START-10
ネロと煌はaura社の研究開発部にその身を置いていた。
「スケさん。何か分かった?」
「いや、あれ以降は大したものは、それより君の方はどうなんだい?」
スケさんはネロたちの成果を尋ねる。
「無いね」
「ダメじゃない」
「そうだよね。ダメなんだよねぇ~」
「あの、一つ聞いても?」
「何?」男二人、声を揃えて煌に返事をする。
「ネロさんはどう見ても年下のように見えるのですが、何故、琥珀さんにため口何ですか?」
「え? 何でって・・・・・・」
「それは、僕と彼が同い年だから」
「え? ウソっ!!」煌は驚いてみせる。
「ウソじゃないよ。一応、28歳って事にしてるけど、上では」
ネロの言う上とは、aura社の経理部門である。
「そうなんですか」
「そうなんです」と答えるネロ。
「しかし、地球人が裏にいる線は濃厚だな」
「だよなぁ~ 面前でああも言われると」
「面前ということは、キバ堂の重役達から聞き出せたという事だな」
「そうだな。だよね?」
「ええ、はい」急に話を振られたので取り敢えず、返事をする煌。
「あいつら、機密情報なんか盗んで何になるんだろうな」
「そう言われればそうだな」スケさんも気になる素振りを見せる。
「何か知らない?」
「知っていたら、苦労しませんよ」煌はそう答えるのだった。
「そうだよねぇ~」ネロは口を窄めて困ったみたいな顔をする
「あの、事件とは関係ないことなんですけど」
「何?」と煌の疑問の内容を聞き出そうとするネロ。
「ミズタマンってご存知ですよね?」
「い~やぁ~ 知らないよ」
「知らないなぁ~」とスケさんもネロに合わせる。
「その反応を見る限り、何か知っていますよね?」
「知らないものは知らないよ。なぁ、スケさん」
「ネロ氏の言う通りだ。知らないものは知らないんだよ。煌ちゃん」
「益々、怪しいんですけど」
「そんなことないよ。あ、そうだ。盗まれた機密書類ってどういうの?」とはぐらかしネロは別の質問で誤魔化そうとする。
「誤魔化さないでください」
「いや、でも気になるな。なんの資料だったんだい?」
「確か、入管に関しての資料でした」
答えをはぐらかされた煌は少しムッとしながら、質問に答える。
「入管か。なぁ、それって宇宙人の入管にも関わってくるものなのか?」ネロの問いに「少々お待ちを」と煌はすぐに自前のタブレット端末で検索をかけ調べ始める。
「そうですね。関わってます。これ見てください」
自分のタブレットをネロとスケさんに見せる。
「規制緩和か・・・・・・」
「表向きは外国人の観光客のビザを緩和しつつ、その裏では宇宙人にも適用する算段の法案だな」とスケさんが言う。
「こういうのは是が非でも回避したいと思うのが、奴さん達だよな」
「そうですね。排他しようとしているわけですから」
「良かったじゃないか。敵の行動が読めて」
「ああ、そうだな」
「そんな吞気なことで大丈夫なのでしょうか?」楽観視するおっさん二人に煌は釘を刺す。
「煌ちゃんは肩の力が入りすぎなんだよ」
「そうそう」スケさんに賛同するネロ。
「これからどうするんですか?」
「そう言う煌ちゃんには作戦あるのか?」ネロの問いに煌は「ありません」と即答する。
「スケさんは?」
「僕の仕事は研究開発だ。そう言うのは君の得意分野だろ?」
「そうなんですか?」
「そんなわけない。と言いたいところだが、今、思いついた」
「何を?」
「作戦だぁ~よ。作戦」
「どんな作戦なのか、気になるな」
「ちょっと、耳を拝借」
ネロはスケさんにだけ耳打ちをする。
「成程。いつものパターンだな」
「そう言う事、言わないでよ」
「いつものパターンって?」
「相手を挑発するって事だよ」とスケさんが答え、それを聞いた煌は聞くんじゃなかったの意味のため息をつくのだった。