START-6
「ネロさん。こんな事して良いんですか?」
ネロと煌の二人は今、霞が関にあるチェーンの喫茶店でお茶をしていた。
「良いんだよ」と言いながらネロは吞気にフラッペに口をつける。
「良くないですよ」
「なぁ、ここを通り過ぎる人達の大半って、官僚なのかな?」
「急に何ですか?」
「いや、だからここを通り過ぎる人達の大半が官僚なのかな?」
「違うと思いますけど」
「違うのか・・・・・・」少しつまらなさそうにするネロ。
「官僚だったら、何なんですか?」
「いやね、どうやって標的を決めるのかなって思っただけ。こうやって、人間観察しながら、ああ、あいつに決めようとかできるじゃん」
「そんな超能力者じゃないんですから・・・・・・」
「相手は、宇宙人かもだよ。どんな能力を持っていたって不思議じゃないし」
「能力で索敵していたんでしょうか?」
「どういう事?」
「いや、官僚を標的に選ぶにしても無作為で選んでいる訳ではないんです。これを見てください」
煌はバッグの中からタブレット端末を取り出し、捜査資料をネロに見せる。
「良いの。見せて」
「隠しても、意味はないですから」
「ふ~ん」
「それで、狙われた官僚は各省庁である法案を共有する人間達なんです」
「そういうことは早く言ってよ」
「すいません。そのある法案っていうのが、日本の農作物の栽培輸入に関する法案なんですけど」
「普通さ、農水省の管轄じゃないのまぁ、経済産業省が関わってくるのは分かるとしても」
「関連省庁、見えない所で繋がっているものでこの法案は各省庁と連携して勝ち取ろうみたいな法案なんですよ」
「ふ~ん」
「ふ~んって」
「その法案が通ったらどうなるの?」
「この法案が通ったら、国内の農作物を気安く輸出できなくなるんです。その代わりに国内の流出価格を下げて国内の需要を増やそうみたいな法案です」
「需要が増えれば価格下がるって、どうなの? 農家さん、困らない?」
「ですから、農地を増やそうとしているんです。国を挙げて」
「へぇ~」
「へぇ~じゃなくて。その法案を狙う理由が分からないんです」
「その答えは簡単じゃない? 自分の利権を守りたい日本人が宇宙人雇ってそういう事しているんじゃない?」
「まさか・・・・・・」
「決めつけは良くないよ。決めつけは・・・・・・」
「そうですかね」
「気になるな。宇宙人を雇ってる説」
「まさか、宇宙人が地球人の邪魔をしようとしているだけじゃないですか」
「本性が見えたな・・・・・・」
ネロはフラッペを飲み干して、椅子から立ち上がると一人そそくさと移動し始める。
「あ、待ってください!」煌もネロの後をすぐに追いかけるのだった。