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第3話 側にいてやってくれ(ヴィエルジュ視点)

 私──ヴィエルジュは、ご主人様がヘイヴン家の追放を言い渡された直後、当主様であるレオン様の部屋へと招かれていた。


 私がレオン様の部屋に呼ばれるのは珍しい。少し緊張する。


「すまないなヴィエルジュ。急に呼び立てて」


「いえ……」


 強者のオーラ。流石はステラシオン騎士団団長。ただ椅子に座っているだけで圧倒的強さを感じる。オーラだけでレオン様が世界最強と言うのを示しているかのようだ。


 でもでも、ご主人様も全然負けてませんからねっ。ご主人様だって実はめちゃんこ強いんですから。と声を大にして言いたいが、それをするとご主人様を困らせてしまうため、なにも言えない。


「リオンの様子はどうだ?」


「部屋で項垂れております」


「そうだろうな」


 はぁと大きくため息を吐いた後に、こちらに質問を投げてくる。


「ヴィエルジュ。なぜリオンは実力を隠しているのだ?」


 流石は当主様。ご主人様が実力を隠していることはバレていたようだ。


 しかし、ここで真実を話すとご主人様の野望が潰えてしまう。


 それは専属メイド失格の行為。いや、ご主人様の野望はちょっとあれだけども……。だめだめ。どんな理由だろうと、ご主様の秘密を守るのも私の務めだ。


「それは私にもわかりません」


 メイドのウソは重罪。わかっているが、なにより優先すべきはご主人様だ。


 レオン様は私のウソに気が付いているような瞳で見てくる。


 押しつぶされそうになるプレッシャー。今にも自白しそうになるのをなんとか耐えていると、「ふむ」とレオン様が声を漏らした。


「ヴィエルジュならば知っていると思ったがな……。リオンも年頃の男だ。なにか思うところがあるのだろう」


 レオン様は良い意味でも悪い意味でも子供思いで真面目な方だ。


 ご主人様の野望がバレたらボコボコじゃ済まないかも……。


「あ、はは……」


 乾いた笑いの後、話を逸らすようにこちらから質問を投げた。


「レオン様。ご主人様を追放というのは本気なのでしょうか?」


「うむ……」


 レオン様は難しい声を漏らして少しばかり考え込む。


 そのリアクションから察するに、追放するのは本意ではないということなのかな。


「このままステラシオン騎士学園に入学しても、リオンは実力を隠したまま学園生活を過ごしてしまうだろう」


 流石は父親。見透かされてますよ、ご主人様。


「リオンはヘイヴン家の恥さらしと言われているのに、これ以上我が一族の名を汚されても困る。ここは反省の意味を込めてアルバート魔法学園に入学してもらおうと思ってな」


「アルバート、魔法学園……」


 つい声をこぼしてしまった。


「どうかしたか?」


 詳細を知っているのはご主人様だけ。レオン様は細かいことを気にせずに私をご主人様の専属メイドにしてくれたため、私の過去は詳しくは知らない。レオン様も私みたいな者に対しても気を遣ってくれているみたいで、向こうからは絶対に聞いて来ない。


 だから、こちらの難しい顔が気になったみたいだ。メイドも気にかけてくれるなんて、世界最強の騎士様の器は相当大きい。さすがはご主人様の父親。


「いえ……」


 もう大丈夫。私はご主人様のおかげで心は回復している。


「ご主人様は魔法を使えないですが、アルバート魔法学園に入学させるのですか?」


 切り替えるように質問を投げた。


「騎士の家系の人間が魔法学園に入るというのは酷な話だが、リオンも魔法学園でなら本気を出すだろう。ライオンが子供を崖から落とすような試練かもしれないが、それであいつが本気を出してくれるのならばと思ってな」


 実力を隠し過ぎて、親のスネをかじるどころではなくなってしまいましたね、ご主人様。


「アルバート魔法学園の学園長とは昔からの仲間でな。無理を言って入学試験を受けさせてもらうように頼んである。あそこは全寮制だ。入学できれば生活には困らないだろう」


 そこでだ。


 レオン様が私を呼び出した理由を話してくれる。


「ヴィエルジュにはこれからもリオンの側で仕えて欲しい。ヴィエルジュの分の入学試験の準備は整えてあるのだが、頼まれてくれるか?」


「もちろんです。私はリオン様の専属メイド。あの方の行き先が私の行き先であります」


 即答すると、レオン様は安堵の息を吐いた。


「そう言ってもらえると助かる」


 追放と言っても、息子が心配な親子心といったところだろう。


「それではリオンのことを頼むぞ、ヴィエルジュ」


「お任せくださいませ」


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― 新着の感想 ―
親の心子知らずw 魔法はまだ使えないんですね。魔力は直接には魔法につながらないのか…
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