第46話 ステラシオン城で祝勝会パーティ
ステラシオン剣術大会が無事に終了し、ステラシオン城ではパーティが行われた。
毎回、優勝者にはステラシオン王より祝辞を頂けるありがたぁい行事。な、もんだから、いつも社交界に出ない俺だけど、優勝しちまったもんだから強制参加は免れない。
「レオンの息子が魔法学園に入り、ステラシオン剣術大会で優勝。今年は奇天烈な年であるな」
父上が偉大すぎて、ステラシオン王とは顔なじみみたいなもんだ。だから親戚のおっちゃんみたいな感じで言われちまう。
「本当ですよねぇ」
「しかし、腕に覚えのある連中が大勢いた中での優勝は間違いなくリオンの実力だ。おめでとう」
「ありがとうございます」
こんな感じで王様の祝辞を頂くと、パーティ本番の開始だ。
「──場違い過ぎる」
実家にあった礼服は肩が凝る。靴は硬いし、息苦しい。こういう堅っ苦しい恰好は心底苦手だ。
もう祝辞も頂いたことだし、さっさと退散しますかね。
ぬきあし、さしあし、しのびあし。
「こぉら。リオン兄さま、どこ行くのよ」
秒でレーヴェに捕まっちゃった。首根っこ辺りを掴まれてしまう。
「離せレーヴェ。俺は帰るんだ」
「主役がいなくてどうすんのよ。まだいなさい」
「やだ!! この格好嫌いだもん!!」
「子供みたいなこと言わないの。ほら、クレス王子が挨拶に来たわよ」
レーヴェの言葉に反応し、振り返ると、ブロンズヘアのイケメンが、シャンパンを持ってやって来ていた。その後ろにはバンベルガさんの姿もある。
「やぁ、レーヴェ。リオン」
「「ご機嫌、クレス王子様」」
兄妹揃って王子に挨拶したあと、バンベルガさんへと視線を向ける。彼はペコリと頭を下げて挨拶してくれたので、俺とレーヴェも同じように頭を下げて挨拶をしておく。
「リオン。この度はステラシオン剣術大会優勝おめでとう」
クレス王子自らこちらに出向いてくれてグラスを差し出してくれる。ってのに、駄々をこねている場合ではない。
子供部屋おじさん志望でも、王子の挨拶を無視は死亡案件だ。それくらいはわかっている。
適当なグラス(ジュース)を手に取り、王子と乾杯をかわす。
「ありがとうございます」
「まさか妹が破られるとは思いもしなかったよ。剣の腕は妹の方が立つからね」
「そんなご謙遜を」
「謙遜なんかじゃないさ」
クレス王子は首を横に振り、妹のリベリア王女の方へと視線をやった。
つられて俺達もルべリア王女の方へと視線をやると、彼女と目が合ってしまった。
ルべリア王女は視線を逸らし、そそくさとどこかに行ってしまわれた。
「負けたばかりの相手に挨拶は流石に苦しいか。リオン。レーヴェ。妹の無礼を詫びさしてくれ」
「いえいえ。別に俺達はなにも気にしてないですよ」
「はい。もう、全然気にしてないです」
「そう言ってもらえて助かるよ」
クレス王子は話しを戻すように、こちらへと視線を戻した。
「剣の才能は絶対に妹の方がある。その実力も妹の方が上だ。でも悲しいかな、そこは男と女。周りの目は剣の才能に溢れる妹ではなく、凡人の兄の方に来る。まったく、皮肉なもんだ」
相手は王族。フーラなら、「せやな」で返しても良いんだろうが、クレス王子とはそんな仲でもない。
俺とレーヴァはどう返せば良いのかわからずに黙り込んでしまうと、クレス王子がこちらの困惑に気が付いたのか、続けて言ってくれる。
「その妹に勝ったリオンこそ、ステラシオンの王に相応しいのかもな。妹と結婚でもするか? そしたらリオンをステラシオンの王に推してやるぞ」
コノオウジサマハナニヲイッテイルノカナ?
「め、めめ、滅相もございません。俺なんて恐れ多くてそんな、そんな……」
まじでやめて。そんな面倒なこと本気でやめて。
「あはは。リーフから色々と聞いている。リオンがそういうのに興味がないのはわかっているさ」
笑いながらシャンパンを軽く口にしたあと、クレス王子がからかうように言ってくる。
「だが、俺の気持ちとしては本気なんだがな」
「え……」
「ははっ。気が変わったらいつでも言って来い。すぐに結納まで持っていってやるぞ」
クレス王子は飲み終えたシャンパンをバンベルガさんへ渡した。
「バンベルガ。せっかくの機会だ。お前も他の者へ挨拶をしておけ」
「御意に」
クレス王子がバンベルガさんへ言い残すと、違う人のところへ挨拶に出向いて行った。
「なぁレーヴェ。さっきの冗談、だよな?」
「少なくとも冗談には聞こえなかったけど」
「え、まじ……」
王子推薦で王女と結婚とかの流れにならないよな? 嫌だぞ、まじで。
「リオン様」
それまで黙っていたバンベルガさんが、再度頭を下げてくる。
「此度はステラシオン剣術大会優勝おめでとうございます」
王子と話していて、祝福の言葉を言うタイミングを伺ってくれてたのかな。今、やっと彼からおめでとうを貰えた。
「ありがとうございます、バンベルガさん」
「先程の殿下の話ですが、私も冗談とは思えませんよ」
「ええ……バンベルガさんも言いますか」
「リオン様はアルバートの王女様達もお救いになられました。そのようなお方がルべリア王女様と結婚し、王位を継げば、ステラシオン騎士王国も安泰だと、私も思いますよ」
「……」
「ちょっとリオン兄様。心底嫌そうな顔をしないの」
「……おっとぉ……あははぁ、ついつい、身内話だから素が出ちゃったよ」
「まったく……親交が深くても、バンベルガさんは三番隊の隊長なんだからね。偉いんだからね」
「わかってますよ」
妹から雷を頂いていると、バンベルガさんが申し訳なさそうにしてしまう。
「リオン様はそういうお話が苦手でしたね。失礼致しました」
「いえいえ。全然、全然」
「そうですよ。バンベルガさんが気にすることなんてありません。リオン兄様の性格が終わってるだけですので」
終わってるは言い過ぎだぞ、妹よ。
「お気遣い感謝致します。では、私は殿下より他の方々へ挨拶をしろとの命を受けておりますゆえ。失礼いたします」
紳士的に頭を下げると、バンベルガさんはそのまま挨拶回りに行ってしまった。
「さ、帰るか」
乾杯用に取ったグラス(ジュース)を一気に煽ると、そのまま早足で出口に向かう。
「ちょい待ち」
また捕まってしまった。
「離せレーヴェ。これ以上ここにいたら厄介事が増えるだけだ」
「優勝者が帰った方が厄介事が増えるでしょ。我慢していなさい」
「くそっ。はなっ……ぐっ──ねぇ、力強くない?」
「誰だと思ってんの?」
「脳筋一族の長女様」
「正解♪」
「くそがああああああ!!」
ジタバタとしているが、レーヴェの力が強すぎて全然離れない。
結局、レーヴェ監視の下、俺は最後までパーティに強制参加となってしまったとさ。




