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有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった  作者: すずと
二章

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第42話 追放後の初帰省

 ドナドナドナと俺を運ぶ馬車は、ヘイヴン家を目指して走っていた。


「はぁぁ……ぁぁぁあああ……」


 ながああああああいため息を吐いてから壊れた剣を眺めた。


 大きく重い大剣(双剣の片っぽ)であったが、皮肉かな、今はほとんど柄だけになっているもんだから持ち運びがしやすい。


 剣を修理しろと学園長先生から言われ、たかだか剣の修理くらいすぐに終わるだろう、なぁんて鼻で笑っていた自分の鼻をへし折りたい。いや、既に心と共に折れているんですけどね。


 結論。アルバート魔法王国に剣を修理してくれる店なんてなかった。


 あ、はい。魔法王国に剣を直せる職人なんていませんよね。考えが甘かったわ。


 剣といえばステラシオン騎士王国。父上の行きつけの鍛冶屋がステラシオンにある。そもそも父上の剣だし、そこに行けば直してくれるだろう。


 ってなわけで、俺は学園が筆記試験期間に入ったのを機に、ステラシオン騎士王国へと旅立つことにした。俺は班別実技試験の班長勝利特典で筆記試験免除。これまた皮肉なことに丁度時間があるんだな。


 ステラシオンに向かう道中、ついでにヘイヴン家に寄って行こうと思った。


 ビックになるまで追放って言われたけど、頼りが必要なら言えって言ってたもんね。修理代をワンチャンもらうとしよう。


 それに、レーヴェの様子も気になる。追放されてアルバート魔法学園に入学し、そこまで日は経っていないが、妹の顔を見たい。


 ふっ我ながらシスコンよのぉ。


 ちなみに、ヴィエルジュとフーラはお留守番。彼女達は筆記試験があるからね。ヴィエルジュなんか、

「筆記試験を実施できなくすればよろしいのですよね?」なんて物騒なことを言ってやがったが、なんとかフーラが宥めてくれたな。


 流石は双子の姉。空白の時間があろうとも、あの冷徹チート妹メイドを宥めることができるとは頼もしい。


「二人には世話になってるし、なんかお土産でも買って帰ろう」


 ヴィエルジュとフーラの存在のありがたみを噛み締みつつ、馬車はヘイヴン家へと向かって行った。


 ♢


「ただいまぁ……」


 少し警戒しつつ、ちょっぴり久しぶりのヘイヴン家のリビングへ入る。


「あ、リオン兄様、おかえりー」


 無駄に大きなダイニングテーブルから、いつも通りのおかえりを言ってくれる妹のレーヴェ。そんなレーヴェの前に座っていたのは、金髪のイケメンと、クールなイケオジの二人の男性。


「リオン。久しぶりだね」


 金髪のイケメンの方が、見た目通りの爽やかイケメンな美声を放った。


「リーフ兄さん。久しぶり」


 この金髪のイケメンはヘイヴン家の長男、リーフ・ヘイヴン。


 ステラシオン第三部隊の副隊長を弱冠二十歳で務めている期待の天才騎士。


 厳しいヘイヴン家の家訓をあまり好んでおらず、ライオ兄さんと違って優しいお兄ちゃんタイプだ。


「ご無沙汰しております、リオン様」


 リーフ兄さんに続いて、クールなイケオジ風味の男がわざわざ立ち上がり俺にお辞儀をしてくれる。


「お久しぶりです。バンベルガさん」


 こちらも彼につられ、頭を下げての挨拶をする。


 彼はステラシオン騎士団三番隊隊長のバンベルガ・クロムウェル。平民から三番隊隊長まで実力だけで成り上がった剣の達人だ。見た目通りの堅物。職人タイプって感じ。


 珍しいな。リーフ兄さんと、バンベルガさんが家に来るなんて。


 そう思いながら、レーヴェの隣の席に腰掛ける。すると、バンベルガさんが着席する。


 バンベルガさんは爵位を気にする人だ。そこまで気にする必要はないんだけど、侯爵家ってことで俺より先に座ることは失礼と思っているんだろう。あんたの方が隊長でよっぽど偉いんだから気にしなくて良いのに。


