2話 神様の仕事
残酷な表現があります。 注意して下さい。
なんやかんやで探索をしたり、書類に書いてたステータスについて見る前に日が暮れてしまった。 夜闇には馴れているし、今日は月明かりが草原を照らしてくれているが、身体を持ったからか、身体の重みは増して、勝手に目蓋が下りてくる。
生物や人間には睡眠が欠かせず、寝なければ体調不良になると学校の授業で聞いたが、なるほどこれは辛い……。
なんで神様で姿が見えないのに学校で授業を受けられたのか? 受けたのではない、聞いたのだ。 誰にも見つからず、無料で授業を受けられるし、本も読み漁れる……こればかりは神様々ってやつだな。
「い……かんいかん、このような場所で眠ってしまうのは……」
うつらうつらしていると、どこからか金属のぶつかるような音だったり、叫び声、何かが燃えるような音が聞こえ、焦げ臭さが漂っている。
その音がする方向に今にも閉じてしまいそうな目を向けると、霞むくらい遠くで何か赤い光……いや炎で、村……。
「……村が燃えておるではないかッ!?」
燃えている村を目の当たりにして驚きで凄まじかった眠気は一瞬で吹き飛び、慣れない身体で草原を駆け抜ける。
その村を知ってるわけでもなければ、恩がある訳でもないし、面倒事は嫌いだ。 でも、これが俺の性分なんだよな。
それにしても俺の鼻と耳ってこんなに良かったか!?
肉体を得たとしても脚には自身があった霊体の時から速さは自慢だった。 だからこそ、霞むで見えるほど遠くの村でも数分の全力疾走で辿り着いたが、村は酷い有り様だった。
燃える人間の住処、血を流し死んでいる男……人間の断末魔に子供の鳴き声。
そして、至るところに人間を襲う小鬼がいる。 中には農具を手にして勇敢に戦う者もいたのだろうが、その人間も小鬼たちによって滅多刺しにされていた。
「貴様ら……! やめんかッ!」
村中に響き渡る怒号に一瞬、時が止まったと思うような静寂が訪れたが、それも束の間、村に潜んでいた全ての小鬼が俺を囲み、刃物と目をギラつかせている。 数にすれば百と少しくらいだ。
「来い、悪鬼羅刹共……人間に害成す貴様らはわしの手で屠ってくれるッ!」
正直、腹が立っていた。 理由は簡単だ。 俺は人間を殺す神ではない、人間を救う神でもない。 人間の助けて欲しいという願いから生まれた神だからだ。
「「ギャギャーーーッ!!!」」
小鬼たちは威嚇するように声を上げると、俺、一人を相手にするからか、知恵がないからなのか四方八方から数で殺す気のようだ。
まあ、小物らしいな。 そう思いながら、飛び掛かってきた小鬼の顎を蹴り上げる。
すると、煩く騒いでいた小鬼はその場で止まり、二つのドサッと落ちる音がした。 一つは小鬼の身体、もう一つは小鬼の頭だ。 静まり返る小鬼を気に止めず、俺はもう一匹もう一匹と確実に小鬼の命を断つ。
これは人間だけの為ではなく、神のためであり、俺の仕事である。
妖怪は強い力を持つ存在の神を様々な悪知恵を用いて喰らおうとする。 そして、不甲斐なくも食われた神は妖怪の一部となって存在が完全に消滅し、神に等しい力を持つ妖怪だけが残るからだ。 実際、たまにこういったことは起こっていた。 だから、人間や神を襲う妖怪だけは慈悲を与えることはあっても、確実に命を断つ。
そして気付けば、小鬼は数匹程度に減っており、そのどれもが逃げようとしていた。
「せめてもの慈悲じゃ、苦しまずに逝け」
逃げる小鬼の目には恐怖が映り、涙が溢れそうになっていたが容赦なく、首を蹴り落とす、心臓を蹴り穿つ、掌で頭を叩き砕いた。
全ての小鬼が死んだことを確認すると、今度は自分の身の回りに目を向ける。 俺の近くには小鬼の死体の山と血濡れた地面。そして、そんな俺を怯えるように物影から見つめる生き残った人間。 小鬼に襲われていた時より更に村は無惨になっていたが、人間の死人は増えてないと思う。
「まあ、出来ることはした。 恐怖の対象は去るとするか……の……?」
掃除が終わったと気を抜いた瞬間、今までの疲労や眠気からその場で倒れてしまう。 そして、掠り傷一つ、無いのに謎の激痛が全身を襲った。
よく考えて考えて、プツリと意識が落ちる瞬間、その理由が分かった。
この体は俺のであっても霊体じゃなくて、骨やら内蔵のある肉体だから無理して動かしてたんだな。
ステータス
名前:天月
性別:女
スキル:不明
耐性:不明
一言コメント
思ってたのと違って人間の身体は不便でした。 身体を鍛えれば霊体と同じように動けるかな?




