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MIZUTAMAN  作者: 飛鳥 進
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START-1

「今日から皆さんと働くことになった須田 煌さんです」


 そう紹介されたのは新入社員の須田 煌(すだ みやび)。だが、彼女にはある秘密があった。


 その秘密については追々話すとして、話を進めるよう。


「須田煌です。皆さんのお約に立てるよう一生懸命、頑張る所存です。宜しくお願い致します」

 煌は一礼して自身の所信挨拶を済ませる。


「じゃあ、須田さんの指導係を。(しずく)君!!」


 課長のビンスがそう呼ぶが反応はない。


「課長、雫さんなら二日酔いとかで遅刻するって連絡が」女性社員がそう伝えると「またか・・・・・・」と頭を抱えるビンス。


「ああ、ごめんね」


「いえ」


「あいつが来るまで、他の課の子と一緒に研修を受けて。連絡はしておくから」


「はい。分かりました」


 煌は面倒な人が指導係になったものだ。そう思った。


 斯くして、煌は別の課で新人研修を受けることとなった。


 午前は新人研修だけで時間が過ぎた。


 同期の社員同士で昼食を食べながら、互いの親睦を深めていた所に男が一人来た。


「須田煌さん。居る?」

 男の第一声はそれであった。


「私が須田ですけど・・・・・・」


「どうも、初めまして。この度、須田さんの指導係を任された雫 ネロです。宜しく」

 ネロは煌に握手を求める。


「よ、宜しくお願いします」煌は形だけネロと握手を交わす。


「あ、ごめんね。同期のお食事会の邪魔しちゃって」


「いえ」


「あのさ、悪いんだけど。午後も別の課で研修を受けてくれないかな? 課長には言っておくから」


「はぁ」


「じゃ、そういうことで」


 何か急いでいるようでネロは足早に食堂を後にした。


「大変だね」同期のさくらが煌を慰めるのだった。


 その日の研修を終え、煌が公園のベンチで黄昏ていると「どうだ? 何か分かりそうか?」そう声を掛けられながら一人の中年男性が煌の横に座る。


「初日、ですので。まだ何も」


「いや、そういうことじゃなくて。今の感じで何か手掛かりが得られそうかってことだよ」


「そうですね。指導係の人は忙しい人みたいなので調査はスムーズに進むのではないかと思います」


「なら、良かった。是非とも、あのミズタマンとやらの正体を掴んでくれ」


「はい。必ず」


 では、ここで須田煌の素性について明かしておこう。


 彼女は警察庁公安部外事X課の刑事である。先の取り締まりの際、ミズタマンを名乗る人物と接触し助けられた。

 その謎の人物、ミズタマンを探るために煌はaura社という外資系企業へ潜入することとなった。


 だが、何故、この会社に潜入するのか。それを煌は知らせてなかった。


「あの、どうして、auraに潜入するのでしょうか?」


「それは答えられないな・・・・・・ なんせ、上のお達しだからな」


「上ですか・・・・・・」


「それより、歓迎会を断ってくれたところ申し訳ないが、別の任務だ」


「はい」


「今度は、超高速で動く宇宙人を捕まえて欲しい」


「無茶な任務ですね。相手は高速で動くんですよね?」


「ああ、そして、物をひったくるらしいんだ。それで数多くの機密資料が盗まれたんだ」


「資料は?」


「いつもの暗号ファイルで送っている。パスワードはこれだ」


 上司は一枚の紙を渡し、去っていった。


 紙に書かれたパスワードを入力し、暗号化ファイルを開く。


 霞が関周辺で事件は起こっているらしく、官僚が標的らしい。相手は、官僚が持つ国家予算資料や法案資料奪取が目的。


「厄介な相手だなぁ~」煌はちょっと、気が重くなるのだった。


 その日の晩、霞が関に来た煌は、事件現場になった場所へと向かった。


「ここが事件現場か・・・・・・」


 周囲を見渡して、何か手掛かりがないか散策していると煌の横を一陣の風が吹いた。


「あ!? ない!!」


 煌は官僚のふりをして、今回の犯人をおびき出す作戦を思いつき、研修の隙に自分で用意したダミーの資料をカバンに忍ばせておいたのだ。

 そして、カバンの中にダミーの資料があるかを確認したら、その資料がすっかり無くなっていた。


「噓。こんなにも早く・・・・・・」


「こんなにも早くだよねぇ~」


「きゃっ!!」


 煌が驚くのも無理はなかった。なぜなら声を掛けてきたのは、指導係の雫ネロその人であったからだ。

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