「レーヴェ。父上は出かけているのか?」


「仕事でしばらく家を空けるって」


「そっかぁ……」


 うーん。ワンチャン修理代をせびろうとしていたのに残念だ。


「そういえば聞いたぞリオン。アルバート魔法学園に入学したんだってな」


 リーフ兄さんが思い出したように言ってくるもんだから、ついつい苦笑いが出ちまう。


「まぁね……」


「そうそう」


 レーヴェが呆れた様子でリーフ兄さんへ詳細を話す。


「リオン兄様ったら、自堕落な生活していて父上のお冠をもらって追放なんだって」


「あんな生活をしていたら父さんも怒るだろうな」


「あわよくば大人になっても続けたかったんだけど」


「そりゃ無理な話だ」


「夢を持つことは良いことでしょ?」


「違いない」


 あはは! とリーフ兄さんと見合って笑い合う。


「でもぉ」


 パンっとレーヴェが可愛いらしく手を合わせ、ニタニタした顔で言ってくる。


「リオン兄様の場合、アルバートに通って良かったんじゃなぁい?」


「おいおい。魔法使い共と鬼ごっこの毎日なのに、良かねぇよ」


「どんな学園なの?」


 そうじゃなくて。とレーヴェはからかうように言ってくる。


「父上から聞いたよぉ? お姫様と婚約したって」


「あー……」


 すぐ言うやん。厳格な父上なのにすぐ言う。フーラとの婚約がどんだけ嬉しかったんだよ。まぁ侯爵家の人間が王族と婚約だなんて大出世だろうから、テンションは上がるだろうけども。


 しっかしこの妹様は、大出世ではなく、姫様との恋物語という部分に興味がありそうである。レーヴェは年頃の女の子だもんな。


「オレも聞いたぞリオン。王族と婚約者なんて凄いじゃないか」


 ふゅーふゅーと兄と妹が囃し立ててくるが、状況が状況なだけに、素直に喜べない。


 しかしだ。二人の様子を見る限り、俺の専属メイドであるヴィエルジュが、実はアルバート第二王女のルージュ・アルバートだということは言っていないみたいだな。


 そこはだいぶデリケートな話題。


 父上てきにも、話すならヴィエルジュ本人からってところだろう。俺の専属メイドではあるが、立派なヘイヴン家の家族だもんな。


「リオン様」


 そこまで黙っていたバンベルガさんが口を開く。二人とは違い、至って真面目に質問を投げて来る。


「アルバートにて魔人が暴れたというのは本当なのでしょうか?」


「はい。本当です」


「それをリオン様が鎮座させたというのも?」


 そこまで噂が流れていたか。まぁ別に父上にもバレているんだ。その魔人の正体がフーラでないことがバレてなければそれで良い。


「はい。運良く俺が魔人を倒すことができました」


 そう言うと、無表情の眉がちょっぴりだけピクついた。でもそれも一瞬のこと。


「それはご立派な功績でございましたね。流石はレオン様のご子息様でございます」


「ありがとうございます」


 さっきの眉ピクがちょい気になるな。


 ──もしかして、この人もステラシオン騎士学園に入学しろと思っての眉ピクじゃないよね?


 最悪のケースを考え、警戒しているとリーフ兄さんが立ち上がった。


「バンベルガさん。そろそろ行きましょうか」


「かしこまりました」


 リーフ兄さんに続き、バンベルガさんも立ち上がる。


 ナイス、リーフ兄さん。バンベルガさんがなにか言う前に会話が途切れてくれた。


「ええー。リーフ兄様、久しぶりに帰って来たのに、もう行っちゃうの?」


「ごめんよレーヴェ。今日は任務の途中でバンベルガさんに無理を言って寄っただけなんだ。今度の休みは帰って来るよ」


「むぅ……」


「弱ったなぁ」


 駄々っ子の妹へ困り果てた様子のリーフ兄さん。


 リーフ兄さんもレーヴェをめちゃくちゃ可愛がっているもんだから、拗ねられるのは困るんだな。


「今度、なんでも好きなもの買ってあげるからさ」


「わーい。やたー」


 無邪気に笑うレーヴェを見て、微笑むリーフ兄さん。ほんと、あの父上の長男とは思えないほどに甘い男であるな。


「リオン。今度、バンベルガさんと一緒に、アルバート魔法学園に行く予定があるんだよ」


「へぇ。ステラシオンの騎士様がアルバートの魔法使いに講演会ねぇ。なに喋るの?」


「そりゃ当日のお楽しみだ」


 ウィンク一つ投げてくる。この兄様の仕草は、いちいちイケメンね。


「じゃあね、リオン、レーヴェ」


「失礼致します」


 二人がヘイヴン家を出て行き、レーヴェと二人になると、彼女は俺の胸元を見た。


「ところでリオン兄様」


「なんだ、妹よ」


「私のあげたネックレスはどこかね?」


「あ……」


 やっべ。忘れてた。


 入学試験の時に壊したっていうのを手紙にも書いてなかったな。


「なにかな? その思い出したかのような声は」


「え、ええっと」


「正直に言ってごらんなさい。この最高の妹、レーヴェ・ヘイヴンはそっとやちょっとじゃ怒らないよ」


「入学試験の時に壊しました」


「リオン兄様のばかあああ!」


「あぐぅぅぅ」


 放たれる左アッパーがクリティカルヒット。


「フラグ回収早過ぎだろ!!」


 俺はその場で倒れてしまった。

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― 新着の感想 ―
魔人の正体がフーラでないこと はフーラであること、じゃないかな? 妹という存在は、すべての兄に愛されるものなのですねw
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