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【完結】俳優、女子中学生になる~殺された天才役者が名家の令嬢に憑依して芸能界に返り咲く!~  作者: 朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます!
3章、人狼ゲームとシナリオバトル

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177、女子、助け合う

 初日の配信が終わった後は、自由に夜を過ごせることになった。

 

 お風呂は男子と女子が分かれていて、入り口に暖簾(のれん)もある。

 海外勢が喜んで写真撮ってるよ。日本文化を楽しんでね。


 脱衣所で服を脱ぎ、中に入る――銭湯みたいな雰囲気だ。


「王司ちゃん、背中洗ってあげる」

「じゃあ、アリサちゃんの背中も洗ってあげるよ」

「あ。今気づいたけど、王司ちゃん、左脇にほくろがあるよー」

「ひゃっ、ア、アリサちゃん。くすぐったい……」

「ふふふ!」


 洗いっこして騒いでいると、ジョディが「アナタタチ、ウルチャイネー」と注意してきた。

 ジョディは同じくらいの年齢だけど、スタイルがいい。ボイン、キュッ、ムチッだ。

 不思議だよな、胸って。どうしてこんなに差がつくの。あと、肌の色が綺麗だよ。


「サワグ、ダメ、ルールよ」

 

 外国人のカタコトの日本語って可愛いよね。

 前はスマホに翻訳させてた気がするけど、覚えてきたのかな? 偉いな。

 

「ごめんねジョディちゃん」

「ごめんねー」

「バスルーム、マンガワールド。ワタシ、ジャパン野蛮文化クワシイ。ジャパンはオタクでサムライ、ニンジャ、カタナ、メイド、ヘンタイ」

 

 メイドはメイド喫茶かな?

 

「ジョディちゃん、日本詳しいねー」

「フン、トウゼン。ワタシ、カシコイ。アナタヨリ。……Guess what?  I made friends with a Japanese girl!  I’m totally gonna brag about it to my friends later!」


 あ、ロシデレみたいなことしてる。「日本の女子と友達になれて嬉しい、あとで自慢しよう」だって。

 これは『英語でデレるジョディちゃん』だ……。

 

 大きな浴槽は二つ。

 透明なお湯と、緑の濁り湯だ。

 それに、ひとり用の(つぼ)()もある。

 

 女子たちは濁り湯に集まっていた。

 温泉とか薬湯みたいな効果がありそうな色だし、体がお湯で隠れる安心感もあるからかな? 

  

「王司ちゃん。緑の方、入ってみようよ」

「うんうん。私も緑がいいなーって思ってたー!」

  

 湯舟に漬かると、じんわりと全身が(ぬく)もる感覚と一緒に、ふわ~、ゆら~っと浮いたり揺られたりする感覚がする。気持ちいい。楽しい。


「あのね、王司ちゃん。さっきね。お兄ちゃんが『恭彦君に先を越されて悔しい』って悔しがってたよ。お兄ちゃんも、王司ちゃんを助けたかったんだって」

「あはは。アリサちゃんのお兄ちゃんには、自分の妹を助けるのをおすすめしておくね」


 浴場のあちらこちらで女子たちがお友だちと寛いでいる。

 みんな小声だけど、人数が多いから賑やかだ。

 

「王司ちゃん。私、お風呂上がった後、台本を読むよー。あのね、大河ドラマに出るんだよ。王司ちゃんはどうする?」

「アリサちゃん大河ドラマに出るの? すごい。えっと、私も台本を読むよ。学園ドラマに出るんだ」

「わーっ、ドラマ観るよー! 楽しみー!」


 アリサちゃんと話しながら視線をずらすと、ジョディが壺湯に入ってこっちを見ていた。

 他の海外勢はどうした? さっきまで一緒にいなかった? 


「ジョディちゃん。おいでー」

「オー、オーケー」

 

 手招きしたら、おずおずとこっちに来る。


「ジョディちゃん、タオルはお湯に付けないんだよ。頭に置こう」

「文明を感じマス。アリガト」


 頭にタオルを載せるのが文明?

