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83/241

83、白鳥の湖

――『LOVEジュエル7 グループチャット』

 

葉室王司(はむろおうじ):これからよろしくね

月野(つきの)さあや:葉室ちゃん、はむちゃんって呼んでもいい꒰( ˙ᵕ˙ )꒱? 

葉室王司(はむろおうじ):はい

三木(みき)カナミ:みんな、今度プライベートでも集まって遊ぼう~!

高槻(たかつき)アリサ:いいね!

こよみ(きよみ):遊園地はどう? この前、彼氏と行ってよかったからおすすめ♡

月野(つきの)さあや:いこー꒰( ˙ᵕ˙ )꒱いこー

五十嵐(いがらし) ヒカリ:絆を深めるのは大事よね( ゜д゜)!

緑石(ろくいし)芽衣(めい):そう?

葉室王司(はむろおうじ):あ、あと、私、銭湯も行ってみたいです。いつか気が向いたら

三木(みき)カナミ:銭湯?

こよみ(きよみ):銭湯?

緑石(ろくいし)芽衣(めい):やだ

五十嵐(いがらし) ヒカリ:じゃあ、遊園地→銭湯→お泊り会ってどう( ゜д゜)?

五十嵐(いがらし) ヒカリ:夜はみんなで筋トレよ( ゜д゜)

緑石(ろくいし)芽衣(めい):グループ抜けます

葉室王司(はむろおうじ):抜けないで!?


   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆

 

アルファプロジェクトについて語るスレpart252


21:名無しのリスナー

LOVEジュエル7公式動画チャンネルできてるぞ!

乗り込めーー


22:名無しのリスナー 

うおおお俺がジュエラーだ


23:名無しのリスナー

1曲で終わりそうにない力の入れ具合w


24:かじかじ 

佐久間君は好きな分野にとことん拘っちゃうオタク君だからね


25:名無しのリスナー

王司ちゃん!パパはジュエラーになったぞ王司ちゃん!

 

26:名無しのリスナー

>>25

貴様!パパを名乗るとは不届きな

王司ちゃんのパパは俺だぞ


27:名無しのリスナー

いやおれだ

 

28:名無しのリスナー

いやいやオレだ

 

29:名無しのリスナー

みんなの娘でええやんか


30:名無しのリスナー

ジュエルちゃんたちのプロフィール見てたら彼氏持ちアピールしてる子いるんだが(困惑)


31:名無しのリスナー    

彼氏持ちですが何か?


32:名無しのリスナー

NTRを妄想して推せ 


33:名無しのリスナー

通は彼氏ごと愛す


34:名無しのリスナー    

いや、自分が寝取られた設定でシコるのがホンモノ


35:名無しのリスナー

そんなホンモノになりたくねえよ

 

36:名無しのリスナー

さあやちゃん神絵師でVtuberのLive2Dモデラーだぞ

歌って踊れて絵もかけて絵を動かせて可愛いって天才か


37:名無しのリスナー    

伊香瀬ノコにアバター作った噂ある子だよね


38:名無しのリスナー

ワイはヒカリネキ一筋やで

歌がガチでプロ

 

39:名無しのリスナー

ヒカリネキはちょっとガチオーラありすぎて怖い

遊び半分に青春ごっこしてる下手可愛い女の子を愛でたいんじゃ


40:名無しのリスナー

>>39

>下手可愛い

つ王司

 

41:名無しのリスナー

>>40貴様を許さない追放だ

    

42:名無しのリスナー

でもちょっとわかる

王司ちゃん正直、歌は下手カワに分類されるよな

 

43:名無しのリスナー

演技が上手いから

本業は女優の方だから

 

44:名無しのリスナー

可愛ければいいんだよお!! 

 

45:名無しのリスナー

緑石(ろくいし)芽衣(めい)タソを推してるのは漏れだけか?

みんな見る目がないな

   

46:名無しのリスナー

めーちゃんは最年少カワイイ

 

47:名無しのリスナー

おれは箱推しだけど?


48:西園寺麗華

おいジュエラーども

ジュエルが「来週の週末に遊園地とスーパー銭湯行ってお泊り会する配信予定」ってSNSで言ってる


49:名無しのリスナー

うおおおおお


50:名無しのリスナー

うおおおおおおお


51:かじかじ

くそっ西園寺麗華が気になってツッコミ入れてえ


  

   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


――【葉室王司視点】


「今日がオーディションで、来週はアイドル部で文化祭の練習、放課後はLOVEジュエル7のレッスンと演技ワークショップに参加、その後の週末はみんなで遊園地と銭湯とお泊り会……王司、がんばりすぎじゃない? 疲れたらちゃんとお休みするのよ?」  


 土曜日の午後、オーディションの日。


「この前も熱を出したんだから、無理しないのよ」


 ママに心配そうに送り出され、私は家を出た。

 天気は雨。風も強い。


 オーディション会場は劇団アルチストの稽古場だった。

 審査員席には、着ぐるみブラザーズがいる。

 パンダ、シロウサギ、ピンクパンサー……あ、トドがいない。

 どうした、トド。

 いや、いなくてもいいんだけど。

 

 参加者の中には、知っている顔ぶれがいる。

 金髪に髪色を戻した火臣恭彦……、あれ? 

