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【完結】俳優、女子中学生になる~殺された天才役者が名家の令嬢に憑依して芸能界に返り咲く!~  作者: 朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます!
3章、人狼ゲームとシナリオバトル

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165/241

165、いちばんの理解者になりたい

 『芸能界ファミリー大集合!』生放送の三部、子供組は、銅親の息子が逃げて行った以外は平穏だ。

 さっきからカメラがずっと大人組にいってて、軽く放置状態になってるものだから、みんなフリーダムにくつろいでいる。

 

 アリサちゃんとマカロンを食べているだけで終わりそう。

 ちなみに、今日のアリサちゃんは和装だ。矢絣(やがすり)柄の着物に袴姿で、大正ロマンって感じだ。


「王司ちゃん、水貴(みずき)君と幼馴染だったんだ。知らなかったー」

「あの子、水貴君って言うんだね、アリサちゃん? あのねえ、私、覚えてないんだぁ……」

「あー、そっかぁ。王司ちゃん、前のことあんまり記憶ないもんね」


 銅親の息子は水貴という名前らしい。

 逃げて行った水貴を視線で探すと、星牙に慰められていた。

 

「水貴君ふられたんか、うける~。なあなあ、今どんな気持ち? 初恋とかだったん? あのなー、初恋って成就せえへんもんなのなー、かなしーなー」


 いや、あれ慰められてないな。うざ絡みされてるだけだ。

 様子を見てると、アリサちゃんはポンポンと肩を優しく叩いてくれた。


「王司ちゃん、あんまり気にしない方がいいよ……あ、お兄ちゃんが来たよ」


 やってきた高槻(たかつき)大吾(だいご)は、まるでおしゃれなカフェ店員みたいな雰囲気があった。

 青とピンクの派手なわたあめが乗ったジュースが乗ったトレイを持っている。


「王司さん。僕は水貴君と家族ぐるみの付き合いがありますが、正直、どうでもよろしい。それより僕が新作のポエムを作ったので僕の心を堪能してください。これが僕の心です。それでは」


 ポエムカードを押し付けて、年少組の方に戻っていく。

 新作ポエムか~、マカロン齧りながら読むか~。


『葉室王司様へ


 髪が伸びた君を見ていると、成長という2文字を連想します。

 僕も今朝、足の爪を切りました。

 君の成長を見守りながら、僕も前に一歩、踏み出そう。

 

 ヨッ。


 高槻(たかつき)大吾(だいご)より』 

 

 マカロン食べてるときに足の爪の話をされると、なんか残念な気分にならない?

 私が微妙な顔をしていると、アリサちゃんが耳打ちしてきた。

 

「お兄ちゃん、足の怪我が完治したんだって」

「今まで完治してなかったんだ……?」


 ところで、カメラマンはいつまで経ってもこっちに来ないな。

 大人組ばかり撮ってるや。なんか歓声上がってるし。

 何やってんだ? 腕相撲大会? なんで?

 

「王司ちゃん、私のお父さんがごめんね」

「えっ、アリサちゃん、何? どっちかというと放送事故な暴露しちゃったこっちが謝らないといけない気がするよ。ごめんね?」


 私が謝るのも変な気もするけど、謝っておこう。

 「私のお父さんがごめんね」とは言いたくないので、言葉は濁すけど。

 アリサちゃんのお家も「GASにチェックされるから健全アピールするぞ」とか家族会議してるのかなぁ。してるんだろうなぁ。


「じゃあ、王司ちゃん。『ごめんね』のわたあめ交換しよう? はいっ、あーん」

 

 アリサちゃんは、ピンクのわたあめをつまんで私の口元に近づけてきた。

 可愛い。

 こういうことをしたとき、「あざとい」にならないのがアリサちゃんだ。

 アリサちゃんは、もうなんか、「こんな子いるの?」ってくらいピュアなんだよ。いやな感じが全くないんだ。

 

「うん。アリサちゃん。せーので食べよう!」

 

 青いわたあめをつまんでアリサちゃんに差し出して、私たちは「せーの」でわたあめを食べさせ合った。

 わたあめはフワフワの甘々だ。美味しい。

 

「王司ちゃんは、新しいドラマのお仕事をするの?」

「うんうん、するよ」

「そっかー。あのね……」


 アリサちゃんは、ちょっと迷う素振りを見せた。珍しい。

 何かを打ち明けてくれるなら、聞きたいな。

 アリサちゃんはいつもニコニコしていて、一緒にいるとひたすら楽しくて穏やかな時間が過ごせるお友だちだ。

 でも、言わないだけで悩みとか、嫌なこととか、いっぱいあると思う。

 複雑な家庭だし、思春期だもん。

 そういうのも打ち明けて相談し合ったりできたら、嬉しいな。

 

