START-9
釈放されたミズタマンはトイレに行ったきり、戻って来なかった。
煌は仕方なく、一人で捜査をすることにした。
「結局、一人じゃない。ネロさんは居なくなるし・・・・・・」
煌は一人、ボヤいていると「俺がどうしたって?」と急に背後から姿を現すネロ。
「うわぁっ!!」驚いた煌は尻餅をつく。
「何、驚いているのさ。さ、行くよ」
ネロは煌を立てさせると、そそくさと一人歩き出した。
「待ってください!!」煌はネロの後を追いかける。
「どこ行くんですか?」
「うん? キバ堂の本社にちょっとな」
「いや、用もなしに行ってもダメですよ」
「大丈夫だよ。手ならある」
キバ堂の本社ビルに着いた二人は、堂々とビル内に入る。
「どうするんですか?」
「ま、良いからCome On」
ネロは気軽にそう言い、受付に行く。
「いらっしゃいませ」受付嬢にそう言われた「いらっしゃいましたぁ~」と言うネロを小突く煌。
「あの、編成局長の門脇さんにアポイントメントがあるのですが」
「門脇ですね。少々お待ちください」受付嬢は内線で編成局に確認を取る。
「確認取れました。これが入館証です。お帰りの際、返却ください。では、どうぞ」
「どうもぉ~」ネロは受付嬢にそう言い、入館ゲートに向けて歩き出した。
「編成局ってどういう事ですか?」
「ま、良いから」
入館ゲートを潜り、編成局のあるフロアへと向かう二人。
エレベーターを降りると、編成局長の門脇が待っていた。
「どうも、お待ちしておりました」
そう言う門脇に身構える煌に対して、ネロは「どうも、お待たせして申し訳ございません」と告げた。
「さ、こちらへ」
門脇に案内され通された部屋は、大会議室であった。
そこにいたのは、キバ堂の重役達であった。
「どうも、お邪魔します」
「失礼します」
各々、そう挨拶しながら席に着く。
「君たちが電脳剛三氏を追っている不埒な輩か・・・・・・」
そう話しだしたのは、社長の結痕。
「不埒って。何とも古臭い」ネロはそう答えた。
「にしても、輩だろ? 何が狙いだ?」副社長の進婦が言う。
「狙うはあの子のハートかな?」ネロはそう答えニヤッと笑う。
「ふざけてるのか!」結痕が怒鳴りつける。
「ふざけてませんよ。それより、なんで重役達が雁首揃って俺たちに文句を言う訳?」
「貴様らが、我々の邪魔をするからだ」
「邪魔って・・・・・・」煌が戸惑っているとネロは「邪魔だから刺客を寄越してくるわけ?」と言う。
「刺客? 何のことだ?」進婦は戸惑いの声を出す。
「とぼける気ですか?」煌が言うと「知らんものは知らん」進婦は断言する。
「何にせよ。我々の邪魔はするな!! 地球に住めなくなるぞ!!」
結痕は二人にそう言って、重役達を引きつれて部屋を出ていった。
「何なの。あいつぅ~」煌がそうボヤいていると「ボヤかない。ボヤかない」とネロはニタニタするのだった。
キバ堂のビルを出た二人は、近くの喫茶店に入って会議をすることになった。
「ネロさんは、今回の件、どう思われているんですか?」
「うん。あぶなっかしい事件だなと思っている」
「どう危ないんですか?」
「う~ん。分からないや・・・・・・」
「分からないことだらけじゃないですか」
「でも、一番分からないのは敵の目的だよ・・・・・・」
「そうですね。宇宙人を雇って地球人を襲うなんて」
「え? そうなの?」
「違うんですか?」
「俺が聞いた話は、宇宙人が地球人を襲う裏には地球人の影がって事なんだけど。なんか、微妙に違う」
「この前の宇宙人はそう言う事じゃないですか」
「ま、そうなるわな。だからこそ、気になるじゃない」
「気になる? ですか」
「気になるなぁ~ 俺たちの面前で堂々と啖呵を切る姿勢。あれもこれも気になってしょうがないわな」ネロはカプチーノに口をつけて「苦っ!!」と言うのだった。