 哲学者な気分になりつつ、私たちはのんびりと寛いだ。すると、ジョディが浴槽の端に軽く寄りかかり、低い声を響かせた。


「Ahhh……」


 サワグのダメ、と言ってたくせに。これは発声練習だな。

 お風呂に漬かりながらストレッチとか発声練習とかするの、一石二鳥感があっていいと思う。他の人が構わなければ。


「あめんぼ、あかいな、あいうえお!」

「王司ちゃん、発声練習だね。私もするー」


 アリサちゃんはザバッとお湯を揺らして、外郎売(ういろううり)を始めた。


拙者(せっしゃ)親方(おやかた)と申すは、お立合(たちあい)(うち)御存知(ごぞんじ)のお方もござりましょうが、 お江戸を()って二十里上方(かみがた)相州(そうしゅう)小田原(おだわら)一色町(いっしきまち)をお過ぎなされて、青物町(あおものちょう)を登りへおいでなさるれば、 欄干橋(らんかんばし)虎屋藤衛門(とらやとうえもん)、ただいまは、剃髪(ていはつ)いたして、円斎(えんさい)と名乗りまする!」

 

「おー」


 抑揚があって、雰囲気が出てる。

 私もしよう、これ。


元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)までお手に入れまするこの薬は、昔、ちんの国の唐人(とうじん)外郎(ういろう)という人、わが(ちょう)へ来たり……」


 私たちが発声練習していると、入浴中の他の女子たちも釣られたように発声練習を始めた。表情筋トレーニングやストレッチをしている子もいる。いい雰囲気だー! やったー!

 

「王司ちゃん、大丈夫? のぼせてない?」

「うん。まだ平気。でも、そろそろ上がろうか」

 

 少ししてから、私たちはお風呂から上がった。

 もうちょっと長く続けていたらのぼせていたと思う。アリサちゃんはしっかりしてるなあ。


   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


「アリサちゃん。私、トイレに寄るね」

「私も寄るー」

 

 2階に上がって女子トイレに立ち寄ると、個室から声がした。


「あのー、今来た人……すみません……」

 

 恥ずかしそうにしつつ、切羽詰まって勇気を出した感じの声だ。

 

 あれ? この声、姉ヶ崎(あねがさき)いずみじゃないかな?


「急に生理が来ちゃって。生理用品を切らしてて……ほんと、すみませんが……生理用品持ってたりしませんか……?」


 個室の中で困っているらしい。

 二俣邸と違って、ここのトイレはナプキンが出てくる装置がないからな。

 その気持ち、わかる――こういうときは助け合いだ。私はポーチからナプキンを取り出した。気分は勇者だ。ヒーローだ。


「私、持ってますよー!」

 

 見てこれ。

 人気イラストレーターのコラボデザインナプキンだよ。可愛いよ。


「ありがとうございます!」

「どうやって渡そう。えっと、上から落とす感じでよさげですか?」

「それがいいかもです……!」


 中のお姉さんは今便座に座ってるんだもんなあ。

 よし、上から落とそう。


「ゴミ箱を足場にできるかなー? やってみようかなー?」

「王司ちゃん、私、倒れないように支えるよ」

  

 ガッコンガッコンと音を立てながら頑張っていたら、他の女子がやってきて手伝ってくれた。しかも、その女子も生理用品を持ってて、分けてくれた。

 麗しい助け合いだな~! 女子~!


「アリサちゃん、支えてくれてありがとうねー!」

「王司ちゃん、がんばってたー!」


 アリサちゃんは私がゴミ箱の上に立っただけで褒めてくれるんだ。や、優しすぎる。

  

 歯磨きと洗顔をして相部屋に戻った後は、二人でフェイスパックをしながら自分の台本を黙読。

 付箋を貼ったり書き込みしたりして、時間を見て学校の勉強も少し頑張った。

 

 就寝時間前に「おやすみ!」と挨拶をして、初日は終了!


 ところで、寝ている間に窓がコンコンとノックされてた気がするんだけど、夢かな?

 だってこの部屋、二階だよ。

 二階にある女子部屋の窓がノックされるって、現実だとしたらちょっとホラーだよね。このお部屋、もしかして幽霊が出たりする?


 八町の映画撮影にも幽霊が映り込んだし。思えば、私自身が幽霊みたいなものなので……引き寄せてたりして……。


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