「あのね、アリサちゃん。私、アリサちゃんのお話、もっといっぱい聞きたいな。どんなことでも。弱音とか、愚痴とかも聞きたいよ」


 マネージャーさんに合図してポーチを持ってきてもらい、中からカードを取り出して見せると、アリサちゃんは目を丸くした。


「王司ちゃん。それ、もらったの?」

「うん。記念に」

 

 借り物競争の『いちばん仲良しのお友だち』と書かれたカード、記念にもらっておいたんだ。


「アリサちゃん。いちばん仲良しの私は、いちばんの理解者になりたいよ」

「……ありがとう、王司ちゃん」


 アリサちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。

 カードもらっておいてよかった。


「王司ちゃん。私も、ドラマのオファーが来てるんだけど……やってみたいなって思うんだけど……」

「おおっ。アリサちゃんは演技が上手だもんね。GASの指定にも入ってるみたいだし、八町先生も気に入ってるようだし」

「えへへ……」


 あ、アリサちゃんが照れてる。可愛い。


「王司ちゃん、私が女優するの……いやじゃないかな……?」


 アリサちゃんは腫れ物に触れるように小声で訊ねた。

 全然いやじゃないよ。そんなこと心配してくれるんだ? 

 アリサちゃんって本当に思いやり深いというか……心配になるくらい「自分より他人」って感じだな。


「ぜんっぜん、いやじゃないよ! 私は嬉しいよ!」

「そっか」


 アリサちゃんは安心した様子でニコッと笑ってくれた。


「王司ちゃん。私、オファー受けるね。これからはライバルだね」

「うん、うん。一緒にがんばろう!」


 同じドラマかどうかはわからないけど、アリサちゃんが役者仲間になって嬉しいな。

 気の許せる役者仲間がいるって、大事なんだよ。


 私がポーチにカードを仕舞ってマネージャーさんに渡していると、年少組のあどけない声が聞こえてきた。

 

「あのお兄ちゃんはどうして舞台のときと全然ちがうの?」

「ルリが教えてあげる。憑依っていうんだよ。性格が別人になるんだよ。江良九足さんが憑いたんだって」


 あ、ルリちゃんが年下の子たちを座らせて先生みたいな顔してる。

 可愛いけど、なんか公園デビューで子供たちを子分にしてた王司の写真を思い出す構図だ。謎の共感性羞恥が湧くじゃないか……。

 

「あれは俺ではなく江良さ……江良さんっぽい解釈違いの変な役です……いつもはしないことをしてしまうので、気を付けようと思ってます……」


 恭彦は年少の子たちに混ざって正座でルリ先生に頭を下げていた。

 

「王司ちゃん。カメラマンさん、こっちに来ないね」

「ね。大人組ばっかり撮ってる」

  

 結局、三部は子供組があまり撮られないまま終わった。番組は終了だ。

 

「おつかれさまでしたー!」


 三部で出番をもぎ取れなかったという残念な点はあるけど、家族が円満なアピールはできた。

 この生放送は、私的には成功だ。

 

   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆

 

 帰ってから録画を観ると、親たちはギスギスパーティをしていたようだった。

 高槻父と銅親父は仲がいい様子で、かつ、火臣父の強烈なアンチらしい。

 

 二部で火臣父が高槻父の暴露をしたものだから、「訴えてやる!」なんて言い出していた。

 生放送で、だよ? 

 そりゃ、カメラマンがそっちばっかり撮るわけだ。納得だよ。

 

 周囲も「いいぞ、やれやれ」とか「生放送ですよ。穏便に」と過激派と穏健派に分かれて、大騒ぎ。


 司会は面白おかしく盛り上げて、しまいには「もうええでしょう。腕相撲で決着つけましょうや!」なんて煽って父親同士の腕相撲大会などを始めていた。腕のいい司会だなぁ。

 

 火臣父はここで江良ゼッケンを披露し、「キモイ」というブーイングをもらった。

 

「江良といえば俺ですよ。江良の墓参りをしたり『江良のために』とか言うなら、俺を呼ばないと!」

  

 銅親父が敵意をむき出しにして、まるで正義のヒーローのような顔で言い放つ。


「火臣さんが映るだけで不快に思う人がいるんですよ。呼ぶはずがないでしょう。そろそろ、ご引退願いましょうか!」


 若干、芝居がかった調子で言う。

 こういう「何かシナリオを脳内で作ってて、その通りに世の中を動かしたいんだな。見え透いた演技だなー」と思ってしまう仕掛けをするところは八町と同じだな。職業病みたいなものだろうか……。


 二人は腕相撲を始めたが、銅親父は特に体を鍛えたりもしていないので、あっさり負けた。


「仇を討ちますよ。任せてください」

「高槻さん! 頼もしい!」

  

 ここで高槻父が腕まくりをして前に出た。茶番だなぁ。

 お、ママが出てきたぞ。ママ、生放送で積極的に映りにいってて、偉い。

 

