に暴上がりだよ♡」
フーラが杖ホルダーを気に入ってくれたみたいで良かった。
無尽蔵のバフと無限大に爆上がりの力のチートロイヤル双子と一緒なら、ダンジョン試験で単位取得など容易いだろう。この試験、もろたで。
『落ちこぼれめぇ』
『ハーレムしやがってぇ』
『こうなったら試験に講じてヤッちまうか』
物騒なことばっか言われて怖いんですけども。
「みんな、組めたかなー?」
三人十組のチームが完成すると、リブラ先生が今回の試験の詳細を教えてくれる。
「今回、みなさんに挑戦してもらうダンジョンは、アルバート魔法王国建国以前から存在する古代遺跡です。内部は石造りの迷宮になっていて、魔物も出現します」
古代遺跡っていうだけあって、入り口から雰囲気あんなぁ。ロマンを感じる。
「目的は、ダンジョンにある『学術の杖』を持ち帰ること。中には魔物がいますので、十分に注意してください。無理だと思ったらすぐに救援の魔法を唱えてね。先生達が助けに行くから」
「無理するなよー。遠慮なく俺等を使えー。単位よりも命大事にだかんなー」
チャラ男のカンセル先生は見た目に反して、生徒思いな発言をしてくれた。
俺は救援の魔法なんて使えないが……ま、チートがふたりもいるから心配ないだろう。
さいごにー! と先生は不敵に笑って見せた。
「杖は奪っちゃっても良いからねー。最終的にここまで持ち帰ったチームの勝ちだからー」
おっと、バトルロワイヤル宣言。
最後の最後に争いの火種を撒くリブラ先生は、杖を空に向けた。
「それじゃあ、試験スタート!」
パンッ!!
うおおおおおお──!!
一斉にダンジョンに入って行く生徒達。まるで運動会の徒競走を彷彿とさせる。
でも、鈍足共の集まりだから、ドタドタノロノロとみっともない走り方なんですけどね。
「最終的に持ち帰ったチームの勝ちなら急ぐ必要もなくない?」
頑張って走っている連中の背中に投げるように呟くと、ヴィエルジュが俺の声を拾ってくれた。
「その通りです。というか、もっとも効率良く単位を取得する方法を思いつきました」
「流石は秀才のヴィエルジュ。して、その方法は?」
「今、全員が中に入りましたので、ダンジョンごと氷漬けにしましょう♪」
「かわいい顔してなんちゅうこと言ってんだ。おい、天才魔法使い。妹がどえらいこと言ってんぞ」
フーラへ言ってやると、「もー」なんて呆れた声を出していた。
「ヴィエルジュ。そんなことしちゃダメだよー」
フーラの右手から炎が巻き起こる。
「燃やした方が早いって」
「だめだこの双子。どちらに転んでも殺戮のエンディングしか望んでいやがらない」
炎か氷か。どっちも地獄絵図に変わりなし。
「わかっていませんね。神秘なる氷の世界をご主人様と歩くというのがエモいのに」
「わかってないなー。私の気持ちと同様に熱い世界をリオンくんと歩くのが萌えるのに」
むっとする双子の視線がこちらに向く。
「「ご主人様どっちの世界が良い!?」
「どっちも嫌だわ!」
「「ガーン!!」」
ロイヤル双子チートは項垂れた。
「おまえらー。さっさと行けー」
俺達がいつまで経ってもダンジョンに入らないため、呆れたカンセル先生が野良犬を払うように、しっしっとしてくる。
「リオンくん、ヴィエルジュさん、フーラ様。先程も言いましたが、中には魔物がいますので、十分に気を付けてくださいね。危ないと思ったらすぐに救援の魔法。しつこいですが、これは大事なので、約束、守ってくださいね」
リブラ先生が改めて優しく言ってくれるため、「はい」と答えてから俺達は素直にダンジョンの中へと潜って行った。




