3話 囚われ(?)の神様
私、天月。 どこにでもいる普通の神様、○○○○歳。 殺……戦うのに夢中になっていた私は慣れない肉体に限界がきていたことに気付かなかったの。 私は疲れ果てて、村の真ん中で倒れてしまい、目が覚めると……身体が鎖で縛られてしまっていた!
……俺、一応神様なんだけど、こんなことしていいの? 天罰下っちゃうよ? 週1で服のボタンが1つ外れる程度だけど。
「寝起きは最悪じゃな……」
霞む目で周囲を見渡すと、そこは地下室のような場所であり、壁際のほぼ天井のような高さにある鉄格子から日の光が差し込んでいた。 顔に直接、光が当たってるのでとても眩しい。 が、ほんの少しでも動くと身体の節々や筋肉が悲鳴を上げて脳に訴えてくるので動けない。
「お母さーん! 犬のお姉ちゃん、目が覚めた-!」
「……犬のお姉ちゃん?」
子供の声が聞こえて、声のする方に目を向けると、多少錆びてはいるが頑丈そうな鉄扉があり、その奥では落ち着きのない足音が階段を駆け上がっていた。
犬のお姉ちゃん……色んな世界で神として存在していた俺にもある程度の頭はある。
自分の姿形も把握仕切れてないが、恐らくは俺。 今まであまり気にしてなかったが、お姉ちゃんと子供に見られるということは肉体的には若く、身長や手足の長さは霊体だった時に近いのだろう……そうじゃなきゃ、距離感とかで違和感を感じるはずだからな。
そんなことを考えていると、先程の賑やかな足音と共に新しく誰かが降りてくる。 落ち着きのある足音……お母さんとか言ってたから母親だろうか。
俺の対処を見るに……いざとなれば身体に鞭打って逃げた方がいいな。
「犬のお姉ちゃん!」
「ぬおっ!?」
低く太い音を出して、鉄扉が開いたかと思うと、小さな女の子がすごい勢いで、胡座をかいて座っていた俺に突撃してきた。 急に体当たりされるとは思っていなかったし、その衝撃で稲妻が流れたかと思うほどの激痛が身体中に走る。 これには思わず、声が出てしまった。
「駄目よ、エイル。 急に抱き付いたら、犬のお姉ちゃんがビックリするでしょう?」
「はーい……ビックリさせてごめんね?」
どうやら、この女の子はエイルという名のようだ。
二人の衣服はシンプルなものだが、汚れなどは見当たらない。 貧しくはないが、裕福というわけでもない……が、こんな部屋を持ってるのは少し身分が高いのか?
それにしても幼いとはいえ、すぐに謝ることができるとは大したものだな。 子供らしく純粋で無垢。 この子の親ではないが、是非ともそのまま大人に育って欲しいものだ。
「か、かまわんよ。 じゃが何故、わしは鎖で捕らえられておる?」
「それは貴女がゴブリンを全て倒した時に村の者と話し合ったのですが……あの惨状でしたから、貴女を恐れている者も多く、目が覚めるまでは捕縛させていただきました。 今、鎖を外しますので少々お待ちください」
あれは小鬼じゃなくてゴブリンで、俺を恐れての捕縛だったか……これは俺が悪いな。 誰だっていきなり現れて敵を一人残らず、血祭りにする人物は恐いわな、俺も怖い。
あぁ今、思い出せば、過去に他の神にも「元気で君らしい戦い方だ! しかし、掃除をする他の神を考えて戦えるともっといいぞ!」と暑苦しく語られたな……。
「はい、外れました。 えーと……」
「ん? わしは天月じゃ」
「アマツキ……? 珍しいお名前ですね、私はルシアと言います。 この子は」
「あたしはエイルって言うの! お姉ちゃん、一緒に遊ぼっ!」
そう言ってエイルという少女は座っている俺の手を引いてくる。 遊んであげたいところだが、全身筋肉痛やら疲労で手を引かれる度に激痛が走るので、痛みを隠して微笑むことが精一杯なんだ。
「そうしてやりたいところじゃが、わしはゴブリン共を相手にして身体中が痛くて、あまり動けんのじゃ。 それはそれとしてルシアさん、わしの持ち物の中に紙のようなものは無かったかのう?」
「こちらのことでしょうか?」
「ああ、それじゃ。 すまんのぅ」
不満そうに声をあげるエイルを横目に、俺はルシアの取り出した紙を手に取る。
そう、契約書。
ゴブリンとの戦いで無くなったかと思って内心焦っていたけど、捕縛するついでに唯一の持ち物であるこれも没収されていたみたい。 いや~、ルシアさんが持っててよかった……まだこの喋り方の原因となった加護しか分かってないから必要だったからね!
ちらっとステータスみたいなのも見えたけど、それを知る前に殴り込みをしたのは軽率だったな。
「オープン・ザ・セサミじゃ!」
「おーぷん・ざ・せさみ?」
「わしのおった世界の呪文みたいなものじゃ」
何となく俺の世界にあった物語の呪文を口にして、契約書を開くとエイルは不思議そうに首を傾げて、俺のことを見つめていた。
勝手に口にしといてなんだが、恥ずかしくなるから、見つめないでもらいたい。
そして、開いた契約書には加護の説明に加えて、ステータスの確認方法、契約する上での条件、この世界の世界観、この世界の創造神の一言とプレゼントの受け取りが記載されてある。
ステータスの確認方法は『ステータス、オープン』と言えばいいだけらしい。
「ステータス、オープン」
「……これが犬のお姉ちゃんのステータス?」
「みたいじゃの」
そう口にすると俺の目の前には薄い板のようなものが現れる。
触れようとしても触れられず、いつの間にか俺の背後から顔を覗かせるエイルにも見えてるみたいだ。
そして、俺のステータスは……
『ステータス画面
名前:天月
性別:女
種族:獣人族 犬科 神獣クラス
スキル:『迅雷の足さばき』
エクストラスキル『創造神の加護:言語、筆記知識』
オリジンスキル『神獣舞踏』
『発勁』
獣人スキル『獣の聴覚、獣の嗅覚、遠吠え』
デバフスキル『器となる肉体』
デバフスキル『不明』
耐性:氷軽減
氷結耐性 』
スキルに耐性、レベルや防御力などの数値は無いようだが、まるでゲームの世界だな。
それにしても、獣人族で犬科の神獣クラス、オリジンスキル、不明のデバフスキル……よく分からないものも多いが、神は神でも獣人の神だったか。
ステータス
名前:天月
性別:女
種族:獣人族 犬科 神獣クラス
スキル:『迅雷の足さばき』
『発勁』
エクストラスキル『創造神の加護:言語、筆記知識』
オリジンスキル『神獣舞踏』
獣人スキル『聴覚、嗅覚、遠吠え』
デバフスキル『器となる肉体』
デバフスキル『不明』
耐性:氷軽減
氷結耐性
一言コメント
犬のお姉ちゃん……そう呼ばれるのは思ったより心地よかった。