「火臣さん。よくわかりませんが、引退なさいますの? 大変よろしくてよ」

「潤羽さん。俺はまだまだ現役……」

「おほほ。ネタをお忘れのようなので手伝って差し上げますわ」

「あっ。俺の江良ゼッケンが」

 

 ママは江良ゼッケンを剥がし、その下に隠されていた父ノ背中ゼッケンを露出させた。


「こんなしょうもない仕込みを……」


 誰かが呟いた声がしっかり拾われて、スタッフさんたちが笑い声をあげてくれた。

 笑いに昇華してもらってよかったね。

 

「GASはアンダー25などと言っているが、俺だってまだまだ高みを目指そうって気概がある。生涯現役さ。俺は、オーバー25の勉強会を作るぞ。名称は江良組だ。あとでSNSでメンバー募集フォームを出すから、我こそはという者は応募してくれ。みんなで酒を飲みながら江良の神棚に手を合わせよう!」


 火臣父は腕相撲に危なげなく勝利しつつ、変な宣伝をしてのけた。

 オーバー25の勉強会はとてもいいと思うが、名称を江良組にするな。神棚に手を合わせるな。 

 

「江良組ってなんや!?」

「生放送でちゃっかり宣伝するな~、あはは」

  

 道理で子供組にあまりカメラが来ないと思ったよ。


 スマホを見ると、思った通り番組のハッシュタグは盛り上がっていた。

 江良組がトレンド入りしてるよ。わあー。

 ちょうどLOVEジュエル7のオリコンの結果も出てたので、そっちも話題になってるや。私たちは6位です。結構すごいことなのでは?

 

 SNSを見ていると、お風呂に呼ばれた。

 そうだ、風呂から上がったら、八町の脚本も読もう。忘れるところだった。

 

   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆

 

【生放送は危険だってばよ】葉室王司ちゃんを応援するスレ!part115

 

512:名無しのファン ID:Ewbc2p8Ns

王司ちゃんどうして火臣家と家族ごっこしちゃうの

 

513:名無しのファン ID:1xsCZlC9F

事務所命令なんじゃ?

 

514:名無しのファン ID:+7pM6+XKR

王司ちゃんはGASにアピールしようとしたらしい 

 

515:名無しのファン ID:Mi584sGoG

>>514

王司ちゃん「変態俳優ファミリーは爆発物につき、取り扱い要注意」

 

516:名無しのファン ID:z5/9oxwul

ジュエルちゃんオリコン6位か

オーロラ先輩はオパンチュ見せても9位だったんだ 

 

517:名無しのファン ID:WDDf2OY0P

>>516

おぱんちゅは見せたんじゃない、事故ったんだ

CD売るために故意に見せたみたいに言うな

 

518:名無しのファン ID:hFlHB95UI

鹿柄のぱんつは売上アップに貢献したんだろうか

 

519:麗華 ID:9DbmDcu4I

オーロラは後輩への暴言がやっぱイメージ悪かったわね

アイドルちゃんはね、本性がきつくてもファンに見えるところでは隠してほしいのよね

 

520:名無しのファン ID:f7bRcXIT/

麗華のファンだけど俺も麗華には掲示板に書き込む時には匿名にしてほしいと思ってるよ

 

521:名無しのファン ID:QbGPCRwLO

そんなこと言って本当は麗華と話せて嬉しいくせに

 

522:名無しのファン ID:T6H/pIFa4

ファンならお気持ちをするな!ただ有難く受け止めて応援しろ!それでもファンか!

 

523:名無しのファン ID:IFTQwfKjl

盲信ファン、キモイ 

 

524:名無しのファン ID:X1qgFXy+E

あ、GASがメンバー正式発表した

 

525:名無しのファン ID:01vL8Y0l3

おおおおおおお

 

526:名無しのファン ID:uanB0GsQr

GASは変態兄妹から逃げなかったか

 

527:名無しのファン ID:F4hxjQtUg

王司ちゃんメンバー確定しとるね

  

528:名無しのファン ID:QNRWous18

王司ちゃんおめでとう 

 

529:麗華 ID:9DbmDcu4I

25歳以上を仲間に入れてくれないGASなんてもういいわ

 

530:名無しのファン ID:Mi584sGoG

いいぞGAS!麗華が悔しがってて酒が美味い

   

531:名無しのファン ID:T6H/pIFa4

麗華、江良組に入ってもいいぞ 

 

532:名無しのファン ID:QbGPCRwLO

話題になってシングルがますます売れる

王司ちゃんは最高だぜ 


533:名無しのファン ID:1xsCZlC9F

恭彦君がGASの指定外されなくてよかったよ


534:名無しのファン ID:T6H/pIFa4

外されて落ち込むところも見たかった


535:麗華 ID:9DbmDcu4I   

クズがいる…… 

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