 恭彦はわかるけど、西園寺麗華もいるじゃないか。

 

「お二人とも、オーディション受けるんですね」


 声をかけると、麗華はハグで歓迎してくれた。

 

「王司ちゃんおはよう~! お姉さん、社長に頼んで混ぜてもらっちゃった。舞台の経験と実績がほしくて」

「あはは、麗華お姉さんらしいです」


 恭彦は今日はぼろぼろじゃない。普通だ。よかった。

 目が合うと、微妙に後ろ暗そうに眼を逸らされる。


「俺は父がねじ込んでくれたようです」

「んっ……」


 わ、私がねじ込んだんだよ。

 私が八町に紹介したんだよ。私のコネだよ。


 喉まで出かかった言葉を飲み込み、ぽふりと両手を叩いて笑顔を浮かべた。


「恭彦お兄さんのお父さん、私、嫌いです。えへへ」

「そ、そうですか……」

「あ、でも、あの、恭彦お兄さんが参加していて嬉しいです。嫌とかではないので、誤解しないでください! あくまでお兄さんのお父さんだけ……」

「うちの父がいつも色々とすみません」

 

 話し込んでいると、後ろから袖を引かれる。むむ?

 

「はい……、っ?」

「おはようございます」

 

 振り返ると、年下の『ジュエルちゃん』がいた。

 黒髪くせ毛ショートヘアに黒縁眼鏡の新人アイドル……13歳の緑石(ろくいし)芽衣(めい)ちゃんだ。

 「グループチャット抜けます」って言ってた子だ。

 

緑石(ろくいし)芽衣(めい)ちゃん、だよね? お芝居もするの?」

「経験なしです。教わったこともないです」


 芽衣(めい)ちゃんは、独特の静かでマイペースな雰囲気だ。「我が道を行く」みたいな言葉が似合いそう。

 

「お芝居、『やったことないけど興味があって、これからやるぞー』って感じなんだね?」

「…………まあ……」

「微妙な感じ!?」

   

 ふむ、ふむ。

 どうしてここにいるのか不思議だけど、いろいろなジャンルに挑戦するのはいいことだよね。


 知り合い同士で話していると、ピンクパンサーがマイクで喋った。

 関西イントネーションだ。

  

「皆さん。初めまして。西の柿座のピンクパンサー、猫屋敷です」


 ん? 劇団アルチストのオーディションだよね?


「招待状には劇団アルチストの名前だけが記載されていましたが、実はこのオーディションは、劇団アルチストと西の柿座の共同開催です。両劇団で相談して審査・採用させていただきます。お気に召さない方は、お帰り下さい」


 ほう、ほう。どっちに採用になるかわからないんだ?


 劇団アルチストに規模や知名度で一歩劣るとはいえ、西の柿座も有名な劇団だ。

 チャンスが2倍になったと思えば、悪い話じゃないんじゃないかな。


 会場は3秒ほどザワザワとしたが、ピンクパンサーが手を挙げるとすぐに静かになった。帰る者はいなかった。


 ピンクパンサーは、荷物からぬいぐるみのピンクパンサーを取り出した。

 そして、ぬいぐるみを動かしながら説明した。


「では、審査を開始します。これから、4人一組になり、順番に前に出てください。ランダムにBGMを流します。どんなBGMが流れるかは、その時になってからじゃないと、わかりません。4人は打ち合わせなしでBGMに合わせて自由にパフォーマンスをしてください。歌、ダンス、寸劇、どんなパフォーマンスでも結構です」


 猫屋敷は説明を終え、急かすように付け足した。

 

「では、さっさとグループを作って早めに出てきてください。遅いグループはそれだけで印象が悪くなりますよ。だらだらしてると人生が終わってしまうのでね」 


 私たちは顔を見合わせた。


「組みましょう」

「ですね」

「さっさと挑戦しちゃいましょう」

 

 即座にグループを結成して時間を惜しむように前に出ると、猫屋敷は満足そうにぬいぐるみを振った。


「一番グループ、行動が早くて大変結構。メンバーは……葉室(はむろ)王司(おうじ)緑石(ろくいし)芽衣(めい)西園寺(さいおんじ)麗華(れいか)火臣(ひおみ)恭彦(きょうひこ)……確認しました。では、開始しましょ」


 BGMが流れ始める。

 ゆったりとした優雅な曲だ。これは、有名な曲――白鳥の湖だ。


 バレエスキルのある麗華が主役をもぎとりに踊り出すのが見える。

 

『私が目立つ。仕事を勝ち取る。

 スキルを活かす。自信がある。遠慮なんてしない』

 

 ――『私がNo1よ』……そんな強気な姿勢が見えて、私はこのお姉さんが好きだなと思った。



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