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「今日から皆さんと働くことになった須田 煌さんです」
そう紹介されたのは新入社員の須田 煌。だが、彼女にはある秘密があった。
その秘密については追々話すとして、話を進めるよう。
「須田煌です。皆さんのお約に立てるよう一生懸命、頑張る所存です。宜しくお願い致します」
煌は一礼して自身の所信挨拶を済ませる。
「じゃあ、須田さんの指導係を。雫君!!」
課長のビンスがそう呼ぶが反応はない。
「課長、雫さんなら二日酔いとかで遅刻するって連絡が」女性社員がそう伝えると「またか・・・・・・」と頭を抱えるビンス。
「ああ、ごめんね」
「いえ」
「あいつが来るまで、他の課の子と一緒に研修を受けて。連絡はしておくから」
「はい。分かりました」
煌は面倒な人が指導係になったものだ。そう思った。
斯くして、煌は別の課で新人研修を受けることとなった。
午前は新人研修だけで時間が過ぎた。
同期の社員同士で昼食を食べながら、互いの親睦を深めていた所に男が一人来た。
「須田煌さん。居る?」
男の第一声はそれであった。
「私が須田ですけど・・・・・・」
「どうも、初めまして。この度、須田さんの指導係を任された雫 ネロです。宜しく」
ネロは煌に握手を求める。
「よ、宜しくお願いします」煌は形だけネロと握手を交わす。
「あ、ごめんね。同期のお食事会の邪魔しちゃって」
「いえ」
「あのさ、悪いんだけど。午後も別の課で研修を受けてくれないかな? 課長には言っておくから」
「はぁ」
「じゃ、そういうことで」
何か急いでいるようでネロは足早に食堂を後にした。
「大変だね」同期のさくらが煌を慰めるのだった。
その日の研修を終え、煌が公園のベンチで黄昏ていると「どうだ? 何か分かりそうか?」そう声を掛けられながら一人の中年男性が煌の横に座る。
「初日、ですので。まだ何も」
「いや、そういうことじゃなくて。今の感じで何か手掛かりが得られそうかってことだよ」
「そうですね。指導係の人は忙しい人みたいなので調査はスムーズに進むのではないかと思います」
「なら、良かった。是非とも、あのミズタマンとやらの正体を掴んでくれ」
「はい。必ず」
では、ここで須田煌の素性について明かしておこう。
彼女は警察庁公安部外事X課の刑事である。先の取り締まりの際、ミズタマンを名乗る人物と接触し助けられた。
その謎の人物、ミズタマンを探るために煌はaura社という外資系企業へ潜入することとなった。
だが、何故、この会社に潜入するのか。それを煌は知らせてなかった。
「あの、どうして、auraに潜入するのでしょうか?」
「それは答えられないな・・・・・・ なんせ、上のお達しだからな」
「上ですか・・・・・・」
「それより、歓迎会を断ってくれたところ申し訳ないが、別の任務だ」
「はい」
「今度は、超高速で動く宇宙人を捕まえて欲しい」
「無茶な任務ですね。相手は高速で動くんですよね?」
「ああ、そして、物をひったくるらしいんだ。それで数多くの機密資料が盗まれたんだ」
「資料は?」
「いつもの暗号ファイルで送っている。パスワードはこれだ」
上司は一枚の紙を渡し、去っていった。
紙に書かれたパスワードを入力し、暗号化ファイルを開く。
霞が関周辺で事件は起こっているらしく、官僚が標的らしい。相手は、官僚が持つ国家予算資料や法案資料奪取が目的。
「厄介な相手だなぁ~」煌はちょっと、気が重くなるのだった。
その日の晩、霞が関に来た煌は、事件現場になった場所へと向かった。
「ここが事件現場か・・・・・・」
周囲を見渡して、何か手掛かりがないか散策していると煌の横を一陣の風が吹いた。
「あ!? ない!!」
煌は官僚のふりをして、今回の犯人をおびき出す作戦を思いつき、研修の隙に自分で用意したダミーの資料をカバンに忍ばせておいたのだ。
そして、カバンの中にダミーの資料があるかを確認したら、その資料がすっかり無くなっていた。
「噓。こんなにも早く・・・・・・」
「こんなにも早くだよねぇ~」
「きゃっ!!」
煌が驚くのも無理はなかった。なぜなら声を掛けてきたのは、指導係の雫ネロその人であったからだ。




